親父

「」セリフ
【】演技指示
（）状況説明

今日は来てくれてありがとうございます

俺…あなたと会うのすごく楽しみでした
いままで時間が取れずすみません

「これ…」

あ…親父の私物ですね…
ありがとうございます

あの…大丈夫ですか？

「はい…」

…って言っても大丈夫ではないですよね

すみません…

俺も突然のことでまだ受け止めきれてない部分もあって…
でも、あなたと今日会うってなって
親父のことがだんだん現実なんだなって…

俺自身も混乱してます

親が死んだら誰でもこうなりますか…
そうですよね…

何から話せばいいか、わからないんですが…

俺の母親なんですけど
俺が小さい時に出ていっちゃったんですよね

泣いて行かないでって言っても
振り向いてもくれなくて…
知らない男の人と行ってしまったんです

こども心（ごころ）にそれが強烈に残ってて…

最低な母親ですよね
それ以来母とは会っていません

今回のことも母には連絡をしてないんです
…っていうか、連絡先を知らないって言った方が正しいかもしれません

残された親父は…
1人で俺を育てるのに必死で
自分のことはいつも後回しにしていました

俺が大学卒業した時に
紹介したい人がいるって言われて
あなたの写真見せられて

俺は…
親父にもそんな人がいるんだって
思って安心しました

いつでも俺が最優先でしたから

いつか3人で食事をしようって
親父が嬉しそうに話してたんです
俺の都合でそれは叶わなかった
ごめんなさい…

そして、あなたともこんな形で会いたくなかった

親父が死んじまったなんて今でも信じられない…
あなたが家に帰ったときには倒れていたって聞きました
色々大変だったでしょう…
本当にお世話になりました

【泣きそな声で】
突破的な病気だったとはいえ…
親父も不本意だったと…
あなたとの未来も思い描いていたと思います

「はい…」

【間】

あなたもつらいのに
俺の話ばかりすみませんでした
今日はありがとうございました
また何かありましたら連絡ください

（彼女がその場を去る）

親父…なんで死んじまったんだよ
仕事が忙しくて
健康診断なんか行ってなかったんだろうな

でもさ…大事な人だったんだろう
これからだったじゃんか…

俺だってまだまだ親父と話したかったよ

親父…今まで育ててくれてありがとう

おわり