夜櫻式 ズボラ作曲術
前文
初めまして、夜櫻と申します。
僕は普段の趣味として音楽を作り、YouTubeやSoundCloudに投稿している者です。と言っても音楽に関して特段楽器を弾く事も出来なければ専門学校などに通ったり専門書を読んだり等の知識は全く無く、『音楽』という教科の教養自体が殆ど中学校レベルで終わっている"完全なド素人"です。そんな僕が音楽を作り始めたいと思い始めたのが2019年の3月頃、今年で創作歴5年を突破し6年目に入りました。
5年も過ぎると作曲の知識が無くとも『それっぽく見せる』術だけは身についてきてしまうもので、本来の有識者からすると「作曲を馬鹿にするな」と怒られたり「ちゃんと学ばないとやはりこの程度しか作れないのか」と
鼻で笑われるかも知れません。しかし、僕は趣味で音楽を作り公開しているだけなのでそんな堅物のご高尚なアドバイスなど気にも留めず『それっぽさ』を追求し自己満足して来ました。
そして今、新たに「知識もセンスも無いけど音楽を作ってみたい!」という方の為に、今僕が出来る最大限の"伝授"をしていきたいなと思います。楽器も弾けず知識も無くともなんとなく『それっぽい』ものを根性で産み出す、これが本当の【初心者の、初心者による、初心者の為の作曲術】です。
尚、本記事は「これが正しい!」と断言出来るものではなく僕自身この方法で本当に合っているのか分かっていないので1つの方法として参考までに、よろしくお願いします。
始めに用意するもの
スマホとちょっと良いイヤホンかヘッドホン、更に時間と根気、そして一番重要な"目標となる音楽に対する明確なイメージ"があれば十分です。最近ではPCを使わずともアプリ1つ使って高品質な音源で作曲が出来る様なったのが本当に、良い時代になったなと思います。まぁPCを使わずスマホ等タッチ操作出来るモノの方が直感的操作で作業が行えるのでオススメです。
スマホには事前に作曲用のアプリを入れておきましょう。おすすめのアプリは、Android機種であればFL Studio Mobile、iOSならGarageBandがあれば大丈夫だと思います。僕はいつもFL Studio Mobileにお世話になっているので今回はそちらを使って説明していきたいと思います。
アプリの操作説明等は面倒だし本筋から離れるので省略します。各自調べたり勘でやってください。
いざ、作曲という『創作』の始まり
まずはBPM決めから
音楽を作る上でジャンルや雰囲気を構成する要因の1つが"BPM"(テンポ)です。BPMを決める事で大体の音楽としてのジャンルを固定し雰囲気を作り出します。BPMが速ければ疾走感のある曲が、遅ければ落ち着いた雰囲気の曲が出来るとイメージしましょう。
僕は今回BPM160の曲を作ってみようと思います。速過ぎず遅過ぎず、丁度微妙で作り辛いですね。
ドラムパターンでテンポ感を掴む
ドラムパターンと言えば有名なのが『4つ打ち』『8ビート』『16ビート』だと思います。それぞれ1小節を4個、8個、16個に分けた音が主な音として使われています。細かく刻めば刻むほど同じBPMでも少し速く聴こえたり、主軸となる4拍を強調すると力強さが増す効果があったり無かったりします。
正直ドラム帯は「今まで聞いたことのあるパターンを記憶して拝借する」という方法が手っ取り早いです。大抵はどんなリズムもキック(バスドラム)が主軸となってスネアが2と4拍目、ハイハットかシェイカーで細かく刻むという方式になっているのでそれぞれの楽器の基本的な使い方を様々な形式の音楽を聴いて覚えてみましょう。
今回僕はハイハットとシェイカーで細かく刻みつつキックを4つ打ちではなく少しトリッキーなリズムを取ってみました。キックの代わりに重めのスネアと細く長いライドシンバルが軸になってテンポを保ってくれるイメージです。
難関 コード進行作り
音楽理論で初心者が一番躓きやすいのが、コード進行に関する仕組みを学ぶタイミングなのではないでしょうか。その位理論に基づいたコードを用いた音楽を作るのは難しいんですね。なので今回は、理論を一度すっ飛ばして感覚を使ってコード進行を作っていきます。
尚、再三言っておきますが本記事は『それっぽいもの』を作る為のものなので本来の音楽の"正しさ"とはかけ離れたものが出来上がる可能性があるというのを理解した上で参考にしてください。
まず最初に、コードの基礎となる主音を全音符から2分音符を用い大雑把なメロディを作っていく感覚で置いていきます。この時作ったメロディの最後と最初はループして繋がっている様に聴こえる様にしましょう。慣れてきたら2分音符以上に刻んだ細かいフレーズを入れてみたり、敢えて短い空白を差し込んで浮遊感を出してみるのも良いですね。
8〜16小節出来たら十分です。完成したら同じフレーズを1オクターブ下に配置します。
この時点で曲の方向性を明るく(メジャーコード)するか暗く(マイナーコード)するかを意識して並べると次の工程が幾分か楽になると思います。僕が今回作ったのは前半がマイナーで後半から少し明るめなメジャー色を出していく雰囲気です。
次は遂に、ハーモニーを置いていきます。ここが一番時間が掛かり、今まで音楽を嗜んでいた者としての"勘"が試されます。
その名も──
『 ロ ー ラ ー 作 戦 』
……そうです、根性で綺麗にハモる所を探していく作業です。これが前文に書いた「それっぽいものを"根性"で産み出す」の『根性』の正体です。頑張りましょう。
大体1オクターブの中に2〜3音入れればそれっぽくなります。主音とオクターブ下を含め4音だと真っ直ぐなコード、5音だと複雑で深みのあるコードになります。これも主音を軸にメジャーやマイナーを意識して、1つ目のコードは明るく、2つ目は暗く、3つ目にまた明るく…などなど意識して切り替えて音を置いていくといい感じに物語が進行していく雰囲気が出来ていきます。
ここまで来るといよいよ音楽の一部が形作られてきている実感が湧いてくるのではないでしょうか。今後はこのコード進行を延々ループして使っていくので、納得がいくまで調整しておくのをオススメします。
シンセを選んで色を付けていく
先ほどまではピアノの音を使ってコードを作っていきましたが、ここからシンセの音を色々付け替えて聴いてみて自分の作りたいモノのイメージに合いそうなものを選んでいきます。
自分で音色を作っていくのも良いですが、慣れない時には標準搭載のシンセから音色を選んでいく方が簡単でいい音が作れると思います。
そしてこれからがシンセの特徴なのですが、シンセは一つ音色を置くだけでは完成しません。オーケストラ等でも同じ理屈が言えるのですが、例えばただヴァイオリンの音を置いただけでは厚みが出ず、ベースの音だけでは煌びやかな音にならないといった感じ。同じトーンでも音の印象でシャリシャリした高音の印象を受けるもの、芯のある太い低音の印象を受けるものなどを重ねて鳴らす事で音色に更なる厚みを出していくという寸法です。コード帯は絵を描く作業に例えると『背景』となる部分なので、奥行きや空気感を出す為に色々なオクターブの音を同時に鳴らしてみるも良し、敢えて平べったく表現する為に少ない音で素材の味を楽しむも良し、様々な表現が出来るので是非色々な音の響きを聴いて確かめてみてください。
また、ドラム帯の4つ打ちを強調させる為に拍の始めの音を少し弱くするダッキングというエフェクトを追加したり裏拍のリズムを刻んだフレーズを入れると、コード帯に平坦な印象を与えずリズム感を醸し出せるのでオススメです。
よりコード帯にリズム感を出しノリを良く聴かせる為に、ギターを刻んでゴーストノーツを入れてみたりリリースの短いピアノ(所謂リリースカットピアノと呼ばれるモノ)を入れてみるのも良いでしょう。
縁の下の力持ち ベースのフレーズ作り
ここからは低音帯、ベースの作り方を紹介します。
簡単に作れるベースのフレーズは主に2種類に分けられます。一つは『裏打ち型』、もう一つは『裏メロ型』です。
まず一つ目の『裏打ち型』ですが、これは至ってシンプルにコードの構成音のうち1つを選んで裏拍で刻んでいく、それだけです。
この時、他のシンセと同じ様に聴こえやすい高めの音と芯となる低めの音を重ねてベースの重み、厚みを出します。
そして二つ目『裏メロ型』、これは少し工夫して作ります。というのも、格好良いリズムで刻んだベースをコードの構成音に合わせて不協和音にならない場所へ並べていくという作業になります。尚、リズム自体は1小節作って後は繰り返しでキーだけ変えていけば大丈夫です。
こういう所に使うベースは、スラップベースやハウスベースの様に低音の中でも割と高めの音が目立つ音を使うと影で目立ってくれます。今回はスラップベースっぽい音を使ったので、実際の演奏っぽくオクターブ近い上下移動を印象的に配置しました。
今回は省きますがこの2種類以外にも、特定のジャンルの音楽でのみ使われるベースだとPsyBassだったりAcidBassだったりと特徴的な音色や刻みをしたベースもあるので、今後紹介できる機会があれば紹介したいと思います。とにかく、是非色々なジャンルの音楽を聴いて吸収し、自分の創作に活かしていきましょう。
全体のバランスを調整しつつ飾りを盛り付け
ここまで作り込んだタイミングで一度作ったものを客観的に聴き返してみて、停滞感がある様子であればBPMを上げてみたり、音のシャカシャカ感が強かったらコードで使ったシンセの一部をオクターブ低くしてみたりとバランスを考え何度か調整してみましょう。作った曲を客観的に聴く為には、一度休憩も兼ねて時間を置いて耳を落ち着かせた後に改めて聴いてみると新しい要修正ポイントが見つかるかも知れません。
今回作っているものは、なんか聴いてて停滞感を感じたので長音パートを主張し過ぎない様に裏方の撤して貰う為音量を小さくしてみたり、BPMも大胆に高くして疾走感を出したり、他にもシンプルなアルペジオやシンセチックなパーカッションを増やしてキャッチーさを意識した音に調えてみました。
さて、次からはいよいよ全体の進行を形作っていきます。
足し引きを意識した進行で物語を作る
早速曲を組み立てていく…と、その前に簡単に曲の印象を変える区切りの作り方を説明していきます。
この様に、アウフタクトと呼ばれる所謂1小節目から始まらない少しフライングした地帯にフィルインとしてドラムとリバースシンバルの「これから盛り上がりますよ!!!」地帯を設け、小節の一拍目には短めのシンバルにディレイを掛けたものと空気感作りの長〜いSFXを置きます。そして、小節の終盤に掛けて盛り上げていく為にダッキングしたノイズとリバースシンバルを置いていきます。
ノイズの音は一拍の間に音量が上昇していく様に設定し、イコライザのパラメーターを滑らかに推移できるモノを使用しオートメーションで段々と高い音を強調する感じに調整していきます。
いい感じのノイズの音やイコライザが使えなければ『Riser』と呼ばれるSFXサンプルを使うと自分で作らずともいい感じに音を盛り上げられます。
さて、ここから本格的に"音楽"としての進行を考えていく訳ですが、これも正直感覚というか、今まで聴いてきたものをアウトプットする方式でやっていきましょう。
ちなみにJ-POPのショート尺だと定型としては以下の様に
イントロ(華やかに飾る)
Aメロ(安定を計る)
Bメロ(次に盛り上げる為に一度落ち着ける)
サビ(一気に盛り上げる)
アウトロ(有終の美)
といった感じで進行していくで、今回もこの定型に合わせて作っていこうと思います。つまりは盛り上がりたい所は音を足して、落ち着けたい所には音を引くという作業をしていきます。
実際に組み上げたものがこちら。
ポイントとしては
イントロとサビは全部の音を使って大いに盛り上げる
Aメロは裏打ちのシンセを減らし少し平坦な印象にし、後半から少しだけ音を足し物語を作る
Bメロを前半と後半で分け、前半は特殊なリズムでキャラクターを作った上で後半から一気に落ち着かせてサビへの足掛かりにする
サビが長いと停滞感を感じてしまうので後半にカップの利いた金属質のライドシンバルを置く
アウトロはBメロ後半と大体同じでリズム帯をカットし綺麗に追われる様にする
といった感じです。構成を考える時は、前後のパートとの繋がりを意識して組み上げると滑らかに進行する曲が作れるので何度か聴き返し調整していきましょう。
メロディで一気に表情を付ける
続いてはお待ちかね、メロディパートの制作です。ここが中々時間が掛かり頭を使うので、それなりに手抜きして組み立てられる方法を後ほど紹介します。
まずは音色を決めていきます。今回もコードの音を探していった方法と同じくプリセットのリード音源を探し気に入ったものを使うのが簡単ですが、自分で音を作ったシンセを使ってみると一層完成した曲に愛着が湧いてくるかも知れないのでオススメです。
シンセサイザーの基本の音の作り方について、下記のサイトで予め予習しておくと思い通りの音色が作れる様になれるので参考までに一読してみてください。
音色が決まったら、いよいよノーツの配置をしていきます。ここで、メロディを作る上で手抜き出来る事その一を紹介します。
手抜きポイントその1
『コードの構成音を使う』
これが一番手っ取り早くメロディを作れます。例えばCメジャーのコードが裏で流れている場合は、Cメジャーの構成音であるド、ミ、ソの音をリズム良く配置していく感じです。その3つだけだと物足りないなと感じたら、基本は構成音の1つから1音分間隔を開けた次の音であれば多分不協和音にはならない確率が高いと思うのでそこら辺も活用していきましょう。
とにかく、コードの音と合わせて不協和音にならない音を探す為にローラー作戦を応用して並べていきましょう。
まずはイントロのメロディを作りました。ここで注目して頂きたい手抜きポイントがあります。
手抜きポイントその2
『繰り返しを使う』
全部が全部独立したメロディというのは、どうしても少しとっ散らかった印象を受けます。なので今回は同じフレーズを2度繰り返している地帯が存在します。
イントロのフレーズを分割して、
『1、2、3、4、1、2、5、6』
といった雰囲気で一部フレーズを再利用する事が出来ます。これを使う事により、散らかった印象を抑え纏まりのあるメロディが出来ます。
こんな感じのメロディをパート毎に音色を変えつつ作っていくのですが、ここでまた手抜きポイントが存在します。
手抜きポイントその3
『使い回す』
色々な音色でパート毎にメロディを作ったのですが、何かお気づきではないでしょうか。そう、実はイントロとBメロ後半、そしてアウトロのメロディを使い回しています。他にもAメロのメロディをサビの後半の裏メロとして使って一層盛り上がっている様に仕上げています。この様に、ある程度離れた場所であり雰囲気が合えばメロディを使い回したって良いのです。
こんな感じで繰り返しと使い回しを多用していくと、あっという間に全編のメロディが完成しました。
マスタリングは全てAIにお任せ
ここまでの作業で大方曲は完成と言っていいのですが、最後の仕上げに『マスタリング』という作業をします。本来は目立った帯域の音を抑えて各音域をバランス良く聴かせたりする為のマスタリングですが、何せ素人からすると何が違うのかよく分からないレベルで難易度が高い作業です。なので今回は、自動でマスタリングしてくれる下記のサイトを使っていきます。
こちらのサイトを通せばあら不思議、勝手に音のバランスを整えてくれるのです!
タイトルを付けよう
作った曲のイメージや最初の構想の雰囲気からタイトルを付けていきます。これも困った時はAIに任せると良いでしょう。
今回は『スマホで作る音楽』をテーマにした曲を作ったので、ChatGPTに「スマートフォンをテーマにした新しい楽曲のタイトルを作って」などと聞いてみましょう。
今回はChatGPTが提案したものの中から『Pocket Galaxy』と名付けました。
ジャケットを作って投稿しよう
ここら辺は本筋とはあまり関係無いのでパパッといきます。
『Canva』というアプリの素材とGoogle検索して出てきたフリー素材で組み上げて
完成です。
自分で作る他にも知り合いの絵描きの方に依頼するという手もあります。依頼する時は曲の雰囲気に絵柄が合いそうな方を選び、しっかりと話し合った上で失礼の無い様に依頼を送りましょう。
ここまで出来上がったらいよいよ投稿しましょう。YouTubeやSoundCloudなど色々な媒体で公開する事によって、様々な層から色々な評価を貰えるかと思います。あまり反応を貰えない事も少なからずありますが、継続して投稿を続けると視聴者も増えていくので辛抱して続けていきましょう。
YouTubeに投稿する際は、ジャケットを用いて適当な動画を付けて投稿しましょう。
投稿したものがこちらになります
SoundCloud↓
YouTube↓
終わりに
今回の作曲講座、如何でしたでしょうか。感想などございましたら是非僕のTwitterのDMやリプライで送っていただけたら嬉しいです。
この記事を参考に、今後作曲を始めようという人が一人でも増える事を願っております。
おわり!!!!!!!!!!
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