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「忙しくなったらまた何処かへ行くんですか?」
調度、去年の今頃。
私は七年間続けられた店を手放すことを決めたんだった。
沢山のお客様にお越し頂けるようになったこと、この場所にカフェがあると認知して頂けるようになったことが顕著に分かった年。
世の中が大変な時に私はお客様達から沢山の気持ちを頂いたので、その場所に満足して手放す決意が出来たのでした。
店内での飲食を控えた方が良いのかなという風潮になった頃、お家で楽しんでもらいたいなと焼き菓子屋さんと評して焼き菓子を沢山作ったらお客様が喜んでくれて、
土日は混むのでそれはまずいのかなと思い、営業時間を早めに切り替え、朝ごはんを始めてみたら毎週完売。
何かやる度にお客様達が楽しんでくれました。
どうにもならない現実の中で、どうやって心を保つのか、私は気持ちを楽しい方へ持っていきたいんだと考えて答えを出すたびにお客様達が反応して下さった。
それで、満足してしまった私。
カフェを続けて来た場所は、これからもカフェが在ってほしい場所で、そういえばこの町でお店をやりたいと言っていた方がいらしたなと思い出したのも11月。
来てくれないかなー、お店をここでやってくれないかなーと心の中でお願いしていたら、その方がひょいっと店に現れたのです。
まだ3回目位の来店でしたが、この機会を逃したらまたいつ会えるか分からないと、席に座ったと同時に話を切り出しました。
店内はお客様でいっぱい。
すぐ近くに座っていらっしゃる常連のお客様には聞こえているだろうなと、申し訳ない気持ちを感じつつ、ここでカフェをやらないですかとお誘いする。
その時点で私は次の場所が決まっているわけもなく、なのでキッチンの冷蔵庫や冷凍庫、作業台等ももらってくれる助かるとお願いする。
場所もお客様も経験も色んなものを先ずは手放し、またゼロからやってみたいワクワクが不安を上回ったので、その気持ちだけを信じてみようと思って話をしていました。
かなりの見切り発車ですが、今は有難いことに新しい場所でカフェが出来ているのが不思議。
そして、次を報告出来なかったお客様とも再会出来ていることが不思議で感謝しかありません。
迷いながら探してくれたり、場所が分かった方がお友達にお知らせして下さったり、嬉しい再会を果たせている事に、またお客様の想いが伝わってきます。
そして、お客様の中ではまたこの場所が忙しくなったり、私が満足してしまったら何処かへ行ってしまうのですかと聞いてこられる方もいらっしゃいます。
それは、私にも分からない。
最初の店は二カ月で作りました。
次の店は一カ月で完成。
どんどん早くなっている。
気持ちとタイミングさえ合えば事は進んで行くんだなと実感しています。
また私がどんなに続けたくても、続けられなくなる場合もあります。私自身がこの場所にそぐわない場合は手放すべきだし、快くこの場所が活かされることが大切だと思っています。
だから、先の事は分からない。
昨年、お客様も私自身も、ずっと続くものはないんだと身に染みて体験したかと思います。
だから、
今日どこへ行きたいか。
何を食べたいのか。
誰に会いたいか。
何を伝えたいのか。
次があるなんて保証はないので、今の気持ちを大切にしたいなと思っています。
去年の今頃、こんな未来を想像していませんでした。
未来の心配も時には必要かと思いますが、
それでもずっと続くものなんて何もないのだから、
「今」存在するモノを味わって頂きたいと切に願います。