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蝶の羽が乾くまで

マンションの壁に蝶のさなぎを2つ見つけて、毎日それを見守っていた。

久しぶりに夜に時間が作れて、彼と飲みに出掛け、送ってもらった帰り。地面でパタパタしているアゲハ蝶を発見。

さなぎが空っぽになっていて、ああ、あのアゲハ蝶だと気づく。

「怪我してるのかな?羽が開かないのかな?」と心配していると、彼が「触ってもいい?」と聞いて、そっと蝶をコンクリートから草の上に移してくれた。

孵化したばかりで羽が湿っているから、草の上がいいらしい。ふと安心する瞬間、この小さな優しさに、彼との感性が似ていることを改めて感じて、なんだか嬉しくなる。

昔、通勤中にひっくり返っていた黄金虫を助けた話を職場でしたら、気持ち悪いとひかれてしまったことがあったけれど、彼はそんな小さな命に寄り添う気持ちをわかってくれる。

最近、出社日と帰宅時間が被りそうな時は、合流地点になる乗り換え駅から、一緒に帰ったりしてる。

彼が「体がだるいから早く帰って、元気が出るものでも作って休もうかな」とLINEで言っていた日も、帰り時間のタイミングがちかくて、私が「改札で少し会えるかも」と言えば、体調の悪さなんてどこ吹く風のように、我が家まで嬉しそうに送ってくれる。

私が「買い物があるからここで」と言えば、「自分も買うものがあった」なんていつも言って、お家の側にもお気に入りのスーパーがあるのに、牛乳だったり大根だったり1つだけ買う。少しでも長く一緒にいようとしてくれる。

そんな年上の彼が、本当に可愛らしい。

深夜まで真剣に仕事の相談にのってくれることも多い。
少し厳しいアドバイスをくれることもあるけれど、言葉選びにはいつも配慮と優しさがあって、私を思ってのことだと感じる。
彼のプロフェッショナルな一面と、尊敬すべき姿が垣間見えて、心から信頼している。

お互い子育てがあって、ゆっくり二人だけの時間はなかなか取れないけれど、こういう何気ない日常が、今はとても幸せに感じる。

最近サカママデビューした私。サカパパの彼と新たな共通点が増えて、これからの時間も楽しみだなと思う。

シングルの恋愛には、同じ立場の人たちの間でも賛否両論があるけれど、この歳になって、穏やかな癒しと、健全で深い色気が日常に共存する感覚は、シングルでなければ味わえないものかもしれない。

一度きりの人生において、なんて貴重な時間なんだろうと思う。もちろん、夫婦として歩む喜びを私は経験していないからこそ、知る由もない幸せがあるのだろうけれど。

それでもこの感覚は独特で、どこか美しささえ感じる。

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