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むつ中間貯蔵施設の事業開始・安全協定の締結について――日本共産党県議団で見解を提出

県議会は今日、閉会日を迎えています。
むつ中間貯蔵施設の事業開始と安全協定案について、知事から、各会派に対して意見照会がありました。
日本共産党県議団として、今日付けの回答を作成して提出しました。
以下、その内容を紹介します(引用になっている部分が原文です)。

結論は、「事業開始は容認できず、安全協定案の白紙撤回を求めます」というものです。
その理由を主に3つの点で述べました。


いくつかの前提を欠いている

事業開始を容認できない理由の一つ目は、いくつかの意味で議論の前提が欠けているということです。
回答では、むつに運び込む使用済み核燃料の搬出元の柏崎刈羽原発の再稼動の条件がそろっていないこと、また、共同利用の可能性が消えていないことを指摘しました。
「共同利用」というのは、むつ中間貯蔵施設を、東京電力と日本原電以外の他の電力会社からも使用済み核燃料を搬入する、という構想です。立地協定時の19年前には明確に否定されていました。
国や事業者は、「まだ議論も始まってない」といいますが、いまになって構想が出てくること自体が問題です。
火は火種の状態で消す必要があります。共同利用の火種が残っている以上、安全協定を締結する条件はないと思います。

 第一に、事業開始と安全協定締結のためのいくつかの条件を欠いていることです。
むつ中間貯蔵施設への使用済み核燃料の搬入を開始することは、客観的には、その搬出元となる柏崎刈羽原発の再稼動を後押しすることとなります。しかし同原発の再稼動については、新潟県知事の同意が得られておらず、その見通しもたっていません。搬出元の原発の再稼動の条件がそろわないままに中間貯蔵施設への搬入を開始していいのか、疑問があります
また、中間貯蔵施設の共同利用の構想が消えていません。12日の原子力・エネルギー対策特別委員会(以下、「特別委員会」)で資源エネルギー庁は、「共同利用の火種は消えたのか?」という質問に対して明確に答えませんでした。この施設の立地の経緯から考えても、安全協定案の解釈から考えても、共同利用などありえないはずです。東京電力も立地協定時に明確に否定していました。それにも関わらず共同利用の可能性を残していること自体、看過できず、この状況では安全協定締結の条件はありません。

国や事業者の説明責任は?

事業開始を容認できない理由の二つ目は、国や事業者が、いくつかの点で、19年前の立地協定時の説明を変えてしまったことです。
「事情が変わったので説明は変えたが本質的意義は変わっていない」
というのが国や事業者の言い訳でした。
しかし、いかに事情の変化があるとはいえ、19年前に県議会や県民説明会で説明したことが変わってしまうのであれば、当時の説明はなんだったのかと思ってしまいます。そして、いま国や事業者が行っている説明が将来にわたって責任をもったものなのかと疑問に思ってしまいます。

第二に、立地協定時に行っていた説明のいくつかを覆した国や事業者が、説明責任を十分にはたしていけると思えないことです。
特別委員会の際、同施設の貯蔵対象について資源エネルギー庁は、「必ずしも六ケ所の処理能力を超える分とはならない」と述べました。立地協定時には、六ヶ所工場の処理能力を超えて発生するものを持ち込む、としていた説明を変えたわけです。これは、この施設に何を運び込むかという施設立地の根本に関わる説明であるとともに、運び込まれた使用済み核燃料の搬出先に関わる説明としても繰り返されてきたものです。国は、説明を変えたことを、「本質的意義は変えていない」と合理化しましたが、そうすると、国や事業者が立地協定時に行った説明についても、この間の説明についても、その一つひとつが「本質的意義にあたるのかどうか」を吟味しなければ、その説明が将来にわたって維持されるものなのかどうか分からなくなります。しかしこうした区別をもった説明は一切行われていません。
特別委員会の際、この施設の「本質的意義」について国と事業者は、使用済み燃料の再処理までの時間的調整を可能にし、貯蔵能力を拡大し、対応の柔軟性を高めることだと述べました。そうすると、立地協定時に繰り返し言明してきたいくつかの説明――貯蔵期間が50年であること、施設利用を二社に限定すること、使用済みMOX燃料を搬入しないとしたこと――は、「本質的意義」に含まれず、維持されない可能性があります。実際、共同利用については説明を変化させました。こうしたことが他の事案でも起こりえます。
国や事業者が県民説明会や県議会で行った説明が、立地協定時以降19年の間で変わってしまうようでは、いま国・事業者が行っている説明が、今後50年にわたって予想されるさまざまな状況変化に対して維持されるとは考えにくく、この状況で使用済み核燃料を受け入れることには同意できません。 

核燃料サイクル政策が破綻している

上記2点は、「核燃サイクルが必要だ」とする立場からみても、見過ごせないはずだと思って書きました。
続く3点目は、核燃料サイクル政策そのものが破綻している、という現状認識にたって、「中間貯蔵ではなく永久貯蔵になる危険性がある」ということを指摘した部分です。
とはいえ、この間の国・事業者の説明なども踏まえ、誰が考えても疑問を持たざるを得ないであろうこととして、三つの疑義――サイクルの実現性への疑義、サイクルの必要性への疑義、国・事業者の政策姿勢への疑義――から迫ってみました。

第三に、再処理工場が動かず、核燃料サイクルの「環」の完成が見通せない状況では、中間貯蔵施設の「中間的」性格が担保できません。特に次の三つのことから、同施設にいったん使用済み核燃料を運び込んでしまえば、永久貯蔵場もしくは「核のゴミ捨て場」になってしまうことを危惧します。

一つは、再処理ができておらず、その実現性に疑義があることです。
中間貯蔵施設に搬入するものの説明を国や事業者が変えた背景には、原発の稼働量が低下し使用済み核燃料の発生が想定以下になっているという事情がありますが、それに加え、六ヶ所再処理工場が動かないことがあります。立地協定時に想定されていた「第二再処理工場」どころか、六ヶ所工場の稼働も見極められません。

二つは、「50年後」の原発のあり方が想定できず、再処理の必要性に疑義があることです。
仮に中間貯蔵施設から搬出される使用済み核燃料を再処理する施設が存在したとしても、分離したプルトニウムを何に使うのかという問題に直面します。特別委員会で事業者は、分離したプルトニウムは自社で使う努力をするとしましたが、東京電力が現在保有する原発は、廃炉が決まっている福島第一・第二原発と柏崎刈羽原発だけで、柏崎刈羽原発でプルサーマルが行えるとは考えにくいうえ、能登半島地震によって同原発の稼働自体の正当性が問われています。日本原電は、東海第二原発と敦賀原発を保有していますが、敦賀原発の敷地内の断層について活動性を否定できないという報告が出ており、廃炉の可能性が高くなってきました。東海第二原発はいまでも老朽化原発であり、50年後動いていることは想定しづらいものです。なによりも、現行のエネルギー基本計画には原発新増設の記述はありません。現時点では政府の方針に照らしても、日本の原発が50年後に存在していること自体、想定が難しいはずです。
こうしたもとで核燃料サイクル政策に固執することは、使用済み核燃料対策のために発電政策を考えるということになりかねず、エネルギー政策として本末転倒です。「中間貯蔵施設の稼働によって核燃料サイクルの柔軟性を高める」ということが強調されましたが、むしろ逆に、中間貯蔵施設を稼働させることによって原子力政策が硬直化することが危惧されます。本来の意味で「政策の柔軟性」を追及するのであれば、使用済み核燃料の貯蔵先は原発サイト内にとどめるべきであり、むやみに拡散すべきではありません。

三つは、国や事業者の原子力政策に対する姿勢への疑義です。
特別委員会での議論――特に、搬出先の議論を通じ、国・事業者は、みずからが欲する未来予想図しか想定していないことが浮き彫りになりました。
国や事業者は、中間貯蔵施設に運び込まれた使用済み核燃料の搬出先は、「その時動いている再処理施設」と説明しました。これは、核燃料サイクル政策を堅持するということを言い換えたにすぎず、搬出先の担保にはなりません。想定の一つだとした六ヶ所工場は、50年後に「老朽化」しており、ここへの搬出は立地協定時に想定されていませんでした。何よりも大問題は、搬出する再処理施設がないことが想定されていないことです。
特別委員会では、「搬出先がない場合を想定すべきだ」という質問に対し、資源エネルギー庁は、全量再処理という国の方針が堅持されることを繰り返しただけでした。しかし我が国では長きにわたってその方針を「一貫して堅持」してきたはずですが、現在、再処理施設は動いていません。国の方針があれば現実がその通りに動く、という現実がありません。
原子力推進勢力が、みずからが望む未来の想定しかもたず、「想定外」の選択肢を持っていないことは、福島原発事故以前の「古い政治」そのものです。仮に、国や事業者の想定通りに行かない場合でも、立地自治体では核物質の存在から逃れられません。県民の安全を第一に考えるのであれば、貯蔵期間終了時点で再処理施設が動いているケースだけの想定で判断するのではなく、それが動いていないケースも想定しなければ、搬出時の担保を得たとは言えません。

以上述べたように、再処理の実現性と必要性、国・事業者の姿勢のいずれにも疑義があり、使用済み核燃料が「資源」や「リサイクル燃料」にならない危険性は高いと考えます。使用済み核燃料の搬入にはリスクがありすぎます。 

施設や金属キャスクの安全性について

この他にも、安全性にかかわる疑問が残っており、原子力・エネルギー対策特別委員会でいくつか質問する予定にしていたんですが、時間切れで質問できませんでした。
国や事業者との論戦を通じて深めきれていないことも多く、その点でも、安全協定締結の条件はない、ということを付記しました。

県民説明会などを経て知事判断に

 県議会が今日で終わることで、各会派からも見解が出されると思います。
今後、県民説明会などがあります。
知事はこうした議論の全体を経て、その可否について総合判断するとしています。
青森県を核のゴミ捨て場にしない。
その危険性を増やさない。
核燃サイクルが破綻したもとで、新たな使用済み核燃料の持ち込みを許さない。
という声を大きく広げていきたいと思います。

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