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使用済み核燃料を搬入する施設(中間貯蔵施設)を、いま稼働していいのか?①


むつ市に建設中の中間貯蔵施設を巡って、県が安全協定案を提示したことを受け、青森県議会での論戦がはじまっています。
6月12日には、原子力・エネルギー対策特別委員会が開催され、私も委員の一人として30分質問をしました(写真)。

中間貯蔵施設立地の経緯は、青森県の資料にある通りです。かいつまんでいうと…。

  • 2004年(平成16年) 東京電力が青森県とむつ市に対して立地を要請する(県に提出された文書は、「『リサイクル燃料備蓄センター』の概要」)。

  • 2005年(平成17年) 立地協定の締結。

  • 現在 規制委員会の一連の手続きも終えて、安全協定案が提示された段階。

これをみただけでも、20年に及ぶ歴史があることが分かります。
そしてこの施設は、核燃料サイクル政策の一環の施設ですから、青森県と核燃サイクル政策とのさらに長い関係が背景にあります。
こうした背景や前後関係などが分かりやすいとは言えないので、少しまとまって書いてみます。

中間貯蔵施設とはどういう施設か?

中間貯蔵施設の正式名は「リサイクル燃料備蓄センター」といいます。
名前が示すことを素直に読むと、「リサイクル燃料」を運び込んで、「備蓄」する施設だ、ということになります。「備蓄」期間は1棟あたり最長50年。いまはまだ1棟(3000トン分)しか立地されていませんが、さらに2棟目(2000トン)を建てる計画になっています。
ただしこのネーミングは実態をぼやけさせるものとなっています。
特に「リサイクル燃料」という言葉には注意が必要です。
「リサイクル燃料」と言われると、ペットボトルとかプラゴミのようなイメージがあるかもしれませんが、ここでいう「リサイクル燃料」とは、使用済み核燃料のことです。

使用済み核燃料を「リサイクル燃料」と名付けている理由は、日本が核燃料サイクル政策をとっているからに他なりません。
”使用済み核燃料には使える部分があるので、それを取り出して新たな燃料にする”
これが核燃料サイクル政策です。
だから使用済み核燃料を、「資源」といってみたり「リサイクル燃料」といってみたりするわけです。

中間貯蔵施設とはなにか、ということを実態に即して言うと、使用済み核燃料を<再処理までの間、中間的に>貯蔵する施設となります。
この施設に使用済み核燃料を搬入する事業者は、東京電力と日本原電の2社です。立地要請は東京電力が行い、それに途中から日本原電が入ってきた結果、19年前の立地協定はこの2社と調印しているという経緯からもその2社が相手となります。
この点を加味して、「中間貯蔵施設とは何か」をもう少し正確に言うと、
<東京電力と日本原電の>使用済み核燃料を<再処理までの間、中間的に>貯蔵する施設
となります。
この言い方自体は、国や事業者の立場にたっても違和感がない説明になっているはずです。
ただし<>を付けた2つの部分については、かなり怪しいと考えています。この点は、エネルギー特別委員会でも議論が集中しました。その理由については、別途記事を書きたいと思います。

諸外国では、使用済み核燃料を「高レベル放射性廃棄物」として最終処分の対象にしている

日本は核燃料サイクル政策をとっているため、むつ市に運び込もうとしている使用済み核燃料を「資源」とか「リサイクル燃料」とか呼んでいるわけですが、世界のほとんどの国は、使用済み核燃料を高レベル放射性廃棄物として扱い、最終処分を検討しています。
例えば、世界でもっとも地層処分の工程が進んでいるとされるフィンランドのオンカロの施設でも、処分対象は使用済み核燃料です。「安全になるまで10万年かかる」とされる代物です。
そして日本では、使用済み核燃料を「資源」に変えるはずだった核燃料サイクル政策がうまくいきません。使用済み核燃料がいっこうに「資源」となる見込みがないのが現状です。
いくら日本で「資源」だとか「リサイクル燃料」だとか言ってみても、物体としては、高レベル放射性廃棄物として扱われている危険な物質であることには変わりありません。
そういう物体が、むつ市に来るという話です。
原発サイトも再処理施設もない、むつ市に運び込むわけです。
青森県に、使用済み核燃料を搬入し貯蔵する新たな場所をつくっていいのか――これが問われています。

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