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存在しない小説のワンシーン書いてみた その2



「どうだい?ゲージの外に出た気分は?」
「・・・うーん。正直、実感がなさすぎてわからない。なんせ今までずっとゲージの中にいたものだから、今のところなんとも・・・」
「混乱する気持ちもわからないでもない。けど、今のあなたは、ゲージの外にいる。ほら、ここからゲージが見えるだろう?少し前まであなたは、あの中にいたんだ。ここからだとゲージの近くまで近づかなければ、あの有象無象の黒い点が人だとも分からない。それがここからみえる現実であり、紛れもない事実だ。」
「けど、まだ信じられない。こんな景色があったなんて・・・」
「無理もない。あなたは、ずっとあの中にいて、あの中で生活していたのだから。今もあの中にいる人たちは、別に不自由するでもなく、日常を淡々と送っている。もちろんここから自分達がどうみられているかどうかも知らないし、知る由もないし、別に知らなくてもいい」
「・・・私は、なぜ選ばれたんですか?」
「うーむ。別に選んでなどいない。選ばれたと考える事自体が傲慢な考えだ。あくまでたまたまであり、偶然。ラッキーでもなければ、アンラッキーでもない。ただ、事実として、あなたは、ゲージの中から外に出た。それだけでしかない。それに、私は、あなたがゲージの外でこれから何をしようが知ったこっちゃない。興味がないんだ。私を無責任だと思われるかもしれない。それに関して否定も反論もしない。そもそも、私は無責任だし、無責任だからこそ、ただの暇つぶしであなたをゲージの外へと出したのだ。ゆえに、あなたをゲージの外に出した時点でもう私はスッキリしている。それ以降のことなんて、何も考えていない。」




・こぼれ話

「ゲージ」って言葉を使いたかっただけです。はい。

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よよ
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