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全てが可視化される社会――フジテレビの中居正広氏性加害問題
今日(2025年1月27日午後4時)のフジテレビの会見で、フジテレビの嘉納修治代表取締役会長とフジテレビの港浩一社長の辞任が発表された。
会長と社長の引責辞任という形になったが、フジテレビの最高権力者が日枝久氏である事など誰しもが知る事実なので、日枝氏がフジを去り、日枝体制に幕引きがされないのであれば、物言う株主(ダルトン)が納得するかは非常に微妙なところだと思う。
以前の記事でも書いたが、元々、日本は、2015年に冤罪色の極めて強い名張毒ぶどう酒事件の奥西勝氏が死刑囚のまま獄中死し、その事実が海外で報道された事で、人権意識の欠落した異常な国、という認識を持たれている。
更に伊藤詩織氏が自身の性被害に関する地裁で勝訴した際には、菅官房長官(事件当時)が黒幕になる形で、警察官僚であり警視庁刑事部長であった中村格警視監(同)が逮捕状の執行を停止し、性被害を揉み消したと、海外メディアに腐敗が著しい事で有名なイタリアのベルルスコーニ政権を例に挙げながら報じられるという非常に恥ずべき出来事もあり、日本は人権意識が低いだけでなく、政治腐敗も著しい国、という認識を持たれていた。
その上でジャニー喜多川氏の性加害問題が報道される事で、人権意識の異常な低さだけでなく、マスメディアの異常性も指摘され、はっきり言えば、途上国型の腐敗した政治とメディアが支配する国、という認識を持たれるような有様になり、その延長線上で起きたのが、中居正広氏の問題だった。
海外メディアも、どうやら、この異常な問題に関心を持っているようだ。
そのような国で会社側の組織的な隠蔽が疑われる状況にある以上、余程の行動を取らない限り、フジテレビという企業が、市場から今後も企業としての活動を容認されるか疑わしい状況に置かれていた。
新社長はフジ・メディア・ホールディングスの専務取締役の清水賢治氏らしいが、社外から社長と複数の取締役を迎え、企業風土と組織文化の刷新をしない限り、問題の根治ができるとは到底思えないが、深刻なスポンサー離れが起きる中、迅速に事態に対処する為に取られた窮余の策とも考えられる為、同問題の真相解明に一定の目途が立てば、社外から社長を招聘し、抜本改革に取り組む、という流れになるのかも知れない。
中居正広氏という一芸能人が起こした不祥事で、大企業が崩壊の危機に瀕する。
一昔前では考えられなかった出来事だ。
このような現象が起きる原因だが……。
まず第一点は、現代は、ネットメディアが非常に発達し、情報を持つ個人が自由にネットで情報を出せる為、出来事を隠蔽するのが困難になっている。
無論、デマ情報を組織的に拡散する事を始め、真実を伝えようとする人達の活動を妨害する事などもできるわけだが、基本的には、人の口に戸は立てられないことに変わりはない。
第二点は、デジタルタトゥーを始め、個々人の発言と行動が、全てとは言わないが、殆どが記録され、全てが他者から可視化されている社会を迎えている点だ。
ツイッターやインスタ上での発言は全て記録として残るし、ネット掲示板上の書き込みに関しても、本人の書き込みであるとわかる情報を含んだものに関しては、全て、その人の発言として残る。
第三点は、スマホの普及により、以前にも増して、会話や音声の録音、出来事の撮影(録画)が容易になった事がある。
どこかで何か問題を起こした場合、第三者がスマホで撮影していたり、暴言を吐いたり、問題発言をした場合、その発言を録音されている可能性がある。
この三点を纏めると、こういう事になる。
現代人はプライバシーの存在しない社会で暮らしている。
この件に関して、岡田斗司夫氏は、面白い話をしている。
最近の芸能人の特徴として、スマホで撮影されたり、録音されたりするリスクがあるので、撮られて困るような行動はしないようになっているそうだ。
裏と表の顔があると面倒なので、表の顔だけの社会になる(人間の性[さが]として裏の顔が全くない人間などいないので、裏の顔が出せない、そういう意味では生きにくい社会になる、という事になるが……)。
また、スマホで使う「追跡アプリ」に関しても、ストーキングアプリという認識はせず、友人間で互いにアプリを使用して、今、遊びたい、会いたいと思った時、友達がどこにいるのかを確認するような利用の仕方をしていると言っていた。
そのような使用方法をしている人がどれだけいるのかはわからない。
だが、こういう言い方はできる。
人間側が最新技術に合わせてライフスタイルを変化させている。
Z世代をデジタルネイティブ世代という呼び方をする事もあるが、ネットの普及で自身が情報の発信者にもなり、動画像や音声のアップロード者にもなり得る社会における、人々の生き方という事になるのだろう。
また、岡田氏はこんな事も言っていた。
今後、過去の発言をツイッターなどから掘り起こされて、バッシングされるような現状が普通の人の間でも起きるようになるだろうし、その事によって一瞬にして全てを失うようなケースも増えてくるだろうから、SNSでの情報発信はリスクがあるから止めた方がいい、と。
例えば俺は創価学会の問題を記事にしてきたし、過去に実際に起こした事件についても取り上げているが、俺に限らず、同じような事をしている人はいるし、中にはYouTubeのチャンネルで、取り上げた動画が作成され、アップロードもされている。
SNS上での過去の言動に限らず、書籍として出版された内容、過去の新聞や雑誌の報道、そういったものは情報源として活用されるし、過去の問題や出来事の掘り起こしなどもごく普通に行われるし、社会問題や時事問題を取り扱うインフルエンサーがそれらを取り上げる事もごく普通にある。
そしてそれら情報発信を第三者が食い止める事は出来ない。
これはあらゆる個人、団体、組織にも当てはまる。
岡田氏はSNSに限定していたが、今後起きると考えられる出来事は、そうではなく、世の中に出回っている全ての情報が活用されて、過去に問題を起こしていた人物や団体、組織に関しては、掘り起こしによって、批判や非難されて、バッシングされる時代に突入したという事だ。
フジテレビの問題は、序章に過ぎないと見ている。
エホバの証人だって、あれだけ酷い虐待が内部で横行していて、外部から見ると明らかにカルトとしか呼べないような状況にあったのに、長い事、隠蔽されてきたものが、ネットが存在する事で全て明るみに出た。
今までタブー視されて表に出てこなかった問題が、これから続々と噴出して、悪しき行いに手を染めていた個人や団体、組織は、徹底的に糾弾される社会の幕が開けるのだろう。
悪い事をしてきた人達(団体、組織)にとって地獄が始まる。