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普通の国になっていくアメリカ
今日の話も、大した内容ではないのですが。
革命国家は、その宿命として、革命思想を輸出し続けなければならない。
という話があるのですが、ご存知ですか?
有名なところで言えば旧ソ連。
旧ソ連は世界中で共産主義思想(革命思想)を輸出し続け、手段を択ばずに世界中の国々で社会主義革命を起こし、プロレタリア独裁による共産党一党支配の労働者国家を樹立しようとしました。
イスラム教指導者のホメイニ師によってイスラム革命の起きたイランも同じです。イスラム革命(革命思想)を海外に輸出し続け、海外の革命勢力を支援し、イスラム革命が起きて宗教国家(イスラム国家)が樹立されるよう、執拗に煽動し続けています。
イランが各地で活動するイスラム原理主義勢力を金銭的に支援し、武器を供与し、戦略・戦術面で支援しているのも、革命国家が持つ特有の性質に由来しています。
何故そのような事をするのか、ですが、革命国家というのは、イデオロギー(思想)に基づいて建国された人造国家であり、異質な存在(不自然な存在)である為、世界から排除される運命にあるのです。
だから革命国家は自国を防衛する為に、革命思想を輸出し、同じ革命思想の元に建国された国家を増やそうとするわけです。
アメリカという組は市民が手を取り合い支配者や統治者のいない自由な国を作るという自由主義と民主主義思想に基づいて建国された革命国家であり、だからアメリカ独立戦争の事は、アメリカ独立革命とも呼びます。
アメリカ合衆国の独立(アメリカがっしゅうこくのどくりつ)あるいはアメリカ革命(アメリカかくめい、英: American Revolution)、アメリカ独立革命(アメリカどくりつかくめい、英: American Independence Revolution[1])とは、代表的な市民革命の一つ。18世紀後半に北アメリカの13植民地が結束して宗主国であるイギリス(グレートブリテン王国)の植民地政策に抵抗し、アメリカ独立戦争を経て、当時までほとんど常識であった君主制を離れて、アメリカ合衆国という共和制国家を成立させた一連の出来事である。その後のフランス革命などにも大きな影響を与えた。
概要
この期間の中心となる出来事は、1775年から1783年のアメリカ独立戦争であり、さらにその中でも1776年のアメリカ独立宣言と1781年のヨークタウンの戦いにおけるアメリカ軍の勝利が特筆に値する。
フランスはアメリカの愛国派達に金と武器を供給し、イギリスに対する同盟を結成し、陸軍と海軍を派遣。ヨークタウンの戦いで戦争自体を終わらせ、独立戦争の鍵となる役割を演じた。しかし、アメリカ人は啓蒙思想哲学者の考え方の影響を強く受け、絶対君主制に反対していたので、フランス王政をアメリカ政府のモデルにはしなかった。
アメリカの独立は、アメリカの大衆に受け入れられた新しい共和制思想のような初期アメリカ社会で起こった一連の広く知的かつ社会的変化を伴った。植民地においては、政府における民主主義の役割について鋭い政治的議論があった。アメリカの共和制への移行と段階的な民主主義の拡大とは、伝統的な社会階層に混乱をもたらし、アメリカの政治的価値観の中核となる倫理観を創った[2]。
実はアメリカで社会主義運動が定着し切らなかった理由の一つとして、アメリカは自由な市民が横の連携を手に取りあって建国した共和制国家であり、その為、階級というものが存在しないというフィクションがある為、階級闘争を思想に内包する社会主義思想が受け入れられにくい土壌があった、とする説を唱える人達もいるくらいで、今でもアメリカは、あれだけ極端な格差社会になっているのに、階級は存在しない、存在するのはあくまでも階層である、という考え方が主流であるとも言われています。
アメリカにはよく「王様がいない」、「貴族がいない」という事を言われるわけですが、言い換えれば、アメリカにとっては、世襲の王侯貴族がいない市民国家であるという誇りでもあるという事なのです。
また、アメリカという国は、自国で宗教的に迫害された人達が、宗教的な自由を求めて移住してきた移民国家でもある事から、政府から縛られない自由が非常に重視されており、一定の制約はあるものの、原則として、何をしようが自由の国になっています。
共産主義の実験をする為に少人数のグループがアメリカに移住してきたというケースも実際にありますし、良くも悪くも、アメリカは何でもありで、所属するグループや団体の構成員以外の人達に迷惑や悪影響を与えない範囲であれば、かなりの自由が与えられるという特殊性があります。
アメリカだとアーミッシュと呼ばれる人達が有名ですが、あのような異質な人達が自分達の教義に従った特殊な生活を送る事が容認され、社会の中で生存する事が出来ているのも、そういったアメリカという国の特殊性が齎しているという事なわけです。
この前、USAIDの問題を記事にしました。
アメリカという国家をこの文脈で捉えた場合、USAIDの行ってきた活動というのは、全く違った見え方をしてくるわけです。
当然ですが、上述の記事は、アメリカが革命思想の輸出を常に行っている革命国家であるとの認識の上で記しています。
USAIDが行っていたLGBTQとSDGzの世界への拡散と浸透は、海外諸国を侵略する意図があったわけではなく、純粋に自由民主主義思想の輸出としてやっていたというのが実際のところであり、また、ネオコンのような武力を用いてまで自由民主主義体制を諸外国に強要するといった過激な姿勢は取っていないとしても、自由民主主義思想を最上の思想・制度と捉え、世界中のあらゆる国でその思想と制度が採用されるべきだとの信念の元に、自由民主主義勢力への肩入れをしてきたというのが実際のところだと思います。
つまりそのUSAIDを閉鎖するとか、完全にやめてしまうという事は、アメリカが普通の国になる事、革命国家である事をやめるという意味を持っているのです。
アメリカでは国民皆保険がなく、その為に困っている国民が大勢いる為、早急に導入すべきだという意見が非常に強く存在していますが、この問題はどういわれてきたかというと、社会主義(社会民主主義)勢力が支配的な地位を占めてきたヨーロッパと同じ状況になるということで、アメリカが普通の国になる事だという言われ方をしてきたのです。
先程の話に戻りますが、アメリカは、市民が水平的に手を結んで社会を構築していると考える階級の存在しない社会という事になりますので、たとえそれがフィクションであっても、政府に対する考え方が、普通の国とは違うわけです。
大なり小なり、普通の国であれば、国民と政府(政治)との間には上下関係があるという感覚がありますし、日本でもお上という言葉があり、政府が税を徴収したり、社会保険方式を取り、社会保障を行う事は自然なものだと考えるわけですが、アメリカのような感覚を持っている場合、政府に必要以上に権力を握らせる事自体に不信感があったり(アメリカは異様にリバタリアンが多い国としても有名です)、互助は必要としても市民が自助で最大限何とかしろという話になり、それで国民皆保険が成立しないわけです。
国民皆保険は保険業界が妨害しているからアメリカでは導入されないのだという説は間違いではないのですが、国の成り立ちからくる国民の政府や社会に対する認識の差も、制度導入の障害となっている現実があるわけです。
その皆保険が導入されるとしたら、アメリカ国民の政府や社会に対する感覚が変化している事、変化する事を意味するので、それでアメリカが普通の国に変わったという話になるわけです。
移民問題に関しても同じです。
アメリカは移民国家であり、様々な境遇の人々を受け容れるというのがイデオロギー的にも国の成り立ちの経緯的にも伝統ですが、自国民の職が奪われるとか、治安が悪化するという理由で移民を拒むというのは、結局のところはこういう事です。
既にアメリカ国籍を取得して生活している人と、移民として新たに入って来る人々とを峻別し、前者の生活を守る為に、移民の流入を制限する。
多分、何当たり前の事言ってるんだ、こいつは?と思う人もいるでしょう。
その通りです。
普通の事なんです。
それは「移民国家ではない、普通の国」では、ごく普通の(当たり前の)考え方として行われているものです。
これは要するに、アメリカが伝統的、イデオロギー的に続けてきた移民国家、自由で開かれた市民社会というものを放棄し、普通の国に変化する事を示すものなわけです。
言い換えると、今までのアメリカは、普通の国ではありえないような考え方を、移民国家として行ってきていた、という事なわけです。
より具体的には、アメリカ国民も、元々は移民なので、新たに入ってくる移民と、国籍を持っているアメリカ国民とを同じ土俵に上がらせて、対等なものとして扱うという方針が取られてきた、と。
今後は、それを改め、非移民国家と同じ考え方で国家を運営していく。
そういう話です。
これもアメリカが普通の国になるという事を示しています。
トランプ大統領が王冠を被った画像がX(旧ツイッター)のホワイトハウスの公式アカウントから行われ、トランプ大統領が国王であるかのように振る舞う投稿をSNSで行ったとして物議を醸していますが、ああいうのを見ていても、ああ、アメリカが普通の国になって行っているのだなあ、と、そんな感想を持ったわけです。
現在、自由民主主義体制はかなりの国で採用され、定着していますし、アメリカが建国されてから250年くらいが経ち、既にアメリカが掲げてきた自由民主主義体制は、国際的には特殊な体制ではなくなっています。
革命思想の輸出などせずとも、アメリカが自由民主主義国であるとの理由から、大国に睨まれ、大国が連携してアメリカを滅ぼし、自由民主主義国を世界から消し去ろうとするような事もしないでしょうし、そういう観点からこの問題を捉えれば、アメリカが革命国家という縛りを捨てて、普通の国に転換するというのは、自然な流れなのかも知れません。
ただ、中国やロシアのように、民主主義体制を否定し、自由主義的な価値観を敵視する大国が存在している事も事実ですし、今後の展開次第では、自由民主主義体制が崩壊する可能性もないとは言えない状況になりつつある為、その点には不気味さも感じるわけですが。