皮膚の保湿で食物アレルギー予防
師走になり空気が乾燥してくるように手がカサカサになってきている人も多いのではないでしょうか。元々アトピーの方はもちろん、この時期は主婦の方など水仕事をされる方は皮膚が荒れてしまう方も多くいるかもしれません。そのような方は要注意です。皮膚のケアをしてちゃんとしていないと食物アレルギーを発症してしまうかもしれません。
アレルギーはそもそもどれくらいの人がなるのか
生きていく上でアレルギーは出来ればなりたくなりたくたいものです。
でもアレルギーは幼い頃に実はよく発症していきます。おおよそアレルギー患者の9割が10歳以下に偏っており、乳幼児期有病率は 5〜10%、学童期以降の有病率が 2%程度と見積もられています。
乳幼児期のアレルギーは成長と共に耐性を獲得します。その機序としては消化管の消化機能や物理化学的防御機構の発達に加えて経口免疫寛容の発達が重要であり、種々の細胞や抗体の熟成が認められる。発達に伴い、新規発祥の原因食物の頻度は変化する。
アレルギーってもともと何か?
ざっくり言ってしまえば寄生虫を追い出すための反応でした。免疫反応とはつまり「異物を排除する反応」で、異物を排除するために正常な細胞もろとも壊してしまう現象を「炎症」と捉えるとわかりやすいと思います。ただ寄生虫は体内に入ってきた時点で追い出さないと行けない異物なのでその反応は正しい(腸管内にサナダムシが居着く事がありますが、そもそも腸管内は体外でしたね)のです。
食物アレルギーにならないためにはまずは食べて「学習」させる
ただし、食物は異物でありながら栄養でもあるのでうまく体に取り込んでいく必要があります。ここで必要になってくるのが「食べ物が栄養である」とちゃんと体の免疫細胞たちに学習させる事です。学習する場所はずばり「腸管」です。食物が腸管で消化されると「この食べ物は体にとって必要なものだ」と学習し、過度な異物除去反応(アレルギー反応)を起こさなくてすみます。これを経口免疫寛容と言いますが、実際にピーナッツを与えなかった乳児達とピーナッツを早期に(離乳時期から)与えた乳児達では5歳時点で圧倒的にピーナッツを与えなかった方がピーナッツアレルギーを発症しましした(除去群の17.2%が発症、摂取群では3.2%が発症)。これは鶏卵でも同様のことが報告されています。
食物が皮膚から入ると「異物」と学習してしまう
一方、食物が皮膚から入ってきしまうとそれは異物だと学習してしまい、食物アレルギーを発症することになってしまいます。通常の皮膚の場合は食物が触れても強固な皮膚バリアによって、皮膚から体内に入ることはありませんが、何かしらの原因で皮膚バリアが損傷してしまうと容易に食物の成分が皮膚から侵入して免疫細胞が誤って「異物だ」と学習してしまうことになります。実際、アトピー性皮膚炎(湿疹)を発症している患児はアレルギーを発症する率が高まり、皮膚炎(湿疹)をコントロールすることでアレルギーの発症率を低下させることがわかっています。また調理師さんや主婦の方は頻回の水仕事や洗剤への暴露で皮膚バリアが破綻し、また食品も頻繁に触るため食物アレルギーを発症しやすいですし、美容師さんも界面活性剤やスクラブ剤などで皮膚バリアが障害され、その上で美容成分と謳う食品由来成分によってアレルギーを発症してしまいます。
石鹸の使用で小麦アレルギー爆増
2009年にその象徴的な事件が起こりました。「茶のしずく石鹸」を使用していた消費者たちが次々に小麦アレルギーを発症し、中には呼吸障害を起こすまでのアナフィラキシー(重篤な全身性のアレルギー反応)を起こすに至ることがありました。
この石鹸にはコムギの成分(加水分解コムギ)が入っており、これを使用することで(使用する手が荒れていた場合)皮膚からコムギ成分が侵入し、コムギを誤って異物と学習させてしまったと考えられます。その結果アレルギーを次々に発症し、自分が小麦アレルギーとは知らずに小麦製品を食しアナフィラキシーを起こしてしまったと考えられます。
個人の判断で「食べて治す」は要注意
ここまで読んで頂いた中には「じゃあ食物アレルギーは口から食べて腸管で学習させれば良いのだ」と思われた方もいるかもしれませんが、それは要注意です。実際に「経口免疫療法」は医療の世界で行われています(特に鶏卵、牛乳、小麦、ピーナッツ)。ただし、すでに間違って学習してしまった食品を食す事は、食事によって症状を誘発する可能性が高く、一般家庭ではまず推奨されません。危なすぎます。必ず医師の指導の下で安全な量を見計らいながら行うようにしてください。
参考)
・アレルギー総合ガイドライン2019
・アレルギー・免疫2018vol1 食物アレルギー
・トータルアプローチ アレルギー診療
引用)
小麦加水分解物を含有する「旧茶のしずく石鹸」
http://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20110714_1.pdf
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