受賞の向こうがわ⑤……改稿、その1
編集・Nさんとの初回打ち合わせ後(前々記事参照)、早速1回目の改稿に着手しました。
打ち合わせのあとはなるべく早くカフェに入って、勢いのまま、思いついたことを片っ端からメモするようにしています。
今回、Nさんからの具体的な修正指示はさほど多くなかったため、話し合いで定まった方向性をもとに、自分なりに解決策を立てていきました。
一番の課題は選考時から評判が今ひとつだった後半から終盤にかけての部分です。こちらについては改めて話の流れを整理し、いくつかエピソードを追加して、展開に厚みをもたせることにしました。
それに伴い、当初は7章で組んでいた構成を8章に変更。話の中で鍵になっているイベントがわかりにくい、という指摘もNさんから受けていたため、その部分も補完できるように新規のエピソードを考えていきました。
結果、エピソードは3つほど追加することに。ひとつはもともと書きたかった内容で、枚数の都合上泣く泣く断念した話を採用。ためしに書いてみたところ、うまくはまった感覚がありました。
問題は残りの2つです。「こういう話にしたい」というイメージこそあれ、実際に文章にしてみると、どうもしっくりきません。
アイディアは悪くないはず……と首をひねりつつ、書いては修正、という作業を続けること二週間。調子は一向に上がらず、書けば書くほどますます深みに入っていく感じで、だんだん焦りをおぼえはじめました。
今考えると、3月に作品を書き上げてから8か月経ち、少し作品から気持ちが離れていたというか、自分でも気づかないうちに感覚がずれていたというか、とにかく微妙に違和感がありました。
さて、こんなときどうするか。
私は「気合と根性」で焦りを叩きつぶすべく、創作にかける時間を一気に増やすことにしました。それが、いけなかった。締め切り前の、おねがい、今だけはやめて……! という最悪のタイミングで、身体が次々に悲鳴を上げだしたのです。
まず、腰をやられました。
常に鈍痛が張りついている感じで、ひどいときは二足歩行すらままなりません。家のなかを瀕死のクマのように移動し、痛みが来るとうめき声をもらしつつ、みじめな体でのたうち回る始末。
さらに追いこみをかけている最中に風邪をひき、40度近い熱が出ました。幸いコロナではなかったものの、思考力がどんどん蒸発していくなか、なおも改稿を進めようとすると、今度は膝に謎の激痛が走り、悶絶……。
たぶん、Nさんに相談すれば間違いなく締め切りを伸ばしてくれたと思います。
けれども、初回から締め切りを守れないのもどうなの? と思い、半ば意地のかたちで仕上げ、へろへろの状態でどうにか原稿を送信。増えた枚数は70枚ほどでしたが、削った箇所もあるので、だいたい100枚ほど加筆しました。
送ったぞ……とほっとしたのもつかの間、直後に急性の胃腸炎を発症。まさに踏んだり蹴ったり、日頃の不摂生が一気に爆発した感じで、年末は本当にきつかった記憶しかありません。
せめて、肝心の改稿に自信があればまだ救われたと思いますが、まるで手ごたえがなく、「あけましておめでとう!」といいつつ、ちっともめでたくない気分で年明けを迎えました。
はたしてNさんからどんな回答が返ってくるのか……新年早々、戦々恐々という感じで、次の打ち合わせの連絡を待ちました。