受賞の向こうがわ⑥……2回目の打ち合わせ
さて、ほうほうの体で1回目の改稿を提出したのち(前回記事参照)、編集・Nさんから連絡が来たのは三週間ほど経ってからでした。
原稿の感想についてはさらりと触れるのみで、詳細については直接会った時に説明したいとのこと。なにやら不穏な文面に不安がふくれあがるなか、2回目の打ち合わせは2月初めに決定しました。
ところが打ち合わせ前日、なんとまたしても風邪で発熱……。やむなくNさんにメールしておわびし、日程を延期してもらうことになりました。
仕切り直しの日は2月10日。東京にしてはめずらしく大雪に見舞われ、当日は真っ白い舗道を歩きながら護国寺の講談社に向かいました。
とにかく前回の改稿があまりにも不甲斐なかったため、準備だけはしていきました。提出後にさんざん練り直していた再改稿案を携え、背筋を伸ばしてNさんと向き合いました。
「今回の改稿、ご自身としてはどうでしたか?」
開口一番、こちらの自己評価を求めてきたNさん。
「いや、正直、あんまりうまくいかなかったです……」
いかにも気まずそうな私の口ぶりに小さくうなずきつつ、Nさんは非常に心苦しそうに切りだしました。
「たしかにちょっと無駄なところが多いというか、たとえば……」
Nさんは出力した原稿に赤字で不要な部分をメモしてくれたようで、こちらに見せてくれました。
あれも不要、これも不要、腰痛と発熱を乗り越え、気合と根性で加筆した部分がばっさばっさと消えていきます。
原稿に入って赤色を見るたびに、ひっそりと青ざめていく私。「フッハッハ! 見ろ、原稿がゴミのようだ!」とNさん(ウソです! そんなこと言いません!)。
「新しく書いてくださったところばかりで申しわけないんですが、わたしはいらないと思います」実に申し訳なさそうに、そっと告げてきました。
その言葉を聞いてどう思ったか。
私は全力で「バルス!」と唱えました(ウソですよ!)。
いやもう本当に、素直に、「そうだよね……」と思いました。
なにせ自分でもうまくいってないと感じていましたし、改めて読むと熱のうわごととしか思えないような、くだらない内容も書いてありましたから。完全に納得というか、悔しさよりも申しわけなさが先に来ました。
ただ、一カ所だけやはり残したい場面があり、話の展開上なぜその場面が必要なのか説明したところ、Nさんからは「うーん」とやはり渋い反応が。
「おっしゃることはわかるんですけど、それは別の方法でも表現できるんじゃないですか。たとえば……」
Nさんの代案を聞いたとき、正直なところ、あまりしっくりきませんでした。けれども、改めて考え直したとき、あれ? という引っ掛かりが。
たしかにそれで表現できなくもない……というか、ふつうにいけそうな……いや、むしろその方がいいかも……うん、絶対にそっちがいい!
こういうとき、編集者の存在を本当にありがたく感じます。そうです、編集の皆さんはすごいんです! Nさんの直しの案は、ありがたく頂戴することにしました。
その他、いくつか追加の修正指示を受け、今回も一時間ほどで打ち合わせは終了。前回の反省を活かし、締め切りは少し余裕をもってひと月半ほど先にしてもらいました。
さあ、仕切り直し!
帰り道はひやりとした冬の風がとても気持ちよく感じられました。