こども・若者に新たな出会いのある場所
注目されつつある「こども・若者のための場所」
2023年4月、こども家庭庁が発足し、こども基本法が施行されました。5月には庁内にこどもの居場所部会が設置され、こども・若者がどんな場所を欲しているのか、こども・若者にとって場所はどんな価値があるのか、社会的に注目を浴びています。そうしたこども・若者政策をめぐる動向のなかで、今まさに注目を浴びつつある「こども・若者のための場所」としてユースセンターがあります。
「ユースセンター」という言葉に聞き馴染みのない方もいらっしゃるかもしれません。ユースセンターは、こども・若者(ユース)が自由に過ごすことのできる施設で、こども・若者にとって居場所にも活躍の舞台にもなるものです。ただ場所としてあるだけでなく、ユースワーカーと呼ばれるスタッフが常駐し、日々中高生との関係を築いている点も特徴的です。
この記事では、そんなユースセンターの魅力を発信するオンラインイベント「#ユースセンターがある生活」の様子を報告しながら、「こども・若者のための場所」について考えていきたいと思います。
6割の中高生が登録をする場所
2023年6月29日、山梨県にあるユースセンターMiacisをお招きして、#ユースセンターがある生活 第6弾が開催されました。計30人近くがご参加くださり、Miacisがどういう場所なのか、施設を利用する中高生は何を感じているのかを聞くことができました。
Miacisは、山梨県韮崎市という東京から90分の移動で辿り着く街の駅前にある施設で、全中高生が利用対象です。「らしさ、無制限」をテーマに掲げ、中高生の選択と自己決定が保障される自由な活動の場となっています。置いてある楽器を自由に演奏したり、トランプやボードゲームで遊んだり、卓球台で体を動かしたり、スタッフに雑談や相談をしたり。中高生がMiacisでできることはたくさんあります。そうした余暇を過ごせる身近な空間でありながら、こども・若者のチャレンジをスタッフがサポートする場でもあることが伝わってきました。
こども・若者にとって場所がもつ価値
本イベント「#ユースセンターがある生活」の最大の山場は、様々なユースセンターで日常を過ごしているこども・若者同士が、日ごろの過ごし方やユースセンターに対する思いを語り合うトークセッションにあります。ユースセンターという「こども・若者のための場所」の当事者から、直接その場で過ごす価値を聞くことができるのです。今回の第6弾では、Miacis利用者のいのうさんに加えて、世田谷区池之上青少年交流センターいけせい利用者のこうすけさんと尼崎市立ユース交流センター利用者のゆうさんが参加してくれました。
東京から山梨に引っ越してきたMiacis利用者のいのうさんは、そのトークセッションのなかで、山梨では東京よりも公園が少ないと話していました。地方には、こどもが遊んで過ごせる場所が少なかったのです。クラブチームや部活も少なく、ゲームで遊ぶこどもたちが多い。そのせいか、いのうさんには「居場所がない」「一人取り残されている」という感覚があったそうです。そんななか、いのうさんはMiacisと出会い、遊び場として使うようになります。
いのうさんはこう話していました。1人で来ても、施設のなかで他の利用者とつながるようになっていったのです。イベント参加者からは、「どうして見知らぬ利用者に話しかけられたのか」という質問がいのうさんに寄せられました。いのうさんは、最初はスタッフが利用者と利用者をつないでくれていたと話します。そこから次第に自ら他の利用者や大人にも話しかけに行くようになり、コミュニケーション能力が上がっていったのだそうです。そうした過程を経て、年齢こそ違うけれども、Miacisというその場所を共有している中高生や、イベントでMiacisに訪れた地域の大人と関わるようになっていきました。
年齢の違う中高生との関わりは、東京都世田谷区でも、兵庫県尼崎市でも生まれていました。世田谷区いけせい利用者のこうすけさんは、自身の過ごす場所であるいけせいを「一人でいても誰かといても楽しめる施設」だとも話していました。
こうした当日の中高生の声を聴いて、参加者の方からは「施設を使う中で、大人にぐいぐい話しかけられるコミュ力がついたとユースの口から聞けたことがとても印象的でした!」という感想もいただきました。また、ユースセンターという場所のもつ価値として、「多様な価値観に触れて、若者の可能性を広げること」や「いろいろな価値観・人・物に出会い、世界を広げられるところ」といった内容をあげてくださる参加者の方々もいました。
今回のイベントで中高生やイベント参加者の声を通して、ユースセンターがただ知り合いと訪れて遊ぶ場所であるだけでなく、新しい人との出会いとつながりの生まれる場所としても価値をもっていることがわかりました。
ユースセンターを増やしていくために
このように、価値があると利用者自身が感じているユースセンター。私たちは、こども・若者の選択肢の1つとしてユースセンターを広げていきたいと考えています。そのための取り組みとして生まれたのが、今回ご紹介していたイベントである「#ユースセンターがある生活」です。
#ユースセンターがある生活は、文京区青少年プラザb‐labと尼崎市立ユース交流センターの2つのユースセンターが事務局となって開催しているイベントです。ユースセンターの価値を当事者の視点から広めていくことを目的として、日本全国の様々なユースセンターのスタッフと利用者をゲストとしてお招きしています。2022年3月に第1回を開催して以来、数か月に1回開催し、今回で第5回を迎えました。
*第1回のイベントのレポートはこちらからお読みいただけます。
第6回となる次回は、北海道のユースセンター「Youth+」の皆様をお招きして、8月25日(金)18:30-20:30 に開催する予定です。ユースセンターを初めて聞いたという方でも、今回のレポートで興味を持ってくださった方には、ぜひご参加いただけるとうれしいです。皆様と画面越しでお会いできることを楽しみにしております。
また本イベントでは、#ユースセンターがある生活 というハッシュタグを使用しています。TwitterやInstagramにて、#ユースセンターがある生活で検索いただくと、様々なユースセンターでの日々の様子をご覧いただけるかと思います。ぜひこの機会に、そちらも併せてご覧ください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。