『仕事の8割はつまらない』No.6
2020年、1ヶ月働き給料日にはお金が振り込まれるという、一見当たり前のように思っていたことが、いかに大変なことなのかを改めて考えさせられるようなことが起こった。COVID-19のパンデミックは世界中の経済活動を止めてしまった。
この影響を少しも受けなかったと言い切れる企業は無いだろう。
私たちの日常も大きく変わった。
この30年余りで、働き方も、雇い方も変わってきた。
私は社会人になったときは、ほとんどが正社員だった。
「派遣」という働き方を選ぶ人のほとんどが女性で、専門性を活かしてバリバリ働くか、時間に制約があり、家庭と仕事を両立して働いている人たちが多かった。
社会人9年目に結婚した時は、仕事を続けられるうちは続けようくらいの気持ちだった。会社は社員の様々なライフプランにあわせた、福利厚生を提示してくれた。
私はその恩恵にあずかりながら、結婚しても妊娠しても、出産しても会社を辞めずにきた。強い決意があったわけではない。
結婚する前に、夫に借金があることが発覚したり、不妊治療にお金が必要だったし、出産後は、夫が務めている会社が危なくなったりして、やっぱり働き続けていた方が安心かなというくらいの気持ちだった。
しかし、出産した女性に会社は優しくはなかった・・・。
もちろん制度は整備されて、母となっても働く環境は用意されていた。
それは、「会社」という擬人化されたハードだけのことだ。
中のソフト(上司や同僚たち)は、まだ気持ちの面で、育児をしながら働く女性を受け入れられなかったのだろう。
男性よりも、女性の目が厳しかった。
仕事と育児の両立続けようとする私に、男性からは「だんなの給料が安いの?」とか、女性からは時間に制約があることで「残業無しでいいですね」みたいなことを言われたりした。
でも私には、ここでその言葉を真に受け、落ち込んでいる暇など無かったのだ。
雑用のような仕事も引き受けながら、何とか周りの人の仕事がスムーズにいくように気を配った。男性上司からは、完全にアシスタントのような仕事しかさせてもらえなかった時期もあったし、そもそも何の仕事も与えられないような時期もあった。
女性は、結婚したら終わり。
女性は、結婚したらアシスタントのような仕事しかさせてもらえない。
「結婚しないほうがいいのか?」「子どもを産まなければ、よかったのか?」と悩んだ。
そんなことを考えて悩むのは、自分の代で終わらせたかった。
パートナーがいることは自分らしくいられたし、子どもは、とにかく可愛かった。
だから、小さな仕事しかしていなかったが、いつもスーツを着て、ハイヒールを履き、できる女を装っていた。理想の自分を演じていたのだ。
今なら笑えるが、その時は必死だった。
ようやく肩の力が抜けたのは40代に入ってからだ。
力のある若い世代が辞めることになり、その仕事を引き継ぐことになった。
ある外資系メーカーのWebサイトのディレクションを担当することになったのだ。
その企業は、キッチン用品やオフィス文具用品などを造っていて、私の生活者視点の企画や提案に耳を傾けてくれた。
朝、そのままお客様のところに打ち合わせに行き、その後、自社に戻り提案書を作り、夕方また打ち合わせに行くようなことをしていた。
やっと、働くことにやりがいを感じることができ始めたのだ。
働くことは簡単ではない。
働いて給料をもらうことは、もっと簡単なことではない。
働き続けることは、辛く苦しい。
1人で悩んで、壁にぶつかり、他者を羨ましがって、落ち込んで、それでもまたなんとか明日は頑張ろうと思ってきた。
ささやかな希望を温め続けてきた。
「働くことの8割はつまらない」というタイトルは、働き続ける人々へのエールでもある。
深呼吸をしたら、明日も頑張ろう。
では、また次回。
明日も自分から挨拶をしよう!
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