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普通のある夜 【生活記録】
夜ご飯を食べた後の空白のひととき。
僕は何の目的もなく家の扉を開けた。
フラフラ歩いているとネオンを発するスーパーの看板が目に入り、
自然と僕の体が引き寄せられる。
どの菓子パンを買おうかな。
そんなことを頭に浮かべながらスーパーに入ると
少し高めのチョコが俺もいるぞと主張してきた。
一瞬目を奪われかけたが、そのまま菓子パンコーナーに向かう。
複数の菓子パンを凝視するも、なぜかあのチョコのことが忘れられない。
結局、抹茶チョコを買うことにした。
199円のそいつは、僕の糖分摂取欲を十分に満たしてくれた。
菓子パンを食べたいんじゃなくて砂糖を欲しているんだろうな、
そんな気づきを得ながら口当たりのいいそいつを舐め回す。
そうこうしていると、海前の公園についた。
イヤホン越しにも聞こえてくる波音に、少し心が安らぐ。
大きめの正方形の背もたれのないベンチに寝転がり、
夜空をぼーっと見上げる。
あまり星がない。
それでも夜空は僕をリラックスさせてくれた。
意識が薄まっていくが、決して寝てはいない。
はっと起き上がると
それまで数分間の無意識状態を初めて自覚する。
軽い夢から覚めた感覚。
普段気が付いていないだけで、
ずっとこんな感じで僕たちは生きているんだろうな。
そんなことを考える。
ワイヤレスのイヤホンが鬱陶しくなり、
海前の岩に生の耳をすませて座る。
お尻が痛い。
この大きくて僕を包み込むような海の音。
ああ、僕は自然の中に生きている存在なんだな。
そう思いたいが心からそう思えていない自分に少しがっかりする。
一息ついて、ゆっくり家までの道を踏みしめた。