新護憲神奈川 主体的平和戦略⑨
<続 国連の実力向上への日本の貢献>
自衛隊削減で捻出した経費を国連に供与!
伊豆の天城高原で一人暮らしを始めて2年近くになる。ここでの永住者の仲間に入れてもらい、スポーツ(ロコトレ体操、卓球、パドルテニスなど)をやったり、食事会、ハイキングなどに参加したり楽しく暮らしている。
ところが、2023年6月中旬、運動中に転倒して腰骨圧迫骨折をしてしまった。コルセットを嵌め病院通いの生活が3か月も続いている。外出もほとんど出来ず、テレビ、新聞、雑誌、読書の静かな日々が続いている。
近々、骨粗鬆症の治療を始める。視力も衰え、眼科にも行かなくてはならない。この(一連の)原稿の完成ももう一歩。しっかり書き切りたいと思いつつ、気力の衰えも出てきた。
さて、このような日常の中で目にした、気になる情報をいくつかあげてみる。
毎日新聞の記事。2026年に予定されている核拡散防止条約(NPT)再検討会議に向けて開かれていた準備委員会が閉会したが、総括案の公式文書化が見送られた。
ロシア、中国が総括案に自国の主張が反映されていないと反発、イランは自国のウラン濃縮放出への非難に対して「事実に基づかず差別的だ」と反発し、公式文書を残すことに反対した、と伝えている。
また、日本の東電福島第一原発の処理水の海洋放出について国際原子力機関(IAEA)の包括報告を支持することに対して、中国から「放出中止」要求を総括案に盛り込んでいない、という反対意見が出たとも伝えている。
いずれにしても「国連」が世界全体の意向を集約する機能を果たせていないことは歴然としている。
また、私の手元に届く十数種類の冊子の一つには「自衛隊は武力を放棄してください!違憲の自衛隊は廃止してください!」という要求書が東海民衆センター代表から首相、防衛大臣、自衛隊小牧基地司令に出された、という記事があった(人民の力
1139号20頁)。自衛隊縮小、自衛隊廃止の声は少なからずある。
私の主張してきた内容にとても近い主張の本が出版された。それは、「新版 自衛隊も米軍も日本にはいらない 恒久平和を実現するための非武装中立編」(花岡蔚(しげる)著 花伝社)である。
先日、逝去された「オーバー東京9条の会」の和田隆子著さんと活動を共にされていた著者は私と同世代。和田さんからは生前、私の文章が完成するよう頑張ってほしいと励まされたばかりである。
花岡氏は、自衛隊、日米安保体制をなくして「防災平和省」の新設、災害救助
即応隊(ジャイロ)の創設を訴えていて、基本的には私の主張とほぼ同じである。
一方、テレビでは、自衛隊員服(本物かどうか知らないが)を着た女性芸人が明るく、元気に食レポをしている映像が真昼間に堂々と放映されている。
私たちの護憲運動に欠けている、主体的平和戦略についての孫崎享氏の指摘、護憲運動、とりわけ「平和基本法」が有効に機能しなかった歴史的事実についての加藤典洋氏の認識・問題提起、さらに、「完全護憲の会」の草野好文氏の「9条護憲の再検討、再構築を」という渾身の力作などに触発されて、私はこの文章を書き続けてきた。
武力拡大の平和構想に反対し、自衛隊の縮小、防災省の創設、そして日米安保条約解消のための段階的取り組みについて述べてきた。
さらに、日本国憲法の精神を踏まえ、自立した国家として国際社会で信頼される姿勢・行動を徹底させることの重要性と同時にそのことが「国連」の改善・実力向上に寄与することを主張してきた。問題は、これらの課題をどのように実現していくかである。
「国連」にこだわる理由は、日米安保を解消して、アメリカからの強力な圧力・束縛から解き放たれ、日本が自立した国家として日本国憲法を活かし、世界全体の平和にも貢献できるのはこの道しかないと考えるからである。
「国連」と日本国憲法(とりわけ9条)についての歴史的認識として加藤典洋氏の指摘が的を射ていると思うので引用させていただく。
加藤氏は、「国連と憲法9条は一対である、詳しくは『戦後入門』の『憲法9条と国連中心主義』に書いたが、そのポイントは、国際連合と憲法9条は、第2次世界大戦が8000万人とも言われる人々の死をもたらす形でようやく終結した時の、人間はこれではダメだ、未来を切り開かなくては、という一種の『覚醒』の火花(イスクラ)の産物として国際社会に産み落とされた、理想を内包させた双生児的存在だったということです。その後、冷戦がはじまり、ともに初心から隔離され、『孤児』として見捨てられ、離れ離れになったけれども、両者の間には、切っても切れない『双生児』としてのつながりがある、ということです(『9条の戦後史』p.521~522)」。
「国連」本来の目的実現のために、「国連」の実力をより向上させるために日本はもっと経済的負担も引き受けるべきである。
2023年の「国連」の通常予算はわずか34億ドルである。日本の分担金は2,4億ドル、約8,0%である(アメリカは22%、中国は15,2%、ドイツは6,1パーセント)。国民所得の世界経済に占める割合に応じて決められているという(PKO分担金は別途)。
わずか34億ドルと書いたのは、日本の自衛隊にかかわる費用、米軍への思いやり予算に比べての話である。34億ドルは日本円にして5000億円弱である。国会で防衛財源、確保法を成立させ、5年間で総額43兆円が平然と言われている現状と比べ如何に「わずか」であることが明白である。
日本が9条の精神・内容を実現するために、自衛隊の縮小、解体のために本腰の努力を始めたことを多くの国(国際社会)に認められる契機として、自衛隊削減で捻出した経費を国連に供出することは重要な意味がある。
何にいくら拠出するかは、ここでは提示できないが、実現可能は状況に近づいたときに論議すればいいと思う。
自衛隊の一部を国連常備軍へ 防災省を国際的な防災強力部隊に
自衛隊を縮小するために、基本的に必要なことは日本の平和戦略の変更である。
在日米軍が、近隣諸国(中国、朝鮮民主主義人民共和国など)や他国への軍事攻撃を日本の基地から行わないようにすることが第一歩。アメリカが応じない場合、日米安保10条によって条約解除の最後通告を突きつける。日本政府がそのような姿勢を打ち出すことによって、近隣諸国との実質的な平和友好条約、国交回復の道を探ることが出来る。そのような条件を創り出さないことには、現状の国交関係を改善できない。現実は日本からの米軍出動ではなく、自衛隊が肩代わりして戦闘行為を起こさせるように推移しているが、いや、だからこそ、このような提案をしているのである。
この日本の姿勢は、多くの国(国際社会)から「国連」の実力向上の可能性、日本の憲法9条の意義を認めさせることになる。それが相互不可侵条約、平和外交を創り出す契機になる。結果として日本の平和、地域・世界の平和に貢献することになる。
自衛隊を「国連軍」へ(草野好文氏)、自衛隊を国連指揮下に(加藤典洋氏)という提起もある。
私は当面自衛隊の半減を主張した。しかし、基本的には、花岡氏の書いているように、「自衛隊も米軍も日本にはいらない」と思う。
国内への直接的な侵略があった場合のための「国土防衛隊」を主張している人もいるが、そういう事態をつくらないための平和戦略を提起しているつもりである。
当面半減というのは生温いかもしれないが、現状の自衛隊を即解体するということは、私の視点でも無理があると思う。
現在、戦闘訓練をして戦争に備えている隊員の中の希望者や、国土防衛に必要のない兵器等を「国連」の指揮下に提供することは世界のどの国からも歓迎され非難されることはなく実現できると思う。
半減して防災省(花岡氏は災害救助即応隊と表現している)を創設するとも主張した。防災省は日本で起きる地震、気候変動による自然災害、その他多くの災害に対して、地方自治体を超えて行動できる全国的規模にして、その施設、隊員を充実させ、現在の機能を高める。と同時に「国連」への直接的な費用分担だけでなく、海外救助隊として行動できる強力な組織として、救助内容を充実させ、多くの国(国際社会)の信頼を獲得していくことを目指す。
以上、私が主張してきたことが、どのようにしたら実現できるのか、それが重要である。政権交代を実現する、と単純化できないのが今の日本の現状である。
米中戦争の渦の中に巻き込まれているのは、軍事的な次元だけでなく、民衆の意識、マスコミの危機、米国の衰退、格差拡大による分断(とりわけ労働者の分断)、政党の思想的貧困、など多岐にわたる。
その中で日米安保(アメリカからの束縛)から離れ、9条を体現し、憲法を活かし、主体的に人類(世界)に貢献できる日本に変革させる力をどのように形成するか。次回で最後の「主体的平和戦略」を提起したい。
力量も省みず書いてきたが、40年以上にわたる「市民運動」の中で私が学び取った内容の集大成になるように、努力したい。