2年遅れの15th Anniversaryと、Normalでない"今"の『Normal』
5月25日。開催地が遠方のため参戦できなかった我が最愛のバンドUNISON SQUARE GARDENのライブ『Normal』のDVDが届いた。一刻も早く観たい。仕事(パート)は今日から三連休のシフトに入ったところ。ここはひとつ試してみようかな。
DVD視聴対応カラオケルームで、ひとりライブ。
最近、カラオケルームの楽しみ方のひとつとして認知されてきており、私もだいぶ前に友人家族と子同伴で利用したことがある。気兼ねなくお喋りできて、お腹が空いたらフードを頼んでシェアして、とても楽しかった。今回はこれを『Normal』で、おひとりさまでやろうと思った。
理由はふたつある。まず我が家のDVDレコーダー、再生機能が壊れているんである。
壊れたのはだいぶ前なのだが、HDD録画は生きているので、廃品にするふん切りがつかない。さらに今は配信全盛。DVDをレンタルして鑑賞する機会がめっきり減った。所有しているDVDもあるけれど、持っていることでわりと満足してしまうので、再生はあまりしない。そんなわけで、いまだに半分しか機能していないレコーダーで用が足りているのである。
もう一つの理由は、私がライブで<人が変わる>からだ。UNISONさんのライブにおいて、私は「あなた(家族)の知らないワタシ」になる(一緒に参戦する長女は知ってる)。歌い、跳ね、「きゃあ~」と乙女のように声を上げ手を振る。妙齢の女性なら可愛いかもしれないが、ミドルフィフティの母親が娘たちの目の前でこんなんなるのはなかなかにこっ恥ずかしい。まず「うるさい」。そして「母、大丈夫?」的な視線を送られる。うちの家族は私以外、たとえ観客が家族であっても人前で歌ったりしない。家族カラオケなんて夢のまた夢(さみしい)。結果、盛り上がる母は迷惑な人になってしまうのである。
だがカラオケルームなら、だれに気兼ねすることもなく歌える。拍手できるし、踊れる。よっしゃ、敢行だ! 三連休最終日はライブの日と決めた。
当日はフリードリンク・フリータイムで入店。何故なら今回私が持参したDVDは2枚だからである。1枚はもちろん『Normal』。そしてもう1枚は『PROGRAM 15th』。2年前に大阪・舞洲にて開催された15周年おめでとう野外ライブのものである。なんと本日初開封だ。
なんで今まで未開封だったのか。発売日に手に入れてはいた。ただ、私をUNISON沼に引きずり込んでくれた(←感謝してる)長女と一緒に見ようと思っていたのだ。しかしお互い社会人。私は月初が忙しくて、GWも年末年始もあんまり関係ない。お盆休みあたりは娘の方がフェスで北海道に行っていて、なかなか時間が合わなかった。そうこうしているうちに娘が赴任してひとり暮らしを始めてしまった。そしてレコーダーが壊れたのである。
たまに帰省することはあるのだが、いつ都合がついて新しいレコーダーでDVDが再生できるか見当がつかない。もうこれはひとりで観るしかないか。じゃあ大画面で…ふふ。こうして封印は破られたのであった。
自宅よりでっかいテレビの正面に陣取って、いよいよライブは始まった。まずは『Normal』から! うっわ~、のっけからこの曲ですか! ジョークか⁈
新しい曲も久しぶりの曲も、UNISONさんはいつもどおりトップスピードで繰り出してくる。画面の中の観客席は、マスク着用・声出しNGながら、決められたエリアの中でその音を楽しそうに全身で受け止めている。その中にいたかったのはもちろんなんだけど、画面のこちら側で参加している私も、同じタイミングで手をあげ身体を揺らし、映像の中の彼らと同じように楽しめた。テンションあがって一瞬立ったけど、このまま続けていたらすぐにHPがゼロになりそうなのでやめて座った。このあと長丁場(もう一本観る予定なので)だからね、齢を考えて。
ところで、私がUNISONさんのライブDVDを購入したのは今のところ持参の2枚だけである。ライブにはだいたい参戦できていたし、現場で生歌を浴びる感覚は最強だと思っていたからだ。
しかしこのご時世、ライブの開催自体が難しくなった。それでもUNISONさんはできる限りやってくれるけれど、地元で開催されないことも増えた。だから今回は購入となったのだが、現地に行くのとはまた違った良さがあることがわかった。
いちばんよかったのは、いつも現地ではついつい斎藤さんの超絶美声と荒ぶる田淵さんの「ベース持って運動会」に目がいってしまってなかなか見れない貴雄さんの「微笑みの超絶技巧ドラム」が、カメラがぐーっと寄ってくれるおかげですごく良く見えたこと。声をあげたりスティックを投げたり回したりしているのは目撃している。でもそれ以外のなんでもない時でも、微笑みながら恐ろしい手数を繰り出しているその姿は、「千手観音か?」と思うほど。画面に映るたびに「きたぁ必殺! アルカイックスマイルドラミング!」と心の中でコールした(すみません技名勝手に名づけました)。ほんとうにたのしそうで仏様のような慈愛に満ちた笑顔で、観ているこちらも幸せな気持ちになる。DVDでなければ気づくことができない風景だった。
そんなこんなで全20曲、歌って踊って拍手して、アンコールまで終了。好きな曲がたくさん聴けて嬉しかったし、(『アトラクションが始まる』『instant EGOIST』『RUNNERS HIGH REPRISE』『さわれない歌』)、『スロウカーブは打てない』は絶対生で聴きたい! と思った。『Patrick Vagee』ツアー、楽しみ!
さて、間髪をいれずに次のDVDへ。『PROGRAM 15th』だ。開催日は2019年7月27日。当時、たしか台風直撃で、開催できるかどうか遠方から心配してたんだった。結局雨はあがったんだったよねぇ、ああやっぱり機材にビニールがかかってる……などと当時のことを思い出しながら再生開始。すごい人。いつものソラさんの『絵の具』が流れて、歓声が湧き上がる。
歓声……ああ、そうか。いまさらながら気がついた。
この時はまだ、声を出してもよかったんだ。ライブで声を出せなくなっちゃうなんて、思ってもいなかったなぁ。こんなところで身につまされるなんて。なんだか胸がぎゅーっとなる。
歌が始まる。
「ああ だからその声を捨てないで」
今聴くと、幾重にも意味が重なって聴こえて、いろんな思いが湧いてくる。この2年間の来し方を思い出す。
あの頃とは変わってしまった世界。
でも、あの頃と変わらず<その声を捨てないで>音楽を届けてくれるUNISON SQUARE GARDEN。
その変わらなさにファンである私たちがどれだけ力づけられているか。
回数は減っても、ライブに行く度に元気をもらう。次もまた、必ず逢いに来よう、逢える時まで元気でいようと思える。そういう存在がいることのありがたさを噛みしめる。
出逢えてほんとによかったなあ。心からそう思った。
2年前のライブも直近のライブも、なんにも変わらなかった。雨上がりの暑い日で、斎藤さんは2、3曲歌ったところでもう大粒の汗をかいていた。もちろん田淵さんも貴雄さんも汗だくて、だけどとても楽しそう。午後から始まったライブはやがて日暮れを跨いで、あたりが暗くなるまで続いて、彼らはひたすら音楽を鳴らし、2万人を超えていたという聴衆は歓声やコールや拍手でそれに応えていた。そして私も2年の時を飛び越えて、一緒に楽しんだ。『Normal』からずっと、UNISON縛りのカラオケマラソンみたいになっている。マイクなしで、久しぶりにおっきな声で歌った。全部頭に入っているわけではないので、ちょいちょい歌詞を見失っちゃうけれど、サイトーさんと一緒に歌っているので全然平気だった。
やがて、夕暮れ近くにその曲は流れた。イントロが始まった瞬間にすぐにわかった。『黄昏インザスパイ』。
「今日がつらいから 明日がつらいままだなんて 思うな」
久しぶりにライブで聴く。初めて参戦した時以来だろうか。いちばん最初に好きになった曲だ。
「好きな言葉や 好きな旋律に寄り添ったって いいだろ」
この7年あまり、自分のこと、身内のこと、つらいことがいくつかあった。そのたびにいつもこの歌を思い出し、自分を奮い立たせてきた。この歌詞に、この旋律に、どれだけ力づけられてきただろう。いつも私の傍らに寄り添ってくれた曲。もうだめだ。一緒に歌おうと思ってたのに、滂沱の涙があふれて歌えない。やっぱりひとりライブにしてよかった。この姿は家族にはみせられない。一応「(基本)ポジティブな母ちゃん」で通しているのだ。でもなんか、いろいろ思い出してしまったんよ。
「負けない どうせきみのことだから」
最後のフレーズが余韻を残して静かに消えていく。ステージの向こうに広がる海を、ゆっくりと一隻の船が横切っていく。たぶんもう折り返し地点は過ぎているけれど、私の人生の航路はまだまだ続く。いいことも悪いことも起こるだろう。そのたびに、きっとまたこの歌を、この風景を思い出すだろうな。
などとしんみりしていたら、次の曲が『春が来て僕ら』。
「間違ってないはずの未来へ向かう」
「ちゃんとこの足が選んだ答えだから 見守ってて」
背中を押された。この曲順、さすがです。がんばるよ!
アンコールで斎藤さんが「本当にいいスタッフが集まってくれて」今日がある、と感謝の言葉。でも、貴方たちがぶれることなく自分たちの音楽を貫いてきたから、自然とそれに惹かれて素晴らしいスタッフが集まったんじゃないかな。
貴雄さんはメンバーへの感謝の言葉。最初は自分が本当にダメで……とおっしゃっていたけど、あの天才と天才の中に入ってやってくのはなかなかにつらかったのでは、と凡人の私は思う。でも、磨いてきた技術のすごさはいうまでもなく、もう彼抜きでは考えられないくらいUNISONさんにとって大切な存在になってる。そんな貴雄さんがとっても偉いと、私は思う。きっとみんなも誇りに思ってるよ。
そして「何かしゃべる?」と振られた田淵さん。感極まって、なかなか言葉が出ないようだ。そうよなあ、50代半ばのおばちゃんのハートさえ的確に打ち抜く曲を作れる、しなやかで柔らかで豊かな感性を持っている(と思う)方だもの。目の前に広がる聴衆と声援が、心に届かないはずがない。あれ? ちょっと目、うるんでる? なんてにやにやしながら待っていたら、極めつけが飛び出した。
「UNISON SQUARE GARDENってのはすげえバンドだなぁ!」
「またやるぞ!!」
あっぱれ。自分で自分を褒めていくスタイル、さすがです。見習いたい。
そんなこんなで、怒涛のUNISON縛りカラオケ、もといおひとり様ライブDVD視聴は終了。たいへん満ち足りた楽しい時間だった。残存HPがもうちょっといけそうだったので、曲検索して「おっなんだアニメ画像あるんじゃん!」と『リニアブルー』と『ハモナイ』をおかわりし、(『オリオン』は今日はもう2回歌ったのでなぞらず)「ここまで来たらこれでしょ、今日歌ってないし」と『I wanna believe、夜を行く』を歌って、本日はお開きとした。なぜ最後が『アイワナ』になったか――事情通の方ならわかっていただけるだろう。私はタイバニ、この曲もよかったのと思うのよ(もちろんおかわりした2曲も名曲で大好きだけど)。余談ですが、いきさつを知ってから聞いたらのっけから制作会社の名前で始まってて笑った。田淵さんのこういうところ、大好きです。
帰宅後、いままで頼りにしていた娘も別に住むようになったことだし、とかねてより検討していた「UNICITY」の市民権を取得した。これで「ひとりでもチケット申し込めるもん!」7月に開催される『UNICITY LIVE ONLINE』楽しみである。
そして私がのんびりこんな長文を書き散らかしている間に、10月からの『Patrick Vagee』ツアーの詳細が発表された。今回は地元でも開催。しかも休日! 娘も来れる! やった! 歓喜のLINE交換と相成った。また楽しみが増えた。
ずっと停滞状態だった世の中も、少しずつ動き出している。このまま良い方向へ進んでほしいものだと、心から思う。そして、困難な状況下でもできる限りライブを続けてくれたUNISON SQUARE GARDENの音楽を、もっとたくさんの人に聴きに来てもらえる日が早く来てほしい。私の好きなバンドはこんなにカッコイイってことが、もっとみんなに知ってもらえるといいな。でもチケット取りにくくなるのは困るかなぁ。まあ、譲らないけどね。だってさ、
この高揚感はだれにも奪えない!
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