おでん
おでんってなんか、響きが良いですよね。
そうそう、あたたかくて可愛らしい。
そんな会話すらもあたたかくて、優しい気持ちになる。
おでん。漢字では「御田」と書く。
由来は串に豆腐を刺して焼くあの「田楽(味噌田楽)」で、おでんの「でん」も本来豆腐のことを指す。江戸時代に屋台で売られるようになった田楽の中には、豆腐以外にも芋やこんにゃくなどの具材も串に刺して焼いたそうで、丸とか三角の具が串に刺さったものがおでんとしてイメージされるのはそういうわけらしい。また、醤油が盛んになったその時代において、煮込みが流行したことにより、元々の焼き田楽から派生して煮込み田楽のかたちがおでんとして確立されていったとさ。
おでんは温かい。でも時々熱い。
おでんは丸い。でも時々掴みにくい。
おでんは柔らかい。でも時々壊れやすい。
おでんは優しい。でも時々優しすぎるから、わざわざからしを付けてみたりする。育ちによって色や形は違うけれど、一口食べると驚くほど味わい深くて、毎回お腹いっぱいにさせてくれるのに、すぐにまた食べたくなる。
そんなおでんが好きじゃない人なんていないだろうと言いたいところだが、それでも実際にはいるわけで、理由としてはご飯に合わないだったり、全部同じ味になるからだったり…。
それらは「あのおでんでさえも好まない人がいるくらいだから…」と、自分や誰かへの励ましや慰めの常套句として取っておくことにする。
“人間味がある”と聞くとよくわからないけれど、“おでん味がある”と聞くとなんとなくわかる。
外連味のない人でありながら、それでいて個性は追求したい。そんなわがままも一緒に昨日から煮込んでいたりいなかったり。
名前に「御」を付けて「御田楽」、省略して「おでん」となる。ひらがなにすると急にかわいい。
「お」を付けるとかわいくなるものって他にもあるよね。
おばけとか、おこづかいとか、お偉いさんとか、おうどんとか。あ、うどんはもともとかわいいか。
あんらく
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