ユッスーと行く!資産運用の旅#003「iDeCoを深く掘り下げて、分かりやすく解説(特に注意点)」
はじめに
iDeCo(イデコ)って聞いたことありますよね!?実際にやっている人もいるかもしれません。私はまだやっていないのですが、帰国して、日本で定職に就いたら、やろうかなと思って、昨晩、3時間くらいスマホを閲覧して、この制度を可能な限り研究しましたので、皆さんに研究成果(?)をお話ししたいと思います。
あ、iDeCoのこと名前以外全く知らないよって方は、ググっていただいて、カラーで図表もたっぷりのサイトを一見してから読んでいただけますとより分かりやすいと思います!
さて、結論から言うと、iDeCoについては、どこから話したらいいのか分からないくらい、全体像が複雑です。そして、メリットとデメリットを網羅した分かりやすいサイトは私は一つも見つけられませんでした。ですが、金融リテラシー抜群と勝手に自負する私ですので、徹底的に調べて、今に至ります。
ただ、この文章を書くにあたっては資料を右に左に置いて書くのではなく、頭の中の理解から文章にするので、細かい規則や数字が正確でない可能性がありますが、全体像をとにかく理解するため、ということでご了承ください。また、長文になるであろうこの文章の大半はiDeCoで語られていない、デメリットについて注意喚起としてお話しします。そして、iDeCoの最大にして唯一のメリットに関しては、最後の方に話しますので、その点、ご理解ください。
iDeCoは将来のための積み立て
まず、iDeCoというのは、年金の3階部分の一種です。と言ってしまうと、年金の1階と2階ってそもそも何、と話さなければいけませんが、これは簡単で、1階が国民年金で2階が厚生年金です。フリーランスや自営業者は1階だけ、会社員(公務員含む)は2階まで入っていることが多いです。会社員の方は、厚生年金が給与から天引きされ、その中に基礎年金(国民年金)も含まれています。
また、会社に入ると、年金の3階の部分どうしますか~?という案内を受けます。企業型DC(DC=確定拠出型年金)の案内です。これは2階だけでなく、将来のために3階まで積み上げたいわ~という人が入ります。確定拠出というのは、「毎月、〇〇万円を給与から天引きして運用して将来の年金にします」というところの〇〇万円を自分で決めて(確定して)、天引きして(拠出して)もらうという制度だからです。運用成績によって将来受け取れるお金(年金)の原資が変化するので、確定「給付」型年金ではないのです。
さて、皆さんついてきているでしょうか。企業型DCが分かったところで、そもそもうちの会社は企業型DCやってないよとか、フリーランスだから3階どころか2階もないわ!っていう人のために生まれたのがiDeCo(個人型確定拠出年金)です。企業型DCない人のための制度なので、企業型DCがある人は、iDeCoの枠が小さかったりします。ともあれ、iDeCo自体は、「働いている人」であれば、税制面の恩恵のある制度ですので、注目が集まっています。
実は、iDeCo自体には何の非課税枠もない!
次回、NISAについて深堀り解説をしたいと思っているのですが、NISAは投資で生まれたすべての利益をどんな風に引き出し(金融商品を売却)ても完全に非課税という素晴らしい制度です。
これに対して、iDeCoは節税は出来るけれど、非課税枠はありません。それどころか、積み立て続けた元本部分にも課税される可能性があるという意味において、投資目的でiDeCoをするのは大間違いです。これを明確に書いている記事を一度も見たことがありませんでしたが、これは事実です。
普通は投資において、200万円の投資信託(投信)を買って、それが300万円になって売却したときに、利益の100万円に対して、20%ほどが税金として引かれて、280万円を受け取ることが出来ます。金融商品は、他の所得と分離されて課税されますので、この280万円に対しては確定申告は不要ですし、これ以上の税金は一切かかりません。これがNISA枠ですと、その20%の税金も非課税となります。
運用益はすべて非課税というミスリーディング
他方で、iDeCoは「運用益はすべて非課税」と公式サイトやどのメガバンクのサイトにも書いてあるのですが、これは極めてミスリーディングな書き方です。iDeCoで25年かけて投信を積み立てた額が、仮に原本部分で600万円となった時に、その投信の25年間の運用によって利益が400万乗って、1000万円を老後に受け取れるようになりました!となって時に、「運用益は全て非課税」なら税金は一切掛からなそうなものだと思うのですが、実は1000万円の全額が課税対象になります。
上述の通り、投資の世界では利益に対してのみ課税されるのが当たり前で、200万円で買った投信の価値が、150万円に下がってしまっ時に、150万円に課税されるなんてことは絶対にあり得ません。もちろん、200万円の投信が300万円に増えても、元本の200万円には一切課税されません。ある意味で、それをしているのがiDeCoです。
ただ、もちろん、iDeCoで積み立てて運用して1000万円になった時に、全額が課税対象だからと言って、実際に全額に課税される訳ではないのです。あくまで、全額が課税「対象」という意味です。では具体的にどうなるかというと、一時金受け取りなら退職所得控除があり、年金受け取りなら公的年金等控除の対象になるという訳です。元本も含めて、もちろん運用益部分も受け取り時には全額課税対象とするという巨大なデメリットであるにも関わらず、iDeCoの3大メリットの2と3では、「運用益が非課税」と「受け取り時も各種税制控除が受けられる」というようにメリットであるかのように都合よく言い換えているのでお気を付けください。
つまり、出口(受け取り時)では少なからず課税される可能性が高いということです。しかも、多くの方にとって、受け取り可能な60歳という出口は数十年も先の話だと思うんですが、出口での課税を強化する方向で制度変更を数年ごとにし続けているというのがiDeCoの大きなリスクです(今年もiDeCo改悪で話題になりました)。
iDeCoの60歳まで一切引き出せないデメリットを軽視しない
前段落でさらっと伝えましたが、受け取り可能となるのが60歳というのが、iDeCoのもう一つの大きなデメリットです。長期で積み立てをして、老後の年金の足しにしてくださいという制度ですので、60歳までは受け取れません。さらに、最低でも10年以上は積み立てないといけませんので、50代で始めた方は、60歳では受け取り開始できません。年金のための長期運用という理屈としては一定理解も出来るのですが、運用している金融商品を自分のタイミングで引き出すことが出来ないというのは金融商品のリスクの中に明確に位置づけられている「流動性リスク」に広い意味で該当する大問題です。
例えると、いつでも下せる普通預金と、途中解約不可能な30年の定期預金では全く金利が違います。後者の大きな流動性リスク(広い意味)に対してリスクプレミアムが乗った金利になるからです。このiDeCoの大きなデメリットに関しても、「60歳まで下せないことは、年金の積み立てを途中で取り崩すことが出来ないことだから、ある意味では老後の安心につながるメリットです」なんて書いてあったり、説明する人が沢山いますが、それはハッキリ言って詭弁です。私が今でも証券マンだったとして、お客さんを自社のiDeCoに勧誘するときには、そういうセールストークをするかもしれませんが。。。
本当にiDeCoを国民の将来の年金運用のための制度にするならば、少なくとも60歳まで引き出せないという超絶デメリットに見合った、受け取り時の非課税枠を設けるべきだと思いますが、それどころか投資元本にまでが課税対象になるので、現状ではこの点に関して、リスクとメリットが全然釣り合ってないな!って思います。
iDeCoの唯一のメリットは現役時代の課税を抑えられること
あまりにもデメリットばかり話しているので、冒頭で言及した、唯一にして最大のメリットをお伝えします。それは、iDeCoのどのサイトでも最初に書いてある「掛金が全額所得控除」になるという点です。いま、国民民主党が所得税の基礎控除を引き上げる要求をしていますし、ふるさと納税がすごく流行っているのも、所得控除があるからです。働いている人が毎月・毎年払っている所得税(と住民税)が減ることは、所得税をたくさん払っている人にとってはとりわけ恩恵が大きいです。
ただ、気を付けていただきたいのは、全額所得控除と聞いたときに、所得税年間で100万円払っている人が、iDeCoで年間24万円積み立てたら、24万円が年末調整や確定申告で返ってくる!ということではもちろんありません。所得税の課税対象が300万円であれば、そこから24万円を引いて、残りの276万円に所得税がかかるようになります、という意味です。自分が具体的にどれだけの節税額を得られるのかは、様々なサイトで簡単に調べられますので、調べてみてください。
実際、月2万円(年間24万円)のiDeCo積立でも、500万円ほどの所得の人で、年間4万円以上の節税額が得られる、という試算も出ています。24万の投資に対して、4万円のキャッシュバック(要年末調整or確定申告)があるというのはものすごく大きいです。ですので、大企業や役所に長く勤めていいる(または勤める予定がある)方にとっては、iDeCoは全てのデメリットを乗り越えるほどにメリットがあると思います。NISAよりも優先してもいいかもしれないくらいです。
逆に言うと、大企業や役場に長く勤めて、転勤をする予定もない、という人以外は、次回説明するNISAを優先する方が圧倒的に良いでしょう。
控除された現役時代の所得税は、老後に後回しにされています。
上述の点を全て俯瞰で見ますと、iDeCoというのは、「掛金が全額所得控除」という制度に関しても、毎年、所得税から全額控除した掛け金を全て積み上げたもの+その間に運用の運用で出た利益を、老後に受け取るときに、すべてまとめて(元本+運用益)課税対象にするという制度です。課税の先送りであって、非課税枠は全くありません。
退職金等の控除が使える分、現役時代に所得税を払うよりも、「節税」になる可能性が高いというだけです。その「節税」額が、60歳まで絶対に引き出せないというデメリットや、各種の手数料や、手続きの煩雑さや変更の難しさ、課税を先送りしているだけという事実と比較して、有利と思えば使えばいいという制度です。
それなのに、あたかも非課税枠があるかのように宣伝されたり、現役時代の所得控除が課税の先送りということを隠してアピールされているのがiDeCoの問題だと思います。
とはいえ、iDeCoは結果的に大きなリターンとなるでしょう
ちなみに、20年から40年という期間、海外株のようなハイリスクハイリターンの投信に長期・積立・分散投資をしていけば、元本割れの確率はほぼゼロです。それは、ハイリスク部分が、長期・積立・分散の効果で抑えられて、ハイリターンが享受できる蓋然性が非常に高いからです。
仮に元本割れするとしたら、世界経済が崩壊しているような場合のみです。万が一にも受け取りタイミングで世界大恐慌になっても、20年以上積み立てしていれば過去の経験上は元本割れする可能性は極めて低いのですが、受け取り時に直近で値段がガクッと下がっているのであれば、受け取りタイミングを後ろにずらせば、過去のどんな大恐慌でも数年で回復してきた歴史があるので、問題ありません。
つまり、iDeCoで長期積立投資をした場合、ほとんどのケースは大幅なプラスになるということですので、iDeCoは損をするという話をしたいわけでは決してありません。iDeCo関係の記事の中には、デメリットとして「(元本保証の商品を選ばなかった場合)元本割れの可能性があること」と書かれているものもありますが、デメリットはそこじゃないよ!と申し上げておきます。
iDeCoは手数料と手続きの多さにもご注意
さて、結論めいたことを言ってしまいましたが、それでもiDeCoを検討したいという方に、あまり書かれていないコスト(手数料)についてお話しします。まず、iDeCoの口座を証券会社か銀行で開設しなければいけませんが、口座開設手数料に2,800円ほどかかります。また、毎月171円(年間約2000円)の手数料がかかります。これらはネット証券でもどこでも必ず掛かります。後者は何十年でも毎月掛かり続けます。
ネット証券等で、口座管理手数料無料!と書いていますが、それは上記の171円に上乗せして銀行などの金融機関が取る月300円ほどの口座管理手数料を取りませんよ!という意味であって、171円の手数料は掛かります。銀行でiDeCoをすると毎月400円以上が手数料で引かれます。いずれにしても、この運用中の手数料自体が「塵(ちり)も積もれば」なのです。
が、それ以上に気を付けていただきたいのは、あまり知られていない、受け取り時にかかる440円の振込手数料です。年金型で受け取ることにして、毎月受け取ろうと思うと、毎月の振り込みの際に440円が振込手数料として引かれるのです。振込手数料を抑えるために、隔月受け取りにしたり、年一回の受け取りにしたりすることも出来ますが、この440円はiDeCoを開始する時点ではあまり意識されてないので、競争原理が働かず、ネット証券でもメガバンクでもほぼ横並びで高止まりし続けると思います。
また、手続き面での負担もiDeCoには存在します。年金の仕組みのところでふれたとおり、iDeCoを使える枠というのは、人それぞれ、会社それぞれなのです。転職をしたり、フリーランスになったり、失職したり、海外在住したり、仕事が変わるたびに、膨大な紙ベースの手続が必要になります。
結局、iDeCoは私のような転職族で海外勤務もある人間には、完全に不要。という結論となりました。NISAとふるさと納税で十分です。
そもそも、上述の171円の内訳は、国民年金基金連合会に105円/月、資産を預かっている信託銀行に66円/月となっています。国民基金連合会になぜ105円も天引きされるのかと思いますし、iDeCoの制度自体が、国民の老後の安心や使い勝手を優先したものではなく、関係者が手数料を薄く広くとるための仕組みになっているように思います。
「運用益が非課税」のミスリーディングについて深堀り解説
もう結論後の結論も出尽くしたのですが、「運用益が非課税」という点について、メガバンクのサイトでも図解ではっきりと書いてありますので、その意味をおまけとして解説します。結論から申しますと、iDeCoの対象になっている、eMaxis slimのオルカンやS&P500といった投信は、そもそも投信の中で運用益を再投資しているので運用に関しては非課税です。投信が買い付けている株式が生み出す配当金や投信の中で銘柄の入れ替えに伴う売却益などは、投信の中で再投資されますし、そこの中では税金などかかっていません。ですので、特定口座でオルカンを買おうが、NISA口座でオルカンを買おうが、iDeCo口座でオルカンを買おうが、オルカンはオルカンであり、iDeCo口座のオルカンだけ非課税で急成長なんてことはありません。全部、等しく、運用中の運用益は非課税なのです。
親切なサイトでは「(運用中の)運用益が非課税」と書いてあります。これは、「運用益が非課税」と書くよりはマシなのですが、それ以前に、運用中の運用益は非課税が当たり前ですので、これをメリットとするのはおかしいのです。
強いて言えば、オルカンを買っていたけど、途中からS&P500に乗り換えました!っていうときに、オルカンの運用益にそのタイミングで課税されることはない、という程度のメリットです。まあそれも当たり前のことだと思います。iDeCoは課税を先送りする制度とも言えるので、途中で乗り換えても途中で課税されるのは制度の趣旨に合わないからです。
(おまけ)大きなリターンが出た時の課税額をシミュレーション
最後の最後に、iDeCoの運用がすごい上手くいったときに起こりうる、辛いシナリオについてもお話しします。2024年12月から、フリーランスや自営業者は月68,000円まで積み立てられるようになっていますが、それを40年続けると元本だけで3200万円を超えます。40年間海外株で運用すれば4倍くらいになってもおかしくないので、1億2000万円が年金原資として老後に引き出せるようになります。仮にフリーランスゆえに退職金がゼロだったとして、iDeCoの全額を一時金で受け取ると退職金控除は40年で2200万円なので、9800万円の半額である4900万円に所得税(と住民税)がかかることになりますので、税金でほぼ3分の1持っていかれることとなります。
そんな場合は、年金型の受け取りを出来るだけ長い期間(最長20年)で行って節税すべきなのですが、1億2000万円を20年かけて毎年600万円受ける年金受け取りに場合、公的年金控除って年間で160万くらいしかないんです。残りの440万円は雑所得として約40万円の雑所得控除を引いた上で20%課税されます。
以上、語りつくしましたので、筆をおきます。
私の理解に間違っているところがあると思われた方は、是非コメントで教えてください。「運用益が非課税」という点は、ものすごくミスリーディングであり、僕自身、勘違いをしていましたので、気付いた時にはこれは記事を書かねば!と思った次第です。
次回は、欠点のほとんどないNISAについて、ただ、完璧に理解している人がまだ少ない制度であるということもあると思いますので、深堀りして解説します!
ご参考になったよ!という方は、スキをおしてくれましたら幸いです~☆