2億円と専業主婦
橘 玲
作家。1959年生まれ。2002年国際金融小説『マネーロンダリング』(幻冬舎文庫)でデビュー。『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎)が30万部を超えるベストセラー、『言ってはいけない 残酷過ぎる真実』(新潮新書)が45万部を超え、新書大賞2017に。『幸福の「資本」論』(ダイヤモンド社)など著書多数。
1.2億5000万円損をする
「2億5000万円の機会損失」これは女性が生涯、専業主婦でいた場合、失うとされる賃金の額です。女性が大卒であれば2億1590万円、高卒でも1億4830万円、大企業の大卒女性であれば2億5000万円もの生涯収入が見込まれるというのです。これは、一生専業主婦として過ごすことが、巨額の機会損失を意味することを示しています。
この事実は、日本という豊かな国において、「価値を生み出す富」についての無知が大きな損失であることを示しています。今後の日本において、所得格差が広がる中で、女性の労働市場参加は強力な競争力を持つことを意味します。もちろん、「お金があっても幸福でなければ意味がない」という意見もありますが、世界59か国を対象とした「幸福度調査」では、4割の女性が「共働きは幸せ」と回答しています。
一方、「専業主婦の幸福度が高い国ランキング」では、日本が第2位にランクインしています。しかし、これは専業主婦でなければ幸せになれないという意味ではありません。働く女性も高い幸福度を得ることができるということです。つまり、女性が働くかどうかの選択は、生活の質に大きな影響を与えることが明らかになったのです。
2.専業主婦の裏にあるもの
「専業主婦の幸福度が高い国ランキングで2位」と言われる日本。……一見、素晴らしいニュースに見えますが、その裏に隠された事実があることをご存知ですか?
実は、このデータには深刻な問題が潜んでいます。それは、なんと「男女格差」が専業主婦の選択を後押ししているという現実です。日本の企業文化は、高卒男性が大卒女性よりも上のポジションに就くという特異な傾向があります。60歳時点で、高卒男性の7割が課長以上の地位に就いている一方で、大卒女性は2割強にとどまっています。このような男女格差が存在する中で、女性が出世できない現実が専業主婦を選ぶ理由の一つなのです。
さらに、出産を機に退職する女性が多いのもその一因です。日本の企業では、残業時間や社内の忠誠心が昇進に直結する傾向があります。しかし、このような環境下では子育てをする女性がキャリアアップするのは難しいもの。実力や成果が評価されるべき時代において、男女格差がまだまだ根強く残っているのです。
つまり、専業主婦を選ぶ女性たちの背景には、男女格差が横たわっているという現実があります。この問題に目を向けることで、社会の公正性や平等への取り組みがますます重要になってきます。
3.自分らしい人生
では、新しい時代における理想的な夫婦の働き方とは何でしょうか?筆者が提案するのは、「共働きフリーエージェント」です。このスタイルは、自分の好きなことを仕事にして生きるクリエイティブな生き方を指します。夫婦が共にこのスタイルで働くことで、新たな富裕層「ニューリッチ」として輝けるのです。では、なぜ「共働きフリーエージェント」が魅力的なのでしょうか?
まず一つ目は、「時間の融通が利く」という点です。会社に縛られることなく、自分たちの都合に合わせて働けるので、育児や家事などを夫婦で分担しながら、女性も活躍できるのです。そしてもう一つは、「いつまでも働ける」という点です。好きな仕事を通じて、ずっと社会と関わり続けることができます。
これまでの日本では、定年まで我慢して働き、退職金を受け取ってから隠居生活を送るという考え方が一般的でした。しかし、これからの時代にはそぐわない生き方です。夫婦が共に「生涯現役」でいることで、豊かな生活を送り、充実した人生を送ることができるのです。
まとめ
機会損失は、人生の途中でよく起こる現象です。ある選択をすることで、他の選択肢を選べなくなること。やり直しはきかないパターンもあること。だからこそ、慎重に選択をする必要があります。すべてを完璧に選ぶことはできませんが、ある程度、未来を予測することは不可欠と言えるでしょう。
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