白の伝統ーウィンブルドン選手権
私はスポーツを熱心に応援する方ではないのですが、全く関心がないこともなく、気になるものは見るようにしています。
好きな競技は、球技よりも個人スポーツが多いように思いますが、オリンピックで言うならば、水泳、新体操、体操、馬術なんかが好きで、陸上競技では高飛びや棒高跳び、冬だったらスノーボードのハーフパイプや、スキーの大回転、フィギュアスケートが好きです。やはり「美」に関するものに興味が向くようです。
球技で一番好きなのはテニスです。4大大会はチェックしていて、錦織圭くんの活躍はとても嬉しく思うし、また最近では女子の大坂なおみさんの活躍も素晴しいですね。正直でとてもキュートな選手だなと思います。
そして、テニスと言えばウィンブルドン。今年はコロナの影響で75年ぶりに中止になってしまいました。戦争以外では初のことだそう。初夏の気持ち良い季節に開催されることを、毎年楽しみにしているのですが、今年は我慢ですね。
近年は若手の選手の活躍が目立ってきていますが、私は男子のBIG4が好きです。
- ノバク・ジョコビッチ
- ラファエル・ナダル
- ロジャー・フェデラー
- アンディ・マレー
ジョコビッチはセルビア出身なので、少年時代にコソボ紛争を経験しており練習もままならいこともありました。今では、自らの基金を立ち上げて子供たちのサポートをしたり、東日本大震災の時にも”Support to Japan”とサポーターに書いてくれたり、チャリティマッチや、ユニクロとの共同プロジェクトでファンドを設立したりもしています。試合中は真剣に集中し、強いプレーが印象的ですが、公開練習ではとても愉快な人。他の選手のモノマネをしたり、観客を笑わせてくれるようなエンターテイナーでもあります。
そして、ナダル。一見スペインの情熱的な選手かと思いきや、彼はとても繊細です。ペットボトルの水のラベルを揃えて定位置に置くことや、サーブ前の同じ仕草とルーティンが決まっています。多くの選手はイライラした時にラケットを折ることがあるのですが、ナダルは一度もラケットを折ったことがありません。それから、一度だけ有明の大会を見に行ったことがあるのですが、その時に「アリガトウゴザイマシタ!」と謙虚で優しい雰囲気が伝わってきました。
次は王者フェデラー。何と言っても彼のプレースタイルは本当に優雅です。生まれ持ったスタイル、プレースタイル、言うなら筋肉の付き方がすべて美しい。全てのショットの完成度が高くて、見ていて惚れ惚れしてしまいます。さすがは近代テニス最高傑作、ミスター・パーフェクト。そして、試合中にイライラするところを見せることもなく、審判に抗議することもないので、「絹のように滑らかなスイス人で、国連の外交官のような人当たりのよいマナーで話をする」んだとか。
最後に私が好きなアンディ・マレー。彼はイギリス人なので、テニス発祥の地としてのプライドや期待もかなり大きいと思います。若い頃は感情を露わにして暴言を吐いたり、ラケットを折ったりしていましたが、最近は結婚して子供も生まれたこともありとても落ち着いているように思います。忍耐強く受け身なプレースタイルで、以前はあと少しのところでメンタルが弱くて負けてしまう、という場面が多かったです。ですが、2013年にウィンブルドンで優勝したり、2016年ロンドンオリンピックでの優勝、2度目のウィンブルドン優勝などで、地元開催とイギリス人としての大きなプレッシャーに打ち勝ったことからメンタルも強くなったんだな、と思います。正直でメンタルが弱くて、謙虚で私生活は地味な人間味あふれるところが私がアンディを好きな理由です 🙂
圭くんもそうですが、どの選手も試合後のヒーローインタビューの時に必ず、相手選手を褒めたたえ、チームに感謝し、観客の人にもお礼を言って、スポンサーや主催者、ボールボーイ、ボールガール、審判などなど、試合に関わる全ての人に感謝と尊敬の気持ちを最初に伝えます。ラフプレーや暴言に対してはブーイングが出るし、選手が集中できるようにコートは静けさと動きがないことを求められます。紳士・淑女のスポーツと言われる片鱗が垣間見れますね。そんなところも、私がテニスを好きな理由です。
そして、「世界で一番古いテニスの大会」ということで、テニスの聖地ウィンブルドンでは、より際立って紳士・淑女度が見られる大会かと思います。ロイヤルメンバーが毎年足を運ぶことでも注目されているし、有名人も多く見られます。そして皆さん、紳士・淑女らしくスーツやサマードレスを着用しているので、そのファッションにも注目が集まります。審判の制服も素敵だし、観客も他の大会より上品な服装の人が多いかと思います。
ちなみに、授賞式では選手は正装していて、男性はタキシード、女性はイブニングドレスを着ているので、一瞬誰か分からないくらいです。
私も4大大会の中でもやはりウィンブルドンは別格だという印象です。一番は選手たちのユニフォーム。知っているひとも多いかと思いますが、ユニフォームは全て白色と決められています。ユニフォームだけでなく、身につけるもの全てです。キャップやヘアバンド、リストバンド、靴下、靴はもちろん、靴の裏も白色でなければなりません。実際の規定はこんな感じ。
1)選手は、会場エリアに入る際には、ほぼ全体白のテニスに適切なウェアを着用すること。
2)オフホワイトやクリームは白に含まれない。
3)全体に色が入ったものは禁止。首回り、袖回り、1センチ幅以下の色付きシングルトリムは許容。
4)模様に含まれる色も規制対象です。ロゴを不適切な素材で作ったり模様化するのは不可。
5)トップスの背中側は白だけとする。
6)ボトムは幅1センチ以下の外側の縫い目以外は白だけとする。
7)帽子、ヘッドバンド、バンダナ、リストバンド、靴下は1センチ幅のトリム以外は白だけとする。
8)シューズは、底も含めてほぼ全体白とする。大きなブランドロゴは奨励しない。グラスコートシューズの規定はグランドスラムルールに同じ。つま先周りにピンプルのあるシューズは不可。つま先のフォクシングはスムースであること。
9)プレイ中に見えるまたは見えるかもしれない下着は幅1センチ以下のトリム以外は白であること。汗により見える場合も含まれる。さらに、常識的な品性をいつも保つこと。
10)どうしても必要な場合を除いて医療用のサポート品も白を身に付けること。
こ、こまかいー。ですが、この白が芝生コートに綺麗に映えるのです!白色の規定が厳しすぎると賛否両論あるようですが、私はひとつくらい頑なに昔からのルールを守る大会があってもいいと思います。緑と白のコントラストはやはりキレイだし、白色の衣服は多くの国で特別な意味があるものだし、実際に身につけると気持ちが引き締まり背筋が伸びるような気持ちにさせてくれるので、良いと思います。
そして、この芝コートはウィンブルドン大会の13日のためだけに使用されるもので、この13日のためだけに一年をかけて、芝が手入れされるのです。なんとも贅沢な。
決勝戦くらいになると芝がはがれてくるので地面の色が見えてきてしまうのですが、一回戦のコートはとてもキレイな緑色をしています。緑の濃淡で手入れされた芝コートに、全身白色のユニフォームをまとった選手たちはとても美しいです。
美しいといえば、マリア・シャラポワ。今年引退をしましたが、私が初めてシャラポワのプレーを見たのも、ウィンブルドンでした。今も強烈に覚えていますが、白いユニフォームを着て一生懸命にプレーしていた、とても綺麗な17歳の女の子が、ウィンブルドンで優勝したのが2004年。テレビに釘付けになって応援していました。あぁ、懐かしい。
緑の芝、白色のユニフォーム、初夏の爽やかな陽気、静けさの中に響くラリーの音、ショットが決まった時の大歓声…ウィンブルドンのセンターコートでの決勝戦を一度観戦してみたいな、と思います。
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