旅エッセイ 【ネパールは孔雀色】
2015年の秋、カトマンズ郊外の静かな集落を訪ねました。
「大自然の中に、最新設備を整えた村づくりプロジェクト」のメンバーとして関わっていた私には、ひと回り以上年下で、高校や大学を卒業したばかりのネパール人の「チームメイト」がたくさんいました。
その年の春に起こったネパール大地震の影響で、チームメイトの家は大きな被害を受けたので、状況をみるために彼らの家を訪ねに行ったのです。
首都のカトマンズでも舗装道路の方が少なく、舗装された道以外は土に覆われていて、街中は土煙が立ち籠めています。電車は走っておらず、地元の人は一見そうとは分からない普通のワゴン車で移動します。郷にいれば...と思ってその乗合バスに乗ろうとしたけれど、「Yukoさんには無理だよ」と言われて、私は乗ることができませんでした。
高額なタクシー(一見は普通の車)から眺める風景には、ワゴン車の乗合バスと、屋根にも人をたくさん載せた少し大きなバス、そしてオートバイがたくさん。家族3人を載せたお父さんや、大きな荷物を載せた運転手さん、それから通勤途中のお姉さんたちは、渋滞する自動車レーンをよそに、みんな涼しげな顔でスイーッとバイクを走らせます。
路肩にはたくさんお店が並んでいて、日用品や果物なんかが売られています。人通りも多くて、現代的なファッションの人もいれば、鮮やかな民族衣装を纏う女性も多く見かけます。褐色の肌に鮮やかな色がよく映え、ゴールドのアクセサリーがとてもよく似合います。
実家で暮らすチームメイトも多く、彼らの家は市街から少し離れたところにあります。集落は小高い丘に点在していて、赤土で覆われた道なき道が通勤路。女の子たちはとてもお洒落なので、スニーカーではなくヒールのあるサンダルを履いているのですが、スタスタと「こっちよ」と言って起伏のある道を涼しげに案内してくれます。
一番季節のいい秋のネパール、昼下がり、何気ないおしゃべり、鳥の鳴き声、牛や鶏に挨拶したり、近所のお母さんと立ち話したり...。小学生の頃、友だちと一緒に帰ったあの頃のような空気に包まれ、とても暖かい時間が流れていました。
そんな時、「Yukoさん、これお土産にどうぞ。本のしおりにしたらいいよ」。そう言ってエンジニアの男の子がくれたのは、道で見つけた孔雀の羽でした。
貧しいと言われている国で貰った、お金では買うことのできない素敵な素敵なプレゼント。
強い太陽光に反射して、キラキラ輝く色鮮やかな虹色の羽。瞳のように見える丸い模様は、本質を見据える深く純粋な洞察を持った、彼らの眼差しのよう。
青藍の光沢を持つ美しい躰と豪華な羽、そしてその静かで優雅な佇まいは、優しくてしなやかな強さを持つネパールの人々に重なります。
私の中のネパールは、とっても美しい孔雀色。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?