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政権交代による政策の違い

 イギリスでは、政権ごとに主要政策が変わります。保守党政権では、主に経済成長を重視し、社会保障の削減を行い小さな政府を目指す傾向にあります。労働党政権では、社会福祉を手厚くする大きな政府を志向し、その財源を確保するため増税を実施することが多く行われます。

 イギリスでは歴史的に、右派政権による小さな政府が行き過ぎると、有権者は左派政権が支持を集めるようになる。(表を参照) 左派政権が実施する大きな政府としての社会課題に対するセーフティーネットは、右派政権時代において社会で拡大した格差への手当てとなる。また、この左派政権による施策が行き過ぎると、肥大化する政府の財政支出を抑える必要が生じ、再び小さな政府が有権者の支持を集めることとなる。

 1990年代にイギリスで登場した第三の道(The Third Way)という概念がイギリス以外の国においても広く受け入れられた。右派と左派、小さな政府と大きな政府という概念を批判し、新しい政治概念を模索しようとしたものである。
 第三の道政策は、1997年にイギリスで労働党が政権を獲得した際に、トニー・ブレア首相によって重用される。第三の道を体型的にまとめたアンソ二ー・ギデンスが政権のブレインとして指名された。
 その後、2010年に労働党から保守党へ政権交代が起こった際には、デービッド・キャメロン首相がビッグ・ソサエティ政策を掲げた。この政策の目的は、政府の役割を縮小し、民間や地域社会の役割を拡大することで、より活力ある社会を実現することを目指したものであった。ビッグ・ソサエティ政策は、コミュニティの活性化、ボランティア活動の促進、慈善活動の支援、民間企業による社会参画を促すことの4点を重視する。
 例えば、ビッグ・ソサエティ政策の発想に基づく貧困対策は次のように変わるのである。政府の役割は失業手当てなどの給付をするだけではなく、貧困の原因が失業によるものであれば、より人材が必要となっている新規産業や競争力のある業界への再就職ができるような環境を整えることである。成人であっても新しい知識を学直せるよう、職業訓練校や短期間で新しい知識を習得できるコミュニティカレッジを多く設立する。求人の多い産業で必要とされる技能を習得し直せる環境を整えることで、貧困からの脱却を促そうという考え方である。

 格差や貧困問題の解決には政府が給付金を渡すことが重要だという発想から、貧困状態にある本人も努力し、企業やボランティア団体など社会を構成する様々な団体が協力しながら社会的に弱い立場にある人々を支え合うという考えに変化している。

参考
アンソニー ギデンズ. 佐和 隆光 (翻訳). 1999.『第三の道: 効率と公正の新たな同盟』. 日本経済新聞出版 

冒頭の写真は、イギリスで多くみることができる信号機のない環状交差点を示す道路標識です。ラウンドアバウト。roundabout。車が入っては出るを繰り返すこの交差点がイギリスの政権交代の様子にも思えこの写真を掲載しました。
この交差点に侵入する車は、交差点手前で一時停止の後、必ず左方向へ進入する。本来なら右折したい車であっても、左周りに270度ほど進んでから交差点を出てゆくことで、当初右折する方向へ進路変更ができる。信号機がないことで渋滞の緩和になり、さらに交差点内の出会いがしらの衝突事故が少なくなる効果がある。

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