年金制度が破綻しない?少子高齢化の真の問題点
金融庁の座談会にて、年金制度の維持が難しいと発表がありました。これに伴い、年金制度の破綻を煽る声や、自身の老後の生活をまかなうために、老後の資産形成を促す声がより一層強くなっております。
財政上、年金制度は破綻しない?
日本の財政問題を元に、年金制度の破綻を想定される方が多いと思いますが、よく問題視されている日本政府の債務の多く(国債)は自国通貨(円)建であり、政府の子会社である日本銀行は通貨発行権(円を発行する権利)があります。
※西南戦争前までは政府に発行する権利がありましたら、無制限に発行できると過度なインフレーション(供給不足)になるため、日本銀行が誕生しました(参考:日本銀行)。
つまりは円建ての借金で日本政府がデフォルトする心配はありません。外貨建ての債務がある場合、デフォルトする可能性はありますが、円建ての債務に関してはその心配がないため、理論上、予算制約はないことになります。
しかし、過度に予算を設けると、消費が活発になりすぎて、需要に対する供給能力が追いつかなくなり(インフレーション)、必要な場所へモノやサービスが行き渡らなくなる危険があるので、適正な範囲内で予算を設ける必要があります。
※インフレーション:モノやサービスの生産量(供給)に対して消費(需要)が上回る現象。(資本経済においては、インフレ下において生産した分、モノが売れるため、生産性向上のための設備投資が活発になりやすいと言われておりますが、過度なインフレは供給不足になり、必要な場所へモノやサービスが行き届かなくなる恐れがあります。)
ですが現在の日本は、消費が低迷している=デフレーション(※)と言われているので、むしろ年金分、予算を拡張させるべきです。
支払われた年金は、受給者がモノやサービスを消費すれば、その分、誰かの所得が生まれます。
年金が支払われた分だけ、新たに消費が活発しやすくなるので、むしろデフレ期の日本にはプラスと言えます。
※デフレーション:モノやサービスの生産量(供給)に対して消費(需要)が下回る現象。(全体的にモノを生産しても売れ残ってしまうため、価格競争が激化しやすくなります。)
また、高齢者には労働市場から引退してもらい、年金受給者になってもらうことは、現役の労働者にとってもプラスなことです。
彼らはただ消費するだけの存在になります。供給する人間(労働人口)が減れば当然、生産者一人あたりの市場シェアの割合が高くなるからです。
少子高齢化の真の問題点は供給不足である
少子高齢化の問題点について年金制度が語られることが多いと思いますが、それよりも、生産年齢人口に対し、消費するだけの高齢者の人口が多くなることで、高齢者に必要なモノやサービスを十分に供給できないことが問題です。
現に介護や医療を始め、高齢者に需要の高い一部の分野では、人手不足が問題となっております。
これらの分野において人手不足を補うために、外国人労働者を受け入れる声が高まっておりますが、供給不足を補う(一人あたりの生産量を増やす)ための技術投資や技術投資を行うよう、政府が先導するべきでしょう。
この分野における、一人あたりの生産量(質も含める)が向上するため結果的に、実質GDP(国内の総生産量)が増えるからです。
反対に、外国人労働者の受け入れを拡大すると、生産性投資のための設備投資を行う必要がなくなる上に、労働者の賃金抑制に繋がります。
年金制度の破綻を煽るのが危険な理由
また供給不足と同様、メディアやSNSを介して年金制度の破綻について、不安を煽る流れは危険だと思います。
現代の日本では人々がモノやサービスの購買(消費・需要) を抑えるあまり、デフレーションが深刻化しており、国民の多くが貯金、節約に力を入れるようになれば、ますますデフレが深刻化するからです。
しかし、お金の面では破綻することはほぼありえませんが、政府が廃止したい意図がある場合、もしかしたら将来的に、年金制度そのものが事実上、なくなる時代が来るかもしれません。
そういう意味では、資産形成をする行為自体は、個人にとって最適な判断だと思います。
ですが国民全体のことを考えると、年金制度について国民一人一人が自身の権利を主張し、政治的なプレッシャーをかけることが大切です。
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