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まんきん。

漫画の話で熱くなった夜。
登場人物、ヤツと私。

(「ヤツ」とは私と10年近く週末婚見習いのようなことをしている二回り上の相手で、お互いにこの距離が最適と思っているから継続できているのであろう。)

「ねえねえ私さ」
「最近『望郷太郎』という漫画の最初の方を無料で読んでさ」
「続きも読みたくなってどうしようかとなっているんだよね」

するとヤツ。
「もっと面白いのがある!」
「それは『まんだら屋』だ!」

と自信満々に申すので内容を聞いたら、ヤツが若い頃住んでいた福岡県の小倉が舞台のおはなしで。確かに面白そうではあるんだけど『望郷太郎』とは世界が違う気がするよね…。

とにかくお互いが言いたいことを言い、お互いに譲らないスタイル。いつものことだ。この場面での効果は、二人ともさっぱりして満足する(伝えるだけで幸福)以外になく、負のエネルギーを生まない相性の良さを実感することであり、明日ヤツが目を覚ました時に今夜のことを引きずっている感情などないことへの感謝。に尽きる。

しかも、正しくは『まんだら屋の良太』だった。
タイトルすら適当だ。「まんだら屋」を間違えていなかっただけでも上出来だ。おそらく『望郷太郎』の「太郎」が引き金となって思い出した「良太」なはずなのに「まんだら」の強さだけが残り『まんだら屋』だ!と言ったに違いない。

寝床に行ったヤツをめずらしく見送った先のパソコンに、子守唄として再生する動画のリストの中に『マンダラ屋の良太』があった。一緒に数分見ていた。

いいじゃん…ちょいエロじゃん。
えー、畑中純さん知りたいじゃん。
なにさ、公式サイト登録しちゃう。

この類の遺産。たくさんもらってるんだよな。
こういうのがお互いにある。
世代が違う人といること、
さらに根本的な趣味が似ていること、
それは遺産しか生まない。
あくまでも超個人的な世界を広げる遺産。

今日もいい夜だった。
少なくとも私はマンキンで『望郷太郎』への愛を語った。
だが明日以降、ヤツの世界に望郷太郎はいないのだ。

それでいい。
私の熱を語るのは私だけでいいし、
ヤツの熱を語るのはヤツだけでいい。

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