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トホウモナク快楽。
途方に暮れる
途方もない
この「トホウ」という言葉。といふ言葉。
なぜだか昔から気になるアイツといった存在だった。
と‐ほう〔‐ハウ〕【途方/十方】
読み方:とほう
1 多くの方向。向かう方向。
「—を失へる敵どもを」〈太平記・一〇〉
2 てだて。方法。手段。
「年よって子を先だて、—があるまい」〈浄・丹波与作〉
3 すじみち。道理。
「遠慮を忘れ—なくて、言ふまじき事をも言ひ」〈鑑草・一〉
「とほう」の音声も好きなのかもしれないが、気負ってなくて、どこか抜けていて、それなのにデザイン的には「しんにょう」がかっこいいし、訃報と間違われることもあったりして、なぜだかわからないが、私を魅了していた。
そんな時、いつだったか忘れたが映画の字幕に
「途方もなくクールだぜ」
というような、私の歴史にはない使い方をした「途方」の文字が出現した。
私は諦念や苦痛や悲哀のない「途方」を感じたことがなかった。
第一に翻訳家のセンス、そしてセリフを放った少年と、その映像の色味とで、映画のタイトルを忘れるくらい「途方」という言葉に釘付けになった記憶だけが残っている。
この感じこそクール!!!(まったくクールではない非常にふんわりした己の記憶力に苛立ちを覚えている!)となって、俳句に使いたい!と思い、しばらくチャレンジしてみたものの、この感じがうまく出せない日本人。
なんの映画で、翻訳した方は誰なのか。
探しようもない。途方に暮れすぎている。
知りたい。翻訳家の方に感謝を申し述べたい。
そして、こうした表、裏、あるいはその中間、のような表現を一語でできるモノってほかにもありそうでワクワクする。ネガポジ逆転現象を起こすような言葉。前後の語を子分とした時に、親分のようになる語。辞書をともだちにしていた頃の情熱を取り戻したい。もちろん映画のタイトルも思い出したい。嗚呼、いつかの夢としてたずさえておくモノが多すぎる。
あと、「十方」とも書くのもいいよねー。十、百、千、万も好きだからね。日本語のアイツは。名前にすると「かず」と読む場合もあるしね。千男、万男、かずお。なにより「途」と「十」をうまいこと同居させた「とほう」ってすごくクール!
こうして書いていると、
自分が文章よりも言葉に興味を持つこともわかってきた。
noteってすてき。やってよかった。
なんとなく書き始めては直し、また書く、直す、書く。
この時間を持てることが私にとっての日々の浄化になりつつある。
途方もなくきもちのよい時間。散文放出。
最後に、「途方」のポジ使用チャレンジ期間中の、
わりと気に入った句を書いておこうかな。春の句。
斎場のさくら途方も無くひらく