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読書会レポート:『cocoon』編集者・金城小百合さんと語る会

山里晴香(93年生まれ 那覇市泊出身)

 こんにちは。今回は東京で行っている読書会のレポートです。

 読書会は、「あなたの沖縄」の東京メンバーで定期的に開催しており、沖縄に関する本を一冊取り上げ、みんなで感想を述べ合っています。

 過去には、岸正彦さんの『はじめての沖縄』を扱ったり、打越正行さんを招いて『ヤンキーと地元』を読む会を実施したりしました。

 私が「あなたの沖縄」に興味を持ったきっかけの一つは、去年の読書会のレポートを読んだこと。自分と同じような本に関心を持つ同世代と話してみたいと思いました。だから、前から参加したかったのですが、なかなか都合がつかず…。念願が叶って、8月の読書会にようやく参加できました。

 初参加の目線で、読書会の様子をレポートしたいと思います。

 今回扱った本は、今日マチ子さんの漫画『cocoon』(秋田書店、2010年)。

 戦争が激化していく中、学徒隊として戦地に赴く少女たちのお話を描いています。
 また、2013年から現在に至るまで、藤田貴大さん率いるマームとジプシーによって舞台化され続けています。

 実は、「あなたの沖縄」では過去に一度『cocoon』で読書会を実施しているので、今回は二度目の開催となりました。
前回の様子はこちら

 今回は、編集を手がけた金城小百合さんにお越しいただきました!(余談ですが、私は金城さんが編集をご担当された『プリンセスメゾン』や『サターンリターン』のファンでもあり、お会いできて本当に嬉しかったです)

 集まったメンバーは8名。1名は沖縄からリモートで参加してくれました。

 ほとんどの方が初対面。はじめはぎこちない空気もありつつ、出身地や現在のお仕事の話(大学生の方もいました!)、「あなたの沖縄」を知った経緯や、書いた記事を話すうちに、「ああ、あのコラムの!」と盛り上がっていきました。

『cocoon』が描く少女たちの戦争

 私は、読書会に行く前日に勇気を出して『cocoon』を読みました。ずっと存在は知っていたし、本棚にあったのですが、怖くて読めなかった。小中学校の平和学習で戦争の映像や体験談を聞いて以来、「日常が戦争に接続していく物語」が恐ろしい。当時は、サイレンの音が空襲警報なんじゃないか?と思ったり、戦闘機が空を飛んでいると戦争がはじまったのか?と怯えていました。

 しかし、わたしたちの日常は本当に戦争につながっていく可能性があるのだと思います。だからこそ、向き合うべきことなのだと思う。そして、沖縄に関する文章を書く活動をしているものとして、避けては通れない。そう思って、恐る恐る手に取りました。

 『cocoon』は美しい画で、もうこれ以上描かないで欲しい、と思ってしまうほどに悲惨な現実が描かれていました。たった80年前に自分の生まれ育った土地で起きたこと。やっぱり怖くてたまらなかった。

沖縄をどう届けるのか——金城小百合さんとの対話から

 読書会では、金城さんから当時の制作秘話や、出版してからの広がりについて伺いながら、メンバーそれぞれが『cocoon』の感想を話しました。

 その中で、特に印象に残ったことをいくつか。

 一つは、登場人物の一人「タマキさん」について。
 学徒隊として動員されてまもない少女たちは、非日常感にどこか浮き足立っている様子です。そんな中、防空壕で手鏡を見ながら前髪を直している少女が登場します。「あ、こういう人いるよね」と思う瞬間です。参加者からは、「いまで言う、一軍とか陽キャみたいなキャラクターなんじゃない?」という声もありました。
 さっきまで手鏡を見ていたタマキさんですが、その後すぐ、壊死しかけた脚の処理を任され、思わず吐いてしまう。このシーンで、私たちと変わらないようなどこにでもいる普通の少女が、異常な出来事を経験したことを改めて感じました。

 二つ目は、金城さんが「県外の人に沖縄戦を届けるハードルの高さ」についてお話されていたこと。

 『cocoon』は線がやわらかく、戦争がテーマでありながらも手に取りやすい作品です。だからこそ、描かれている悲惨さとのギャップが大きい。
 お話を伺いながら『cocoon』は「どうやったら多くの人に届くか」を考え抜いて作られたのだと思いました。また、今日マチ子さんと金城さんが取材を重ねる中で見聞きした沖縄の人々の想いを無下にしないよう、多くの人のことを考えて、さまざまな葛藤を抱えて作品が生まれたことも伝わってきました。マームとジプシーが公演のたびに沖縄で上演していることも知り、ぜひ観てみたいと思いました。「沖縄をどう届けるのか/どう届けたいのか」は、「あなたの沖縄」が向き合っていくテーマでもあるように思います。

 三つ目は、「家族や友人と沖縄や基地のことって、ふつうに話す?」という問いについて。
 「全く話さなかった」という声があったり、「家族と県民大会行ってたよ」という人も。凄いなと思ったのは、「いろんな立場の人の話を聞く機会があるから、たとえ自分と正反対の意見でも、なぜそう思うのかを聞く」という方のお話でした。当たり前のようですが、なかなかできない。つい同調したり、違う意見の人を避けたりしてしまいがちですが、相手の真意を汲み取ろうと普段から実践していることは、勇気がいることだと思います。

読書会に参加してみて——私たちはどう語り継ぐのか

 今回、読書会にはじめて参加してみましたが、自分の率直な意見が受け入れられ、反応があることが嬉しかったです。「当時はこんなふうに思っていた」と言いづらいようなことも受け入れられるような場でした。

 また、他の人の視点で、自分は気が付かなかったシーンに着目したり、解釈が広がったりと、みんなで言葉を重ねているような感覚になりました。

 読書会の中で「沖縄戦を誰がどうやって語っていくのか」という話になり、本当に難しい話だなと思って聞いていました。戦争を経験した人がいなくなってしまう中で、今後誰がどうやって語り継ぐのか。読書会のような気軽な場から語り始めてみることは、その小さな一歩になるのではないかと思います。

 最後に、あなたの沖縄は3周年を迎え、今後トークショーやワークショップなどオフラインのイベントも開催していきます。ぜひ楽しみにしていてください!

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