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台湾のガジュマル

玉元花菜(95年生まれ 宜野湾市出身)

 台湾に留学で暮らすようになってから、はやいもので今年で5年目になる。秋には大学を卒業し、台湾で就職する予定だ。沖縄を離れて少し寂しい気持ちもあるが、充実した毎日を過ごしている。

 今では台湾の生活に慣れたが、最初はいろいろと驚くこともあった。例えば、台風の過ごし方。台中人の友人に「大きな台風がくるよ!」と教えてもらった私は窓にテープを貼り、新聞紙を窓枠につめ、カップ麺を買い込んだ。そうして臨んだ台風はいつ来たのかも分からないうちに過ぎ去っていた。私の住んでいる台中は盆地になっていて、東側には中央山脈が走っている。3千メートル級の山々が山脈をなし、台風から台中を守っているのだ。だから、沖縄と距離が近いのに、台中の台風は沖縄よりも台風の勢いが弱くなる。

 このような土地柄のおかげか、台中の木々は大きくて背が高い。特に台湾のガジュマルには驚かされた。沖縄のガジュマルと同品種なのか定かではないが、沖縄のガジュマルとは少し違くて10メートル以上に育つのだ。初めて見たときはあまりにも大きくて、ガジュマルだと分からなかった。どっしりと大地に根を下ろし、空高く隆々と枝を伸ばす姿は壮観である。大学構内にもたくさんのガジュマルが植えられていて、学生の歩く道に心地のいい陰と木漏れ日を与えてくれる。

キャンパス内のガジュマル

 沖縄のガジュマルにはキジムナーが住んでいるそうだが、台湾のガジュマルにはタイワンリスが住んでいる。尻尾がふわふわで愛くるしいリスだ。朝7時、大学のガジュマルの下で朝食を食べていると餌をねだりに降りてくる。「チッチッチッチ」と鳴き尻尾をパタパタと揺らし「そのパンをひと欠けくれ」と圧をかけてくる。餌付けをする人も多いのか、木には「リスに餌をあげないでください」と書かれた看板がくくりつけられている。

 私はパンをあげるそぶりだけ見せて実際にはあげない。しばらくすると諦めて木の上へ行き、ガジュマルからガジュマルへと飛び移り、手の届かない所へ行ってしまう。学生が多くなる時間には木の上に身を隠しているのか、普段は姿を見せない。大きいガジュマルの木の下、私だけの楽しみである。

 皆さんも台湾に来たらガジュマルの木に目を凝らしてほしい、そこにいるのはキジムナーじゃなくて、リスかもしれない。

※「落ち穂」『琉球新報』2022年7月14日から加筆修正の上転載。

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