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宜野座のすーすー
さまよう蟹(94年生まれ 西原町出身)
宜野座ですーすー
私が子どもだった頃、土日は家族で父の車に乗ってドライブに出かけていた。国道329号線を通って、時々訪れていたのは道の駅「ぎのざ」。今でこそ新築ピカピカだが、当時はトタン屋根と砂利が敷かれた駐車場が印象的だった。
正直言って、当時この道の駅には目玉がなかった。いつ行っても、許田の道の駅と比較しては不思議な気持ちにさせられた。圧倒的ローカル感、病院の売店感。不思議な食感の「じゃがめん」、手作りのコースターやポーチ、宜野座で採れた野菜……子どもには味わい深さがわからなかった。でも一つだけ、子ども心をくすぐるものがあった。「すーすー」だ。
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すーすーは小さな袋に上白糖と粉ミルクが入った商品で、短いストローがついていた。ストローを袋に入れて、内容物を吸い上げる。そうやって味わう、そこらのスーパーでは見かけないお菓子だった。「吸う」からなのか、我が家では「すーすー」と呼んでいた(正式名称は不明)。両親は出先であまりお菓子を買ってくれなかったが、父が気に入ったからか、この道の駅に行くと必ずすーすーを買ってくれた。
すーすー購入後、クーラーでギンギンに冷えた父の銀のエスティマに乗ってさらに北上しながら、みんなで白い粉を一心不乱に吸い上げ堪能する……そんな時間が楽しみだった。すーすーの甘さを長く楽しみたくて、助手席の母から勧められるさんぴん茶も飲まずに過ごしていた。
そんなすーすーも、私の成長とともにいつしか記憶から薄れていったのであった。
浦添にすーすー
ある日Twitter(現・X)を眺めていたら、ある写真が目に入った。小さく透明な袋、短いストロー、袋に入った白い粉。その瞬間、薄れていた記憶が蘇った。すーすー! まだ生きてたのか! ていうかアレ何だったの?
勢いでこの製品について改めて調べたところ、あの異常な硬さでお馴染み「いちゃがりがり(※)」と同じ会社が作っているとのこと(これも宜野座の道の駅に売られていた)。さらに、会社の所在地をGoogleマップで調べると、そこで製造品を購入できる旨の投稿が! 宜野座までは行けないけれど、浦添ならなんとか! これは行くしかない!
すーすーは屋富祖の住宅街の中にひっそりと建つ、民家と言っても差し支えない外見の工場で作られていた。駐車場右手では大きな鍋のような、釜のような鉄製品が置いてあり、駐車場中央奥は座敷になっていて、そこで数名の従業員さんが作業をしていた。一見して、すーすーは見当たらない。「あの、吸って食べるお菓子、売ってませんか?」「ありますよ、何個買います?1個20円です」「3個ください」
ついでなので、すーすーについて従業員さんに聞いてみることにした。この会社は復帰前からあり、すーすーも復帰前から売っているとのこと。すーすーは独自開発の商品ではなく、開発者がこの会社に製造を持ち掛けたことで発売するようになったらしい。中の粉の配合は発売時から変更していないと言っていた。
ゆんたくした後、無事すーすーをゲット。久しぶりだな!
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久々すーすー
ゲットしたすーすーを堪能する。袋にストローをセットし、吸い上げる
甘い、甘すぎる……ッ!
口の中の水分がすべて持っていかれて、ちーちーかーかー。逃げ場のない甘さが口の中を襲う。こんなに甘かったっけ? なぜあの頃の私は母から差し出された飲み物を拒否できたんだろう? きっと私の味覚が変わってしまったのだ……。
復帰前と変わらぬ味だと知ると、今ほど物がないあの頃は贅沢品だったんだろうなあ。ねっとりした甘さを口いっぱいに感じて、たまの贅沢を楽しんでいたに違いない。飽食の時代にはすーすーはトゥーマッチな味わいかもしれないが、それでもあの頃宜野座で家族で楽しんだ甘さを再び体験できて感慨深かった。どうせなら、車の中でクーラーガンガンにして食べればよかったなあ。
あなたの思い出の味は今、どうしていますか? もし心当たりがあれば、再び手に取ってみませんか?
いちゃがりがり(※)
いちゃがりがりは沖縄県内のスーパーコンビニなどで販売されている駄菓子で、細いイカの芯に小麦粉の衣がついたシンプルな味わいが魅力の揚げ菓子です。そして、このいちゃがりがりの特長はなんといっても「固い」こと。