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男の方が辛いと思っていたけれど

女は楽そうだなって、前はいつも感じていた。

この土地に転勤してきてもうすぐ1年。男はなんだかんだ言っても稼がなくてはいけない。小さな息子と妻のためにどんなに嫌なことがあっても俺が働かなくては飯も食えない。

本当はすぐにでもパートで良いから妻にも働いて欲しいけれど、正社員が良いとか保育園に入れないとかなんだかでどうやらそれどころではないらしい。


それって言い訳じゃないのか?


息子とずっと一緒にいる妻の方がどこからどう見ても気楽にしか見えない。上司に叱られる事なんてあるわけもなく、満員電車にも乗らなくてすむ。時間に追われることも取引先に頭を下げることもない、今のご時世に三食昼寝付き、俺が帰宅しても家の中はぐちゃぐちゃで片づけてもいない。ごめん、今日は夕食も作れなかったなどと謝ってくることもある始末。

あれだけぐーたらしていても怒鳴らない俺は何て寛大なんだろう。そんな風に自分に言い聞かせながらも心の中に何かが少しずつ積もっていく、そんな日々だった。

こっちがイライラしているのが伝わってしまったのだろうか。妻も最近なんだかイライラしている気がする。前よりも口数が減ったし、あまり目を合わせてくれないような。。。

そう、そんな風にあの頃までは思っていた。俺はあまりにも知らなさすぎた。

あれは金曜の夜


「あなたは育児に対して理解がなさ過ぎる、私がどれだけ大変な思いをしているのか、たった一人であの子の面倒を半日でもみてみたら良いんだわ!!!」


泣き叫んでくる妻に対して俺はちょっと引きながらも快諾した。明日は土曜日で会社も休みだし別に息子を1人で半日みるくらい楽勝で何てこともないだろう。妻がいつもやっていることを俺が出来ないわけがない。


・・・それはとんでもない誤解だった。


ママを連呼する息子、着替えをさせるのも一苦労、普通に食べれば良いのにどうして食べない?料理をしながら息子の面倒をみようとすることってこんなにも大変だったのか。何をするにも嫌だ嫌だと言うばかりで物事が進んでいかない気がする。いや、気がするのではない、殆ど進んでいないのだ。


これなら仕事の方がよっぽど達成感がある・・・


妻は俺がいない間に、これを一人でずっとやっていたのか。そして俺は休日に手助けしていたつもりで全然助けていなかったんだな。。。

              





出勤の為に家から駅まで一人で歩く。自分のペースで自分の進みたい方向に歩ける。こんなことすらも、とても贅沢だったとは。

3月8日は、どうやらミモザという花とフェレロ ロシェというチョコレートを女性に贈る日らしい。あの丸くてゴールドの紙に包まれたチョコは、そんな名前だったのか。国際女性デー、女性に感謝をする日。花を贈ったのは、いつが最後だっただろう。あの黄色い花があったら、家の中と同時に妻も明るくなるだろうか。

フェレロ ロシェを好きなことは知っている。ミモザの花なら持って歩くのも渡すのもそんなに気恥ずかしくはない。

思い切って買ってみようか。


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