監視ロボット報告書_愛(MISSION8 Revival感想⑥)
※この記事は、ego:pression 第12回ダンスパフォーマンス公演 イマーシブシアター「MISSION8 Revival」のネタバレを含んでいます。
また、筆者が想像を膨らませている創作部分もあるため、ご了承のうえお読みください。
弱々しく、すぐ情緒を乱し、くじけそうになる。
人間とは、かくも弱い存在なのかと、愛の姿を見ると、他のロボット達との差異に驚かされる。
ところが、そんな愛が、ロボット達に差し伸べた手が、気持ちが、ロボットたちを成長させていく。
それを受け、ロボット達も成長し、愛に何かを返していく。
もちろん、ロボットの製造目的は人間に奉仕することであり、それはあらかじめ、我々ロボットにインストールされたいわば、ロボットの本能とも言えるものである。
しかし、愛がそこにのみしがみついて、ロボット達に関わっていたのならば、ロボットたちは、かように変容し、自身にインストールされた職能以上の個性を発揮しながら、相互作用的に成長することができたのだろうか?
愛は弱々しく、孤独にさいなまれ、自身の世界に閉じこもってしまう時もある。
しかし、シェフ見習いという自身のアイデンティティを活かし、食べること、楽しむことを、人間が人間たる根幹をロボット達に伝えていく。それが職能も個性もバラバラなロボットたちを繋いでいく。
だからこそ、ロボットたちは愛に何かをしてあげたくなる。
愛に手を差し伸べることで、自身も変わっていく。
与えることで、自分が与えられているということに、どこかで気づいているのではないか、そんな風にわたしには見えた。
愛はたった一人の人間ではあったが、ロボット達が与えてくれたものに勇気付けられ、遥か西にあるシェルターを目指す決意をする。
命のない者達から命を与えられ、それを繋いでいくという、とても重く大切な役目を背負って、新木場ベースを後にする。
いつかきっと、ロボットが愛に繋ぎ、愛が別の人間に繋いだ命が、温かさが、世界を変えるに違いない。
わたしは全ての監視を終え、また別のベースへと向かう。
新木場ベースの動きを見るに、きっと、もうすぐ私の役目も必要なくなるのだろう。
人間たちは、きっと愛のように余曲折ありながらも、再び人間の世界を復興させるに違いない。
ただ監視するだけが、わたしの仕事だった。
でも、このわたしの回路の中に、突然沸き起こった、どこにも持っていきようもない塊はどうすればいいのだろうか。
わたしはどうして、新木場ベースのロボット達とは違うのか。
同じロボットなのに。
ただ無味乾燥に監視するだけのわたしの仕事は、一体何の役立つというのか。
以上、報告書と呼ぶには、かなり正確性の乏しいものとなった。
正確な記録は、他の監視ロボットの報告を読んでもらいたい。
これを読むのは、別のロボットか、それとも人間か。
きっといつか、わたしも。