錯乱

堕ちて、堕ちて、堕ちていってそこで咲いた花は美しい。



誰の手も届かない、誰の介在も許さない、そんな場所で花開いたあなたは強く、光を放っている。それは上まで届かなくて。でもあなたはそれを望んでいる。
届かなくていい。届いたら私は壊れてしまう、そんな風に思ってる。
なぜ壊れるかって?
そんなの分からないけれど、私の中のとても弱いところ、ひびの入ったとこ、そこから脆く崩れ去ってゆく気がする。そしたらもう再生できないの。
あなたがそう言ったから私はもう何も言えなくなった。たった今吐き出そうとした言の葉は虚しく飲み込まれるしかなかった。出番を失って役目を果たせなかった言葉は私の胃の中からやるせない思いを力の限りぶつけてくる。

キリキリ

私の胃は痛んだ。



何も持っていないように見えたあなたは実はたくさん持っていて。空っぽなのは私の方だった。それに気付いたときやっと私にも1つ持ち物が出来たような、そんな心持ちがした。たくさん持っているよりも、1つしか持っていない方が大切に出来る気がする。でもそれはたくさん持っていることへの嫉妬なのかもしれない。
あなたがうらやましい。
あなたになりたい。
私があなたならよかったのに。
叶わない願いなのは知ってるけれど、うらやましい。

…………………………妬ましい。

我に返った時には、私はあなたの首に手をかけていて、私の腕を掴んでいたあなたの手はだらりと畳の上に落ちた。
後にはあなたの首にかけた私の手の跡しか残らなかった。


私のこと勝手に決めつけないで。私のこと全て知っているような、今見えていることが全てなわけない。毎回あることが今回も同じとは限らないじゃない。だからやめてよね、そうやって表面上だけで決めつけるの。あなたは私のこと見透かしているつもりかもしれないけど、私はそんな簡単に出来ていないの。あなたもそうでしょ?私の心の、もっと深層を見て判断してよ。お願い…。見て。私は素直じゃないから言えないの。素直じゃない、なんて可愛すぎるか。見栄っ張りだから言えないの。恥ずかしいし。
挽回のチャンスくらいくれたっていいじゃない。ね?それでだめならそれは仕方のないこと。
どうかわがままだなんて言わないで。その代わり思ってもいいから。

だから、ね?お願い。

未完成のままこの世に放り出された彼らは、その未熟さゆえに苦しみ、自らを故にして生きていくという道しか選べなかった。
ほとんどの人間はこのようにして生きていくのだろう。

しかし彼らは必死に咲いていて、美しい。

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