yountherの耳コピ哲学(つべのコメ欄から引用)

【要約】

まず結論を言うと、耳コピのトレーニングは耳コピ作業そのものです。
場数を踏んで、細かい音に気付くことに慣れる。
これがなんだかんだ最速です。
あとは、もしあれば他の人の同じ曲の耳コピを聴くのもオススメ。
自分が気付かなかった音に気付く可能性が割とあります。

もし、あなたが耳コピ第1号なら、

………頑張ってください。(遠い目)

(今から話すのは、その頑張り方と思っていただいて大丈夫です。)

【細かいお話】

目次:
1.「有利な音感はどっち?(絶対or相対)」
2.「演奏経験楽器の構造やサウンドの知識の有無」
3.「ある日突然聴こえてくる音」
4-1.「そもそもクオリティの高い耳コピとは」
4-2.「3要素(メロディー、コード、ドラム)を正確に聴き取るには」
5.「音楽理論は必要か」
6.「妥協点はどこに置けばいいか」
7.「心が折れそうな時」
8.「まとめ」

1.「有利な音感はどっち?(絶対or相対)」

いわゆる「音感」について。
絶対音感と相対音感とありますが、これは正直どちらでも(ある程度のレベルに達すれば)変わらない気がします。

ただ、どちらかというと相対音感が耳コピに有利です。(主観)
なぜなら、
①耳コピはコードを聴きとる必要があり、
②コードを聴きとるには音同士の「間隔」(注1)を聴きとる必要があり、
③音同士の間隔を細かく感じ取る音感こそが相対音感だからです。
(※音の間隔を掴むのが得意なのが相対音感、音の高さを掴むのが得意なのが絶対音感、というイメージで多分OK)

2.「演奏経験、楽器の構造やサウンドの知識の有無」

まだまだあります。
実際に楽器を弾いたことがある人は、その楽器の音に強いです。

逆に言うと、楽器の演奏経験がない
≒楽器の構造や奏でられる音色への『知識が少ない』人は、
「楽器」というイメージ無しで、シンプルに「音声」だけ聴いて再現しなくてはいけないため、 ちょっと手間が増えます。
いや、だいぶ大変になります。

具体的には、僕の場合、ドラムの構造を理解していなかったため、かなり苦労しました(今も苦労してます)。特にタムやハイハットについてですね。
これがどんな風に実際演奏されるのか、どんな音色なのか、 そして、それをどうやってDAW上で表現するのかを、動画を見たりして勉強して以来、少しずつ改善してきているように感じます。

3.「ある日突然聴こえてくる音」

耳コピをする時、何度も繰り返し音声を聴きまくると思います。
不思議なことに、ある時突然聴こえてくる音があります。
聴こえだしたら、もう見失うことはないのに、今までは全く聴こえてこなかった。そんな音が、なんやかんや必ず一つはあるものです。
クオリティの高い耳コピ兄貴達は、これを必ず押さえてると言っても過言。
……過言かい。

過言ですね。断言はできません。
ただ、しっかり押さえているとクオリティはやはり全く変わってきます。
後述する、「違和感との向き合い方」で、この話がより分かると思います。

例えば、僕は"【チップチューン風アレンジ】."(※削除済み)を聴くまで、 Aメロの歌詞が始まる直前のカカカカカカという小さな音に気付けませんでした。これがないと、イントロからAメロまでの繋がりにかなり違和感があります。
こういった"気付き"の早さが、耳コピ期間をほとんど左右すると言ってもいいかもしれません。 僕は遅いです。
なので、平気で完成までに1年かかったりします。(ごめん)

4-1.「そもそもクオリティの高い耳コピとは」

僕基準での「耳コピ」のクオリティーの高さは、
コード進行を正確に追えているか、に比例します。
(アレンジは、コード進行含めてアレンジなので気にしないようにしています。でもやっぱ原曲のコード進行は重視するタイプ。)

次に、ドラムの「リズム、音色、Pan」の3つがどこまで正確かに注目します。 ドラムに手こずるので、僕は制作期間が伸び(ry

もちろん、主役であるメロディーも絶対に外せません
メロディーを正確にした上で、今言った上2つをやりこむと、格段にクオリティは上がると思います。

4-2.「3要素(メロディー、コード、ドラム)を正確に聴き取るには」

では、これら「メロディーの正確さ」「コードの正確さ」「ドラムの正確さ」を伸ばすために何をすればいいのか。
ずばり、場数を(自重

…じゃなくて、具体的には、
同時再生して違和感が無いかを探す』がおすすめです。
もっというと、
「耳コピと原曲を同時に再生する」
↓↑
「耳コピと原曲を交互に再生する」
を繰り返すと、原曲と同じ部分、違う部分をより意識しやすくなるはず。
特に「メロディー」の聴き取りに有効な方法です。

5.「音楽理論は必要か」

音楽理論について。
これは、コードの聴き取りの補助として大いに役立ちます。
ただ、絶対必要かというと、自転車で言う補助輪に過ぎないのでなくてもできます。

でもやっぱり欲しいところ。
なぜなら、 コード理論を勉強するうちに、テンション(注2)がたくさん入ったコードが「どんな雰囲気の音か」という知識が貯まっていき、この知識のおかげで、コードの雰囲気から逆算して構成音をかなり推測しやすくなるからです。

コード理論を知っておけば、曲の「流れ」もある程度分かるので、コード聴き取りのスピードも上がります。
(だ か ら こ そ 一 部 の 曲 は し ん ど い ん で す よ 変 則 だ か ら)

6.「妥協点はどこに置けばいいか」

妥協点について。
絶対に必要です。

原作者が自作曲をセルフ耳コピするときですら原理的には完全再現が不可能なので、 他者のする耳コピは絶対に妥協しなくてはなりません
この宿命からは絶対に逃れることはできません。

では、どこを妥協するか。
ずばり、ドラムとコードです。

さっきと言ってることちげえじゃねえか!! と思いきや。
あくまで条件付きなんです。
誰が聴いても分かる(※なんも考えずに何となく聴いてても聴こえてくる)音はしっかり押さえて、 じっくり聴かないと分からない音は見逃す(というか頑張っても見逃してしまう)」 という条件です。

シンプルに言うと、 耳コピした人が気付かなかった音は、まあほとんどのリスナーが気付けないよね~~っていう発想です。 (←ある程度までは耳コピする人側が頑張る必要ある脳筋発想ですねこれ)

コードとドラムの2つを完璧にしようとすると
断言します。 病みます。(きっぱり)

あと、やはり時間がかかってしまいます。
なので、ざっくりと、
・コードは「最高音と最低音は正確に、その間の音は周りの音と濁らないように」
・ドラムは「キックやスネアなど明らかに曲全体のリズムを作っている音は正確に、それ以外の飾りのリズムは悪目立ちしないように」
するのが、妥協としてはかなり理想的になると思います。

その代わり、メロディーは命懸けて正確無比を目指しましょう。

<<<メロディーミスったらめっっっっっちゃ目立ちます。>>>

最初はひとまずメロディー命
ある程度出来るようになったらコードやドラムです。

いきなり出来るようになる人はいません。
同じ作品の作り直しだって上等です。

何度もやってみよう!!

7.「心が折れそうな時」

個人的に、いくつかあります。

①コードの構成音が分からない。
②近い音色を作れない。
ミキシングが原曲のそれと違う。
④交互再生したら違和感が目立つ。

①はすでに説明したので、それ以外の話をします。

〔②について〕
これ、技術でカバーできるギリギリのラインです。
シンセのどのツマミをどう動かしたら、どう音が変わるのか。
それを徹底的に理解する必要があります。(場数ゲー)

耳コピ先駆者さんがシンセのプリセットを配布していたらそれを使えますが、その場合でも、「なぜこのツマミをいじるのか」は理解しているに越したことはありません。

時間や体力などの都合上、再現に限界があるなら、音色作りは再現度70%で問題ないと僕は思っています。僕は音作りがすごく、ものすごく苦手なのでこのメンタルです。

耳コピに限らず、創作する時の優先度は、
クオリティが下がること>>>>>>>>>>>>>>>>>未完のまま挫折すること
です。気負わず行きましょう。(自戒)

〔③について〕
ミキシングを近づけたいなら、原曲の制作環境と同じものを用意してください。それが出来ないなら、とっとと諦めてください。時間の無駄です。

これは、あくまで現時点での僕の持論、経験則です。
もちろん、ミキシングの練度の問題はあります。
どうやればミキシングが上手くなるのかは僕も切実に知りたいところです。
とりあえず、音が大きければ良し!!!!!!(脳筋)

少し冷たい言い方にはなりましたが、言いたいことは、
ミキシングで悩む時間を、ミキシング以外の精度を上げるために使え
ということです。耳コピでやるべきことは他に大量にあります。

(ミキシングについての記事ではないので情報量が少ないのは勘弁)
(……ミキシング情弱なんバレてまう)

〔④について〕
違和感、めちゃくちゃ細部にまでこだわってやってるはずなのに、
なんか分かんないけど違和感がずっとある…。

制作も終盤になるとこの現象がほぼ必ず起きます。

ですが安心してください。

それ、精度めちゃくちゃ高い証拠です。

違和感は、確かに大事な感覚です。
その違和感が、そのまま原曲との差異ですから。
でも、その差異は、これまで詳しく述べたように、
もう原理的にどうしようもできない部分じゃありませんか…?

音色の再現がちょっと違う、とか、ミキシングの空間の広がり方が違う、とか。直そうと思ってもどうにもならない部分で、残り続ける違和感と闘っていませんか…?

なぜ精度が高いと言えるのか。

それは、その違和感以外は原曲とほぼ一致していると言えるからです。

人は、普段無意識に見ているものでも、「違い」に敏感になります。
一度その「違い」を認識すると、それに意識を持っていかれることが多いです。

例えば。
普段はネイルをしない友人が、ネイルをしてきたとします。
こういう時、何も言われなければ、気付かない人も多いのではないでしょうか。(だからこそ、「どこが変わったと思う?」というくだりがよくあるのです。)
けれども、ネイルをしたこと、爪の色が変わったことを言われたら、一度は必ずその爪を見ますよね?さらに言えば、言われなかった時よりも、
爪に、ネイルに意識が向きやすくなりませんか…?

耳コピも、これと同じです。

なんなら、耳コピは、「どこが変わったと思う?」なんてわざわざ言われずとも、爪から毛先から何から何まで、細部を能動的に凝視する作業です。(人で例えるとアレな印象しかないな…)

そりゃあ、違和感を見つけたらずっとそこ見ますよね。

逆に、
友人がネイルどころか、髪色や、ピアスや、服装までもめちゃくちゃイメチェンしたとしましょう。そんな状況で、どこが変わったか?という質問にまず「ネイルだ!」と答えられる人類は、まあそうそういないと思います。

耳コピも同じです。
原曲から結構離れている状態では、そんなわずかな違和感なんて気付きません。だからこそ、闘う相手が原曲との明らかな違いではなく違和感のある違いのみになった時、その耳コピのクオリティの高さは確実なものになったと言えるのです。(希望的観測)

だから、違和感は、そっとしておきましょう
投稿した後、指摘されたとしても、気にしない。
だって、それを作ったあなた自身が作ってる時に一番気にしてきたし、その違和感を受け入れて、世に送り出したのだから、それで良いんです。
(技術の向上でカバーできるものであれば、新たに作り直せば良いですし。)

最近僕がやたらとチップチューンにハマっているのは、この違和感との闘いに疲れたからというところが大きかったりします。
チップチューンという形にすれば、明らかに音色が違うのでこの葛藤を回避出来るし、僕自身は音色の精度を上げるのがめちゃくちゃ苦手なのでそれをせずに済む。一石二鳥です。

その代わり、大きく困難を避けた分、
音のタイミングや種類、Panをとにかく高精度にしよう、と意気込んで作っています。音色やミキシングがチップチューン仕様になっただけで、それ以外は普段の耳コピと全く変わらない。

だからこそ、僕は自分のチップチューン作品のタイトルで、
「チップチューンアレンジ」「耳コピチップチューン」
の2つを使い分けているんです。
(前者はアレンジに重きを置き、後者は原曲の再現に重きを置いている)

繰り返しますが、
耳コピ、完璧主義になる必要はないですよ!!!!!!!!!!!

8.「まとめ」

クソ長い文章になってしまいました。すみません。
まとめると、
相対音感あるとメロディーやコードの聴き取りに有利。
②楽器の構造や音色の知識を深めよう。(ハードル低め)
 出来るなら、楽器を実際に演奏してみよう。(ハードル高め)
③意外と今は気付かない隠れた音に追々気付くかも。
 他の人の耳コピはかなり参考になる。
耳コピの核は、「メロディー」「コード」「ドラム」。
コードの核は、「最高音」「最低音」「違和感のなさ」。
ドラムの核は、「リズム」「音色」「Pan」。
 ※音色は妥協上等。Panは気持ち大げさに広く振ると良いかも。(経験則)
同時再生交互再生の繰り返しが、耳コピの再現度を上げるはず。
音楽理論の知識はあるに越したことはないが、あくまで補助
 むしろ、耳コピの経験が音楽理論の理解の助けになるかも?
妥協は、むしろ意図的にするくらいの心持ちでいこう。
 コードとドラムは底なし沼なので早めに撤退するのが吉。
違和感は歓迎しよう。
 気付くことができた明らかな違いだけ、直すように努めよう。

です。
情報量ヤバすぎるので、一つずつで全然いいです。
あと、ここに書いたことは絶対じゃないので自分に合った方法っぽいのがもしあればそれで全然OK!!
以上、耳コピ歴約8年の耳コピ哲学もどきでした。

良かったらご参考までに………。

【脚注】

注1:これこそが本来の意味の『音程』です。
注2:エモくなる音(極論)のこと。
  真面目に説明すると、コードトーン(1,3,5,7度)以外の音全てです。