見出し画像

ニール・ヤング「今宵その夜」の和訳

 ニーハオ。
 今回はひさしぶりに好きな曲の和訳をー。
 

 
 今回取り上げるのは、ニール・ヤングが1975年に発表したアルバム『Tonight’s the night(邦題:今宵その夜)』に収録されたタイトル・トラック。

 実はこのアルバムに収録された大半の曲は発売のおよそ2年前、1973年にレコーディングされている。
 ではなぜここまで発売がずれ込んだのかと言うと、その内容にレコード会社が難色を示したためだ。

 曲の多くは、彼の親しい友人2人が亡くなった出来事からインスパイアを受けている。
 
 一人はクレイジー・ホースというバンドのギタリスト、ダニー・ウィッテン。

左:ニール・ヤング 右:ダニー・ウィッテン。なんとなくミステリアスが雰囲気あります。

 ニールのバック・バンドを務めたり、コラボレーション・アルバムを制作したりするなど、相当ウマが合う仲だったと思われる。
 しかし、ヘロイン中毒に陥り、ギターの演奏も以前のようにいかなくなる。彼をバックにツアーのリハーサル中だったニールはそれを見かね、彼をバンドのメンバーから外す。彼が亡くなったのはその翌日のことだという。
 死因は薬物の過剰摂取だったが、繊細なニールのことだ。いくらか責任を感じていたのかも知れない。

 二人目は、ブルース・ベリーという、ニールが親しくしていたローディーだ。彼もダニーと同じくヘロインにより亡くなった。

ブルース・ベリー。調べたところ、これくらいしか写真がなかった。

 この二つの出来事から影響を受けたアルバム、ということもあり、彼のそれまでの作品にはないダークな雰囲気が強く出ている。その結果、レコード会社は難色を示し、発売を渋ったというわけだ。
 
 今回訳す曲『今宵その夜』は二人目に紹介したブルース・ベリーについて書かれた曲であり、実際に彼の名前も登場する。
 彼には珍しいソウル、R &B風の曲調で音楽としての完成度も非常に高いと思うので、是非聴きながら読んでみてね。
 

 
Tonight's the night
Tonight's the night
Tonight's the night
Tonight's the night

今夜がその夜さ…①
今夜のことなんだ
今夜がその夜さ
今夜のことなんだ…

Bruce Berry was a working man
He used to load that Econoline van
A sparkle was in his eye
But his life was in his hands

ブルース・ベリーは働き者だった
よくヴァンに 荷物を積んでくれてたよ
いたずらっぽい目をしていたけれど
自分の人生は しっかりとその手にあったはずさ

Well, late at night
When the people were gone
He used to pick up my guitar
And sing a song in a shaky voice
That was real as the day was long

 
夜遅く みんなが帰ったあとに
よく僕のギターを拾い上げては
頼りない声で 歌っていたものだ
それはとても 胸に迫るものがあったよ
 
今夜がその夜さ
今夜のことなんだ
今夜がその夜さ
今夜のことなんだ…

Early in the mornin' at the break of day
He used to sleep until the afternoon.
If you never heard him sing
I guess you won't too soon.


朝早く ほとんど夜更けに
彼は眠り 午後まで起きない
彼が歌うのを 聞いたことがないのなら
君はまだ 先が長いんだろうな…②

'Cause people let me tell you
It sent a chill up and down my spine
When I picked up the telephone
And heard that he'd died
Out on the mainline

だってさ、みんな 言っておきたいのは
そのとき 僕の背は凍るほど震えたってことだ
電話をとって 彼が注射中に
亡くなったってことを 聞いたとき
 
今夜がその夜さ
今夜のことなんだ
今夜がその夜さ
今夜のことなんだ…

Bruce Berry was a working man
He used to load that Econoline van
Well, early in the morning
At just about the break of day
He used to sleep
Until the afternoon

ブルース・ベリーは働き者だった
よくヴァンに 荷物を積んでくれてたよ
そして早朝 一日が始まろうってときに
彼は眠るんだ 午後までね…③



 
①…だいぶ直訳ぽくなってしまって悔しいけど、これより他に適切な表現を見つけられなかった。ブルースが亡くなったのは今夜のこと、という意味なのか、お通夜的な意味合いで使われているのか…。誰か意見下さい。
②…よく訳し方がわからなかった箇所。もしこの訳で正しいなら「彼のような仲間が君にいないなら 君の死期はとうぶん訪れない」みたいなニュアンスになるのだろうか?同じ理由で立て続けに亡くなった仲間がいたニールは、自分の身の危険を感じていたのだろうか。
③…最後に一度登場したヴァース(午後まで彼は眠る、のくだり)を再登場させ、強調している点が興味深い。彼が亡くなったのではなく、あくまでいつも通りみんなとは違った時間に寝ているだけ、と自分自身に言い聞かせているようにもとれる。

 因みに、アルバムの最後にはpart2と題されて、この曲の別テイクが収録されている。こちらはよりパワフルというか、ファンキーさが強調されていて違った味があるので、良かったら聴いてみて下さい。

 さらば。
 
 


いいなと思ったら応援しよう!