ものは捉え方次第で

ものは捉え方次第である。
もうこんな言葉お偉さんもなにも考えてないバカもみんなが使い回した手垢まみれの言葉。
けれども、もう一度コレを確認した事があった。

オレは、この春に大学を卒業して晴れて無職になった。
マジでアルバイトもなにもしていないのでモノホンの無職。

ということで無職1日目は無料で開放している地元の資料館に行ってきた。
地元にある資料館はノーベル賞を受賞したある人物の資料館。

小1時間ほど見学したあとその施設の隣で写真展がやっていた。
その写真展には20枚ほどの舞妓、芸者の結った髪の写真だけが飾られていた。
その写真展を見学しているとあるお爺さんが話し掛けて来た。

そのお爺さん曰く、舞妓、芸妓の髪型にもいろんな事情があるらしく後ろで結んでいるお団子が2つに分かれていれば新人であったり、舞妓から芸妓に変わるときに10日間だけする髪型があったりといろんな説明をしてくれた。

どうやら、このお爺さんはこの個展の主催者でありこの写真たちの撮影者。
写真を見ながらいろんな説明を聞いていると過去には下駄や草履など履物ばかりの写真展も行ったそうだ。
そのときに、個展に来たお客さんからこんな事を言われたらしい。
「この写真たちを見ていると下駄の歩いている音が聴こえてくる」
もちろん、写真を見ただけで足音など聞こえるはずがない。
でも、人は想像力だけで写真を見て下駄の音を自分で感じることができる。

その話を聞いてからもう一度、その写真たちを見るとさっきまでただの写真だったのが本当にそこに舞妓さんや芸妓さんがいるような気がした。
着物の襟の感じを見ただけでどんな模様の着物を着ているのかが見えるようになったりどんな顔をしているのか見えるようになった。

オレは自分の目で見たもの以外は信じない人間だ。
けれども、自分の目で見えている部分なんかそれの一部でしかない。
自分の見えている部分以外の部分も想像できると人生は豊かになるような気がした。

そのお爺さんは最後に「私は提供するだけでなく、こうして話していると私自身も気づかされることがあるから写真は辞められない」とニコニコしながら次のお客さんに話掛けに行った。

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