【夏ソングを木村昴が語る】「夏ソング特集後半は、ちょっとセンチメンタル&メローな夏の終わり編!」【HIPHOP HOORAY VOL.33 ヤングジャンプ公式】
『ヒプノシスマイク』で山田一郎役も務める声優界一の“ガチなヘッズ”な木村昴の日本語RAP連載!
前回に続き日本語ラップサマーチューン特集!ケツメイシとライムスターの名曲を考察します!
木村 昴 きむら すばる:1990年6月29日生まれ。ドイツ出身。『ドラえもん』ジャイアン/剛田武役、『輪るピングドラム』高倉冠葉役等を担当。『ヒプノシスマイク』ではイケブクロ・ ディビジョン代表Buster Bros!!!を率いる山田一郎役。天才劇団バカバッカを主宰。ラッパーとしても『フリースタイルダンジョン』にも出演していたラッパー・掌幻と“掌幻と昴”として活動中。
※本記事は週刊ヤングジャンプ2021年32号に掲載された内容をnote用に一部改変して収録しました。
夏ソング特集後半は、ちょっとセンチメンタル&メローな夏の終わり編!
前編は“夏真っ盛り編”だったので、後編は“夏の終わり編”で。前回『T.U.B.E.』を紹介した鎮座DOPENESSさんは、ケツメイシの1st『ケツノポリス』の『CLUBへ〜熱帯夜 mix〜』に参加してるんですよね。その流れでケツメイシ『海』からご紹介できればと
——この曲も収録された『ケツの嵐〜夏BEST〜』をリリース出来るぐらい、
ケツメイシは夏ソングが多いですね。というか、春夏秋冬のベストが出せるぐらい季節ソングが多い(笑)。
『ケツの嵐〜夏BEST〜』:2011年にリリースされた、ケツメイシ春夏秋冬4枚のベスト盤のうちの1つ。
ケツメイシの特徴として曲の“疑似体験力”が強いんですよね。情景とシチュエーションの状況描写と、その状況をどう感じたかっていう心理描写の組み合わせが、ケツメイシはとにかく上手くて。例えば『家に帰ろう』っていう実家ソングは、飼ってる犬の名前とその犬が太ったって歌詞があるんですが、もうリスナーの脳内にヴィジュアルがパッと浮かんで、我が事として体験したような気持ちになる
——確かに。そして子供が家を出たから愛情がぺットに注がれてる表現にもなっていて。
なんてことなさそうな歌同が深いのがケツメイシで。この曲も“車で海に行く”ってシチュエーションに特化した曲で、車を通して夏を駆け抜ける情景描写が素晴らしい。そしてケツメイシは君に逢いに行くとき車使いがち、車に乗り込んでどこかに行きがち(笑)
——大都市以外はやっぱり車社会だし、ケツメイシの活動の原点の八王子方面もそうですね。そこで培われた感覚が広範なファンを獲得した理由でもあり。
“お互いちょっとだけ意識/触れた手にドキッ!/目が合えばスキッ!/ドライブはやっぱりこうあるべき!”ってフレーズも可愛いし、僕にもこんな夏があった気がするな…免許ないけど
——じゃあ偽記憶ですよ(笑)。
ツラいツッコミ(笑)!そしてモンスターチューン『夏の思い出』
——CMソングとして起用されてたこともあり、“夏の思い出/手をつないで/歩いた海岸”というサビは誰でも歌えますね。
“俺は東京生まれHIPHOP育ち/悪そうな奴は大体友達”と双璧を成す、誰でも知ってるヴァースですよね。メロディも口ずさみたくなるキャッチーさがありつつ、ちょっと切ない感じもあり、夏の終わりを告げる雰囲気にマッチしていて
——言われてみれば“思い出”なんですよね。
“なぜなら車でビーチボール膨らまし頭クラクラ”ってリリックも、すごく絵が浮かぶし、自分が体験したかのようなリアルさを感じます。“こんな夏あったかもな”って共感できる描写がたくさんあるし、秋風が吹き始めたころに、
夏を取り返すような1曲で。同じように思い出の夏といえば、ライムスターの『フラッシュバック、夏。』。歌詞で“残像”や“走馬灯”と言ってるように、まさに過去の記憶をフラッシュバックした内容で
——宇多丸さんによると“最高の夏は記憶の中にしかない”というテーマで制作されたそうですね……なんて暗い発案(笑)!
“脳内で「もし……」ばっか練習/あの夏イイ場面だけを編集”ですから(笑)。“「行ってたら行けた」恋だったはずだきっと”みたいに、完璧に上手くいった夏を思い出してる訳じゃないんですよね
——“オレは今もくすぶる線香花火”みたいに後悔みたいな部分も多くて。
花火の描写は“夏は一瞬”ってことを感じさせるし、その雰囲気もすごく胸に染みるというか。一方で夏に対して“長い長い”って連呼する気持ちもめちゃ分かる。暑すぎて“早く終わってくれ、夏”って思いがちだけど、でも振り返ると、一瞬みたいな
——ロイ・エアーズ『Everybody Loves The Sunshine』をサンプリングしてるのも渋い。
その哀愁を感じる部分もオシャレ。共感するもよし、“こうだけはなるまい”と反面教師にして頑張るもよし(笑)。そんな大人の苦味を感じる“いとおかし”な1曲ですね
最後までお読みいただきありがとうございました!
次回もお楽しみに!
撮影◎門嶋淳矢
取材・文◎高木“JET”晋一郎
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