サウナ徒然草〜人は思いもよらない経験をした時に野太い声を人目も憚らずに無意識に出すものだ〜
人は思いもよらない経験をした時に野太い声を人目も憚らずに無意識に出すものだ。
お盆休みというのに私は仕事だ。
ただでさえ憂鬱な月曜日にお盆休みという巨大な存在が伸し掛かる。
出勤時にいつも顔を合わす少し美人なお姉さんもバングラデシュ人っぽい恐らく日本人のおじさんも、今日は誰1人といない。
もしかしたら私はこの世でただ1人の存在なのではないかと、少しだけ不安を感じたが、職場に行けばいつも通り同僚達がいて、安心している傍ら、少しだけガッカリしている自分がいた。
そんな私は世間のお盆休みという巨大なビッグウェーブに乗ることにした。
私はさながらケリー・スレーター。
巨大なビッグウェーブを8時間もの間、器用に乗りこなしては特に何もせぬまま定時で退勤した。
これは私なりの社会へのレジスタンス。
お盆休みは確実に国民の休日であるべきだ。
ご先祖様が極楽浄土から現世に帰って来ている。仕事なんてしている場合ではない。
故人を敬い感謝をするべきなのだ。
だから私は仕事をしないと決めた。
私はシゴオワダッシュで愛する家族のもとへ帰り夕食を食べては食器を洗い息子をお風呂に入れてから19時に家を出た。
サウナに毎日の様に通っている私が言うのもなんだが、私はたとえ45分だろうが家族に会いたい。家族と夕食を食べ食器を洗い息子をお風呂に入れると、不思議と罪悪感はなくなり気持ち良くサウナに行けるのだ。
そんな私は今日も東名厚木健康センターで19時30分から行われる爆風ロウリュを目指し車を走らせた。
19時15分にAKCに着くと、ネオンの撮影をしてから入館するのがお決まりだ。
私のカメラロールにはAKCのネオン写真しかないと言っても過言ではない。
私はただ日常を過ごしていたはずだった。
しかし、いつも通りAKCのネオンを撮影しているとふくらはぎに奇妙な違和感を感じた。
私が目を下に向けると、私のふくらはぎにはゴキブリがいたのだ。
私は思わず。
腹の底から声を出しながらふくらはぎに存在するGを振り払った。
「うおおおおおおおーっ。」
人は思いもよらない経験をした時に野太い声を人目も憚らずに無意識に出すものだ。
辺りには4人ほど人がいた。
ハーフ同士のカップルと女性2人組の冷たい視線が私に突き刺さる。
当たり前だ、私はAKCという世界の中心で野太い声を出しながら突然叫び出したのだから。
私はオーディエンスにこの状況を伝えたくて必死でそのまま声を振り絞った。
「なんか足にいます。足にゴキブリがいるんです。助けて下さーい。」
はたして彼等に私の悲痛な叫びが伝わっただろうか。
彼等にとって私はまだ突然叫び出した奇人なのだろうか。
不安がこれでもかと襲ったが私は爆風ロウリュの時間が近付いているので入館した。
入館するとロウリュウ姉妹がいたので姉妹にこのエピソードを嬉々として話した。
ロウリュウ姉妹のサッちゃんは言った。
「はいっ、つよぽん。早く足洗って来てくださいねー。」
びっくりするくらい塩対応だった。
しかし私は確実にカタルシスを感じた。
「ととのったー!!」
そう私は不本意にもサウナに入る前に「ととのって」しまったのだ。
勿論だが我が師SSK氏による爆風ロウリュも最高に気持ち良く「ととのって」しまったので、これはつまりWととのったの世界観。
月曜から最高だ。
よしっ、明日から仕事をサボタージュしよう。
今ならきっと出来るはず。
私は明日仕事に行かないはずだ。
仕事なんてクソくらえ。
私は明日から自由の身だ。
シャバの空気は美味いぜよ。
One Love.
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