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サウナ徒然草〜サウナで旧友と偶然した〜
仕事が終わりサウナへ行く。
このたった1人の時間は私にとって貴重なタンパク源だ。
今日も私は孤独と対峙しては明日への活力を得る。
日々がどんなに辛くてもサウナさえあれば私は生きていける。
「もっと気持ち良くなりたい。」という欲求から日々に物足りなさを感じることだってある。
私にはまだまだ精神的にも肉体的にも、かなりのキャパシティが残っている。
そうつまりは私という存在はまだまだ余白だらけで、この人生を怠惰に歩んでいる。
そう気付かせてくれたのもサウナだが、一体どうやってこの余白を染め上げれば良いのかまでは教えてくれはしない。
つまりはこういうことだ。
「サウナがくれるのはヒントまで。その先を変えられるかは自らの行動次第。」
そんな私は今日も1人でサウナへ来た。
105℃の薄暗いサウナの中でテレビを観ていると、隣には高校時代の旧友がいることに気付いたが私は見て見ぬフリをしてサウナから出た。
そして旧友も後を追う様にサウナ室から出た。
案の定、水風呂で話かけられ、休憩椅子に座っては思い出話に少しだけ話を咲かせた。
それから私は立ち上がりサウナへ向かうと旧友も立ち上がりサウナへ入る。
サウナから出ると旧友も後を追うようにサウナから出る。水風呂から出ると旧友も水風呂から出る。休憩椅子から立ち上がると旧友も立ち上がる。
変化球でスチームサウナに入ると旧友もスチームサウナへ入る。
私は君に問いたい。
「君に自分の意思はないのか。」
「人に合わせるだけの人生は楽しいか。」
私は3分しかサウナに入らない。
水風呂も10秒。休憩も1分。
それを10回程繰り返すのが私のルーティンだ。
私だって初期の頃はサウナ時計を意識して12分間耐えていた。
今あるこのルーティンは初期に所謂「基礎」をしっかりと行った上で達した私の中での最適格だ。
君はまだサウナの初心者だ。
もうちょっと自分のリズムを探求しなさい。
そして何より。正直に言おう。
ウザい。落ち着かない。私は誰かとお喋りがしたくてサウナに来ている訳ではない。
お願いだから1人にさせてくれ。
その後も私は自分のリズムを崩さずにサウナに入ったが、旧友は私のこの他人からしたら絶対に気持ち良くないリズムに合わせ続けた。
普通のサウナがバラードなら私のサウナはパンクロックだ。BPMも速いし、曲も短い。
君はなんだ。
ピノキオの生まれ変わりみたいな顔をしてパンカーなのか。
本当はもう少しサウナに入りたかったが私は旧友に言った。
「もう上がるわ。マッサージチェアがしたいんだ。」
旧友は言った。
「俺も上がるよ。マッサージチェアがしたいんだ。」
私は君に問いたい。
君に自分の意思はないのか。
人に合わせるだけの人生は楽しいか。
そして数年振りに会った、たいして仲良くもない高校が一緒だっただけの私に歩調を合わせることに何の意味があるのか。
そしてマッサージが終われば退館だ。
ここまで来れば私は諦めていた。
私達は一緒に退館をし煙草を吸った。
煙草を吸いながら私は今日初めて自ら質問をした。
「林子供は!?」
林「いないよ。あっいるよ。」
私「なんでそこ嘘ついた!?俺はキャバ嬢じゃないよ。」
林「実は離婚しててさ。もう何年も会ってなくて。」
話を聞くと彼は薬剤師で週1休みという多忙な生活を送っていた。
数年前に離婚をし、子供にも逢えず、ただ養育費を送る日々。
私の中で全てが解決した。
彼は寂しかったのだ。だから久し振りに会った旧友の私のペースに全て合わせてくれたのだ。
きっと誰かと話したかったんだ。
彼は言った。
「早く再婚してくれないかなー。そうすれば養育費だってなくなるし。元妻との連絡なんて全て定型文で月に1回の今月も養育費ありがとうございました。それだけ。」
私は煙草の煙を燻らせながら彼に言った。
「またサウナしような。」
そういえば林とは体育祭のオレンジ組で一緒だった。私が団長で林が副団長。
その頃は毎夜私の家に集まりバックストリートボーイズとかインシンクとかブリトニースピアーズのMVを観てダンスの振り付けを考えていた。
全然仲良いじゃん。
そういえば、まあまあ仲良い友達だった。
私は長い年月を経てサウナにハマり今ではサウナでのコミュニティばかりを優先していた様だ。
久し振りに旧友と語り合うのも悪くない。
正直、かなりウザかった結果は、いつもと違うサ活が出来て楽しかった。
そして、私達はまた一緒にサウナをすることを約束し別れた。
だがしかし、家に帰り気付いたことがある。
私は彼の連絡先を知らない。
どうやら私はまたサウナに通い続ける理由を見つけてしまった様だ。
「またサウナしような。」
One Love.