僕と沢田研二と時々、鷲見玲奈 at 東名厚木健康センター
車内ではギターのリフが流れている。
そして近未来を彷彿させるシンセの音が鳴り響く。
車外に目を向ければネオンが光り輝く。
それはそれは幻想的な夜だった。
ネオトーキョー。
そんな世界観だった。
どれだけ科学が進化しても、例え「どこでもドア」が発明されたとしても、明日のことだけは分からない。
これは人類にとって抗えない事実だ。
そんな私は渋滞にはまっていた。
私は東名厚木健康センターへ向かっている最中だ。
誰もいない助手席に目を向けると、その先の厚木市文化会館が容易に見えた。
そこからは数多くの車が出て行っては去っていく。そして幾多の60代の女性達が顔を赤らませながら本厚木駅へと歩を進めていた。
どうやら渋滞の原因がここにあることは明白だ。
私は完全にフリーズした車の車内でおもむろに携帯を手に取っては「厚木市文化会館」と検索する。
そして、私は想像もしない未来を目の当たりにした。
「まだまだ一生懸命 沢田研二LIVE 2022〜2023」
私は動かない車の車内で思わず発狂した。
「ジュリーッ!!」
沢田研二の曲がひとつも思い浮かばない私はApple Music内で沢田研二を検索した。
そしてTOKIOという曲を流しては身体を揺らす。
軽快なギターのリフが車内に鳴り響く。
そして近未来を彷彿させるシンセの音が車外を瞬く間にネオンに変えて行く。
どこか懐かしいそのサウンドは確実に最先端で私をネオトーキョーへと誘(いざな)った。
時刻は19時20分。私が目指すは19時30分から始まる爆風ロウリュというイベントだ。
私はもう既に諦めていたが、車内では若かりし頃の沢田研二が力強く歌う。
TOKIO♪哀しい男が吠える街♪
TOKIO♪TOKIOが星になる♪
私はネオトーキョーをひたすら駆け巡っては「ジュリーッ!!」と吠えながら星になった。
19時40分。
私は東名厚木健康センターのサウナ室の上段に鎮座していた。
100℃を超えるサウナ室内ではロウリュウ姉妹がマキタのブロワーを用いては人々に熱波を送っている。
それはいつもの光景だった。
そんな中、ひとりの男がサウナ室の階段を上がって来た。
彼の名は蒸しKING。
昭和の名優の様な風貌とボイスを持つ40代の男性。
彼は私を見るや否や拳を私に突き付けた。
それに答える様に私も拳を上げる。
「近くで沢田研二のコンサートがあったらしく大渋滞にはまってしまい今着きました。」
蒸しKINGさんはいつの間にか私の隣りに座っては耳打ちをする。
「知ってる。因みに勝手にしやがれは聞いた!?」
私は道中で勝手にしやがれを聴いていた。
それはまるで中間テスト前夜の学生の様に。
サウナ室内ではRADWIMPSの前前前生が流れていたが瞬く間に勝手にしやがれへとタイムトリップしていく。
そして私の前に現れたロウリュウ姉妹が世界で1番熱い熱波を私に送る。
私はそれに、ただただ身を委ね口ずさむ。
両手を広げ、まるで「ショーシャンクの空に」の様に。
熱い蒸気が堕ちていく。
そして私は歌う。
選択肢は沢田研二の「勝手にしやがれ」一択だ。
「アーア アーア アーアアー アーアアアー
アーア アーア アーアアー♪」
それはそれは幻想的な夜で、気が付くと乳首が焼けていた。
サウナ室ではRADWIMPSの前前前世が流れている。
どうやら私は現在に戻った様だ。
私はロウリュウ姉妹に言った。
「君の名は!?」
「ロウリュウ姉妹です。」
酩酊とした私は立ち上がり階段を降りていく。
そして脳内で流れるはビューティ・ペアの「かけめぐる青春」。
これは確実にロウリュウ姉妹の影響だ。
「ビューティー ビューティー ビューティーペア
ビューティー ビューティー ビューティーペア♪」
私はそんな私が生まれる前の、
ほとんど聴いたこともない曲を脳内BGMとしながら小走りでサウナ室から出ては16℃の水風呂に入水した。
最高だ。
いまだかつてないほどに最高だ。
そして私は外気浴をしながら思い出した。
もしかしたら3歳ぐらいの記憶かもしれない。
それは突然とフラッシュバック!!
「やまだかつてないWink」
それ以上は思い出せなかった。
でも良いじゃないか、そんな夜があっても。
私は夜風に当たりながら考えた。
もし仮に「どこでもドア」が発明されたら人類はどうなるか。
石油ビジネスは淘汰され第三次世界大戦が起きるだろう。
それか「どこでもドア」の開発者は「どこでもドア」完成発表記者会見前にアラビアンスナイパーにより暗殺される。
人類とは常にそんなものだ。
人は常に自らの利益ばかりを追求する。
だから私はこれ以上は望まない。
私の日常の先にサウナがあればそれで良い。
それ以上は何も望まない。
お願いだ。もうこれ以上の人類の進化はやめてくれ。
これ以上のiPhoneの進化なんて必要ない。
大体最近では目を見張る新機能なんてないではないか。
カメラ機能ばかりが進化する。
そんな鮮明に現実を写さないでくれ。
少しボヤけてるぐらいが丁度良い。
写される身にもなってくれ、タレントさんは大変なんだぞ。エステに行ったり整形したり。少し見ない間に顔だって変わってるんだから。
俺の鷲見玲奈を返せ!!
そんなことを考えながら外気浴をしては酩酊としていると、私の横に再び蒸しKINGさんが来ては言った。
「ジュリーの「勝手にしやがれ」とピンクレディーの「渚のシンドバッド」が流行っていたからサザンのデビュー曲は「勝手にシンドバッド」になったんだよ。」
深い。
深過ぎる。
なんなんだ蒸しKING。
くそーっ。何か言いたい!!
深い言葉を吐き出したい。
そして私は力強く言った。
「渚のはいから人魚からのしゃかりきコロンブス!!」
康珍化と飛鳥涼はインフィニティー。
昭和最高っ!!
爆風ロウリュ最高っ!!
One Love.
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