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【維新・選挙ボランティア潜入記】 身分証明書も不要。フラッと行くと、いきなり緑のポロシャツとチラシを渡される。誰でもなれる「維新ボランティア」!
本日、「週刊ポスト」を買いまして、潜入専門ジャーナリスト・横田増生氏の「維新のえびさわ由紀」候補のボランティア体験記を読みました。
面白いところだけ、かいつまんでお届けいたします。
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参議院選挙の投開票日である7月10日の日付が変わった直後、NHKが山本太郎に当選確実を打った。
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定員6議席の東京選挙区の全議席が埋まった。これで日本維新の会から出馬し、最後の6枠目に滑り込みたかった海老沢由紀(48)の落選が決まった。
海老沢の選挙事務所からネットでライブ配信していた維新の参議院議員で、今回の選対本部を率いていた音喜多駿は、「無念……。あと一歩なんだよなぁ。(山本の得票とは)1ポイント差だけどなぁ……」と呻吟した。
その直後、白いスーツと白のパンツ姿で事務所の壇上に立った海老沢はこう語った。
「海老沢由紀に一票を投じてくれた方のご期待に応えられず、申し訳ありませんでした。また、この長い選挙戦を支えてくれたボランティアや東京維新の会の皆様、スタッフ、関係者に心から感謝を申し上げたい」
そうそう、そうなのだ。
海老沢が感謝したい対象には、ボランティアとして参加していた私も含まれていた。
投開票の当日まで、選挙戦をともに戦ったボランティアの1人として、都内の海老沢事務所で開票速報を見られるものだ、と思い込んでいた。勝っても負けても、18日間の選挙戦の結果を一緒に分かち合いたいじゃないか。
しかし、当日午後、ボランティアが入っているグループLINEには、「コロナ感染対策等、諸事情を鑑み」、内輪だけで開票を見守るので、ボランティアは、維新のネット配信で見てほしい、というメッセージが流れてきた。正直言ってがっかりしたが、仕方がない。
2000年代に入って以降最多の34人の候補者で争った東京選挙区の投票結果は、1位・朝日健太郎(自民党)、2位・竹谷とし子(公明党)、3位・山添拓(共産党)、4位・蓮舫(立憲民主党)、5位・生稲晃子(自民党)、6位・山本太郎(れいわ)──となり、海老沢は7位で落選となった。海老沢の得票数は53万票で、山本太郎とは3万票差。
海老沢、完敗である。
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■猪瀬直樹のお触り事件(維新の不祥事)
維新の獲得議席数は選挙区4、比例8の合計で12議席。「最低でも12人以上」とした目標にはどうにか手が届いたが、関西以外の選挙区では苦戦。党代表の松井一郎は、「われわれは力不足。負けを認めざるを得ない」と敗北宣言をした。その裏には、松井や副代表の吉村洋文が、何度も応援に入りながら、東京選挙区で議席を取れなかったことも大きく響いた。
全国紙記者はこう語る。
「まだまだローカル政党色が強い維新が全国区になるためには、東京選挙区での議席は喉から手が出るほどほしかった。海老沢が負けたのは、知名度不足が最大の原因。大阪市議である海老沢は東京ではほとんど無名に等しく、集票力はなかった。ソフト路線で女性の無党派層への浸透を狙ったが、それも裏目に出た」
日本大学教授の末冨芳は、比例区で当選した猪瀬直樹が海老沢の胸を触った後のおさわり容認発言が、女性の有権者を遠ざけた、とみる。
猪瀬によるおさわり事件とは、選挙活動開始直前の6月中旬、猪瀬と海老沢が一緒に東京都内で街頭演説をした際、猪瀬が隣にいた海老沢の胸を何度か触った動画がSNS上に流れて炎上したことを指す。それに対し、海老沢は「まったく気にしてません」と擁護した。
「ワーキングマザーのイメージで選挙運動をしていた海老沢さんは、これで対応を誤った。公開セクハラを女性自身が正当化してしまったように見えた。維新が猪瀬氏に党として注意もしなかったことは、維新が男性優位の政党であることを図らずも露呈してしまい、それを女性が敬遠した可能性がある」と末冨は語る。
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■訊かれたのは名前だけ
選挙運動の初日、私は新宿駅前での海老沢の第一声を聞いた。出産の無償化と教育の無償化の必要性を訴えていたが、演説の内容以上に私の印象に残ったのは、聴衆よりも維新のスタッフのほうが多かったことだ。
そして翌日からボランティアとして活動することに決めた。
が、どうすればなれるのか。まったく分からない私は、都内にある海老沢事務所を訪ね、ボランティアになりたい旨を告げた。
事務所のスタッフからは演説先に直接行ってくれ、と言われ、有楽町駅前で演説する予定の海老沢陣営を見つけに行った。
ボランティアとして働きたい旨を告げると、その場で、維新のロゴが入ったライムグリーンのポロシャツを手渡され、すでに着ているポロシャツの上から重ね着する。“丸ビラ”の入った選挙用の腕章が付いたポーチを受け取り、駅前で丸ビラを配った。ボランティアの役目とは、海老沢が街頭演説をする間、周囲でひたすら丸ビラを配ることだった。直後に撮った集合写真の中央には海老沢と応援演説にきた猪瀬が収まり、その後ろに私が写り込んでいる。
ボランティアを始める際、私が訊かれたのは名前だけ。「横田」と答えた。住所も電話番号も訊かれることなく、身分証の提示も求められなかった。ただ、LINEのIDだけは伝え、すぐにグループLINEに入れてもらった。海老沢の選挙に関するさまざまな情報が流れてくるLINEのメンバーは160人ほど。
身元の詳細を尋ねられなかったのは私だけではない。この日、有楽町から渋谷に移動してビラ配りをしていると、30代の男性がボランティアスタッフとして働きたいと言ってきたときも同じ対応だった。
要するに、来るもの拒まずなのだ。
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■「維新」の選挙は、自民党ゆずりの徹底した「ドブ板選挙」
海老沢の街頭演説は、マイクを使った選挙活動が認められている午前8時から午後8時まで続く。午前中に4、5か所を回り、午後も同じ数だけ回る。週末も休みはない。私は選挙期間中、東京選挙区の他の候補者の活動もチェックしていたが、海老沢ほど街頭演説をする候補者を見つけることはできなかった。まさに「どぶ板選挙」だ。海老沢は、テレビ取材が入った日の午前中を除いて、1日12時間のスケジュールで東京中を飛び回った。
海老沢が1日で回る演説場所を、ボランティアが全部ついて回るのは難しい。海老沢が車で回るのに対し、私たちボランティアは移動に公共交通機関を使うからだ。1日12時間で10か所を回り、その間にビラを配るのではとても体力が持たない。私は、1日のうち3、4か所を選んで参加した。いつ参加するのか、いつ帰るのかは、ボランティアの自由。事前の申告も必要なかった。
(後編につづく)
筆者:横田増生(よこた・ますお)/ジャーナリスト。1965年福岡県生まれ。関西学院大学を卒業後、予備校講師を経て、アメリカ・アイオワ大学ジャーナリズム学部で修士号を取得。1993年に帰国後、物流業界紙『輸送経済』の記者、編集長を務める。1999年よりフリーランスとして活躍。2020年、『潜入ルポ amazon帝国』で第19回新潮ドキュメント賞を受賞(8月に『潜入ルポ アマゾン帝国の闇』と改題し刊行予定)。近著に『「トランプ信者」潜入一年 私の目の前で民主主義が死んだ』。
※週刊ポスト2022年7月29日号より引用
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