中原俊監督「櫻の園」(1990年)を鑑賞する。
東京で暮らしていたとき、公開初日に劇場へ観に行きました。初回を観ようと劇場へ入ると、なんと、監督の中原俊さんが関係者と談笑しているではありませんか! あー、あのとき、サインでももらっておくんだったなあ。
1986年にフジテレビ系列で放送された傑作青春ドラマ「桃尻娘」「帰ってきた桃尻娘」を観たときから「この監督はタダものではない!」と思っておりまして、予想は的中。1990年にこの「櫻の園」でブレイクを果たすのでした。
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毎年同じ演劇をする学校のわずか数時間のドラマだけど、朝のまったりと停滞してるような時間と劇が中止になるかもしれないハラハラな時間と劇が間近になっていく中のドキドキの時間という3つの時間の密度が凝縮されています。
そのクルクルと流れる早さこそが、風のように過ぎ去ってしまった青春時代の、あまりにもあっけなくかけがえのないことに刹那思いを馳せてしまうような(言葉遣いやファッション面から1990年という時代を懐かしむことも含めて)映画にしているのでしょう。
他人の目線に意識的で、だからこそそれを踏み越えたくなるような、そして思春期の(春は「性」の意味に沿った)悩み、なんてことのないおしゃべり。なにより、女子が女子に好意と羨望がないまぜになる宝塚的なモチーフが甘く、同時にほろ苦く描かれる記念写真のシーンが印象的です。
小道具としてはタバコと火災報知器の使い方がうまいのと、ジョウマルさん(2年で、かわいいだけにやることやっている子)とシミズさん(男役に好意を寄せる地味目で乙女な子)とクラタさん(みんなからかっこいいと好かれるポジションだけにプレッシャーに弱い子)のキャスティングがばっちり。あとは照明部の4人グループの1人にかわいい子がいたようです。
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部長役の中島ひろ子さんと、喫煙問題で公演中止
の論議を引き起こす問題児役、つみきみほさんの存在感
は素晴らしい。『レズビアン』というあからさまな関係
ではなく、女子校ならではの同性に対する“ほのかな憧れ”。
これがこの作品の淫靡になりすぎない品格をよく現して
いる。そう言った意味で2人はまさにハマり役だ。
ビジュアル的にもつみきみほさんを見て、今で言えば
柴咲コウちゃん的凛としたポジションだったんだなあと
感じる。今はあまり姿をお見かけする事がなくなったの
が残念だ。
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それにしても、2008年のリメイクは失敗だったね。役者の演技がひどすぎる。キャストだけ豪華で。。。あの映画って「オスカープロモーション」の宣伝映画でしょ。中原俊監督の黒歴史だなぁ・・・。
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ちなみに、この娘、かわいくて好きなんですけど、個人的に。