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希望のない世界と絶対神

舞台観劇の記事になります。

〜今回観劇した作品〜
聖地ポーカーズ ACT of CTHULHU「HOPELESS」
4月7日マチネ公演・アフタートーク

<あらすじ>
昭和中期、高度経済成長時代の真っ只中の日本を舞台に起こる連続変死事件。
事件は次第に警察や政府、宗教団体までもが絡み合う、複雑怪奇な様相を呈し始める。果たして事件の裏にある真相とは…?(公式より引用)

推し俳優さんが主演・クトゥルフ神話をベースにしたミステリー作品ということで、一時期TRPGの動画に興味を持ち軽くさらった程度のクトゥルフ初心者であるものの、観劇当日を楽しみにしていました。
観劇後に、今回作品内で登場したモチーフについて改めて調べた上で、オタクお得意の考察という名の仮説を立てた次第です。是非クトゥルフに詳しい方がいらしたら色々とご教授頂きたいですね…。
記憶力の限界もあるので、台詞の言い回しや内容が間違っている場合があります、申し訳ございません。

<個人的ポイント・作中キーワード>
・冒頭、以下内容の忠雄の独白。知見を広げる為に世界を回っていた建築家である彼は、ペルーから乗船してきた神父風の男に(半ば強引に)「インドを見ていかないか」と誘われ、インドで途中下船。そこで見た光景に感銘を受けた後日本へ帰国し、個人事務所を設立しようとするが…。

・全一教団の教え?「一にして全、全にして一」→ヨグ=ソトースの存在定義

・ミゴウの腕→今作では「猿の手」的な役割・意味合いが強い。

<考察>
記事序盤で書いたように、クトゥルフ要素の盛り込まれた(解らない人からしたらSFっぽい)ミステリーで、最終的な犯人は久原房之助という形で落ち着きます。

今回考えていきたいのは、坂東忠雄という人物について。
アフタートークで演者の皆様がちらっと触れられていて、「そういえば忠雄って…」と思い返すとよくわからない点があったので考えてみました。(主演と名打たれているのに出番少ないなあ…と不審に感じたのがキッカケ)

繰り返しになるが、メインキャラクターの一人にも関わらず、孝二郎や深雪に比べて異様に登場シーンが少ない(主観)。忠雄がいない時に限って重大な局面を迎えること多く、窮地に陥ったところにポッと現れる。そして助けてくれる、みたいな。

観劇中にまず「おや?」と思ったところが、全一教団が門を開く儀式をしていたところに忠雄が乗り込んだ際の台詞。聞き間違いでなければ
『折角の俺の計画が台無し…まあいいか』

これに関連して気付いた点。少し前のシーンになるが、深雪と須藤が全一教団に誘拐されたことがわかり、教団へ向かう際に孝二郎へ言った『ここからは兄ちゃんのやること』という台詞。
前述の内容を加味すると、忠雄が全一教団へ乗り込んだのは深雪や須藤を助けるため"ではない"、別の目的があると思われる。

教団の件が片付き、憔悴している孝二郎・深雪と共に帰路へつく…はずが、道中の会話で忠雄は、蛯原達房が建築依頼していたモデルの二楽荘に似た建物として築地本願寺があるから(確か)"今から"見に行かないか?と誘っている。普通に考えて、あんなショッキングな事件を目の当たりにした直後、しかも夜中に寄り道して行こうという神経は割とどうかしている。

そのせいで、久原房之助の願いが成就し得る場所が築地本願寺であると知られ、再び門が開かれそうになる…という展開に。当の忠雄は『俺が築地本願寺って言っちゃったからか〜』とあまり悪びれてなさそうな言い回し。

築地本願寺地下にて忠雄は、深雪が銀の鍵に触れられると確証をもって発言し、深雪に久原房之助を止めさせようとしていた。最終的に、深雪(井辺タツ)が鍵を扱えることが判明したが…もしかして忠雄はそのことを知っていたのか?
かくして深雪は門の向こう側を彷徨うことになる訳だが、落ち込んでいる孝二郎とは対照的にケロッとしている印象を持った。それが逆に恐ろしい。

最後の忠雄の独白で、孝二郎に関して『門を開く、なんて言い出さないと良いが…』と語っている。
物凄くフラグ臭いなと思いました。

ところで、ヨグ=ソトースについて調べると、その化身(人の形を取ったもの)であるウルム・アト=タウィルが目に付いた。『銀の鍵を手にした者を「窮極の門」へと導く存在で、お眼鏡にかなった相手には友好的な態度を示す事もある』らしい。
今作では2回とも「第一の門」を開いた段階で失敗に終わっている。ただ、深雪は門の向こう側へ行ってしまっているので、いずれは「窮極の門」へ辿り着くのではないだろうか。

最後に、これはTwitterで見たツイートから「そういえば…」と気付いたことなのですが、
忠雄が銀の鍵の影響を受けている描写がなく、そもそも銀の鍵が使われている場面にあまり居合わせてないんですよね…。(記憶が正しければ)

これらより、私の考察は以下のようになります。
・忠雄自身がヨグ=ソトースである
・深雪(の能力)を気に入り、門の向こう側へと上手いこと誘い込んだ。

実はこのような考えに至る決め手となったのは、羽栄鳥全一のエピソードです。
羽栄鳥は過去に父母とペルーに住んでおり、ある日現れた男が門を開いたことにより父母を亡くし(異形の姿に変えられ)、日本へ逃亡します。

一件忠雄と関係がないように見えますが、ペルーという国の一致に引っかかりを覚えました。ポイントで挙げていた独白の内容に出てきた、ペルーから乗船した男です。
時系列が不明ではありますが、ヨグ=ソトースは時空の影響を受けない絶対的な存在です。この"男"が忠雄に何かしらを与えるキッカケを作ったのではなかろうか?と考えました。

また、忠雄の掲げる「都市ゲリラ建築」について。忠雄のモデルとなった人物:安藤忠雄による「都市ゲリラ住宅」を調べて見た際に、「箱庭」という印象を受けました。
最後の独白で忠雄の述べていた『一人一人が人間らしく』…それは忠雄の造った箱庭の部屋に人間が一人一人いる(監視された)環境なのでは?としか思えなくなり、私のSAN値がピンチです。

<感想>
舞台が昭和44年という設定で、登場人物の服装や小道具から「ぽいな〜」と時代を感じました。
さらに、実際に起きた事件や実在の人物が出てくることで、妙なリアリティが出ています。
ベースがクトゥルフ神話なので、基本的に観ている側も絶望しかない。公演が終わってからの疲労が半端なかった。
厨二設定や超能力大好きマンなので、登場人物の能力配分やそれを活かしたアクションシーンも楽しかったです。蓮華座の3人の、武器と名前の関係性も良いですね。
パンフレット内で作・演出の榎原さんも述べられていますが、大谷光瑞・浄土真宗からの、公演劇場である築地本願寺という舞台設定がやばい(語彙力のなさ)。

鑑賞後のSANチェックが要るな…と思いましたw