知らなくていいこと

月は地球に対して常に表側だけを見せているようで、裏側を地球から見ることは叶わないらしい。果たして月の裏側はどんな様子なんだろう？
実際に調査された結果によると、月の裏側は表側に比べて起伏が大きく、クレーターの多さが目立つらしい。ちょっと不細工なんだそう。ある意味でそれは人にも似ているなと、そんなことを考えた。
僕は最近ある人の一部分を目の当たりにした。日頃は見えていない、見ることの叶わない裏側を見た。僕はその一部分を見て、勝手に失望して、あろう事かその人のイメージを書き換えてしまった。月の裏側に大きなクレーターがある事を知った途端に、まったく関係のなかったはずの表側に対する印象を書き換えてしまった。
当たり前だがその人は完全な善人ではなかったかもしれない。でも完全な悪人であるはずがなかったのだ。多分完全にいい人も、完全に悪い人もこの世にはいない。
猫を拾ったからいい人。
赤信号で渡ったから悪い人。
募金箱にお金を入れたからいい人。
ゴミを道端にポイ捨てしたから悪い人。
一面だけを見て人を判断することほど、愚かなことはきっとない。それは月の裏側のほんの一部にすぎない。はずだ。