
ポンコツって何?
ポンコツって、何なんでしょう?
わたしが思いつくのは、そう白黒テレビ。
むかしむかし、日本のお家には白黒テレビがありました。こんなテレビです。
向かって右に見えるのが、チャンネルといって、観たい放送局を切り替えるダイヤルです。回すとガチャ、ガチャと機械的な音がします。電波はアナログで、画面は白黒、おまけに部品は真空管というガラスの部品が使われていました。
で、しょっちゅう故障するんです。画面が映らない、乱れる。音声が途切れる、雑音が入る。そこで、どうするかというと、
テレビを叩くんです。
「このポンコツめ!」
と言いながら。
すると不思議なことに直るんですね。乱れていた画像がきれいになって、プチプチ途切れていた音も滑らかに聞こえるようになりました。
「このポンコツめ!」は、何かの呪文、いや、魔法の言葉。そうじゃなくて、愛情の言葉?
確かにテレビを叩きながらも、テレビに愛着というか親しみを感じていたのだとは思うのですが、
しかし、故障したら、できなかったら、励ますために叩く。叩けば直ると思っている。これが昭和のおじさんの悪い癖なんじゃないかなと思います、私的には。
ところで、白黒テレビって、白黒しか映らないんです。濃淡しかわからない水墨画の世界のような画像なんですね。
白黒テレビって、カラーが映らないからポンコツなの?
白黒テレビに向かってカラーが映らないからといって叩いても、カラーが映るはずもありません。このテレビは最初から白黒しか映らないテレビなので、カラーが映らないのは、故障ではありません。むしろ、チャップリンの無声映画を観た方ならお分かりになると思うのですが、白黒には白黒の独特の味わいがあるんです。
でも、白黒テレビは、自分のことをカラーが出せないポンコツだと思っているのかもしれません。
そんなことを思っていた時に出会ったのがこの一冊でした。
いしかわゆきさん著、『ポンコツなわたしで、生きていく。 〜ゆるふわ思考で、ほどよく働きほどよく暮らす〜』(技術評論社刊)
白黒テレビをどうやって観ていたか、今、思い出してみると、白黒濃淡だけの画像から、それぞれの色を頭の中で想像してたんですね。太陽は黄色い、このシャツは白くて、スカートは青、グレーのスーツに緑のスクーターなんて。(これは何の映画でしょう?)
カラーを出すという白黒テレビができないことを、観る人が、こんな色かなって想像して補っているんです。それでいいんだと思います。白黒テレビはカラーを出そうなんて無理する必要は全然ないし、白黒テレビには、白黒テレビなりの味があるんだと思います。後は、観る人が適当に補ってくれればいい。
だから、白黒テレビは、自分をポンコツと卑下する必要はないし、むしろ、ポンコツだから、後はあなたが補ってくださいねでいいのかなと思います。
そんなことを思いながらこの本を読むと、ポンコツならひとりで生きようとしないで「もっと人を頼ってもいいんだ」って書いてありました。ポンコツは、不思議と懐の広い人を引き寄せるそうなので、なおさら、ポンコツな部分を人が補ってくれることに頼るのが正解のような気がします。
白黒映像を加工して、カラーにしている映画とかを時たま目にすることがありますが、オリジナルのままの方がいいなと思うのは私だけでしょうか。
カラーが出ない白黒テレビをポンコツと言うのなら、ポンコツは、故障じゃなくて、個性だと認めて、後は、観る人に任せて、補ってもらえばいいかなと思います。
(おわり)
いいなと思ったら応援しよう!
