そう、きっとこれは恋
今いる界隈のライブに初めて行ったのは2020年の2月だった。
当時高校生だった私はライブを見るために高速バスに乗って隣の県にまで足を運んだ。ちょうど期末テストも終わって、春休みまでの残りの授業期間をのんびりと過ごしていたときだった。
正確には2019年のパシフィコ横浜公演は配信で見ていたから、この界隈のライブが初見というわけではない。界隈のヲタク自体は2016~2017年くらいからやっているし、オーディションもリアルタイムで見ていたけど、まあこの話はいい。
2部制のライブだったけれど、2部は帰りの高速バスの時間が不安だったから1部だけにした。今だったら朝一の高速バスか新幹線で行って、物販に並んでチェキくじ回して、1部も2部も入るだろうし、終演後の特典会も並ぶ。
でも当時は本当にお金のない高校生だったから、1部だけ入った。
デビュー二年目、ツアーの地方公演、キャパの半分(三分の二?)くらいしか埋まっていなかったと思う。今やZeppやホールツアーをするくらいの規模になっているんだから、ほんと凄いよね。
というかあの時、多分人生初のライブハウスだった気がする。ドリンク代とかよくわかってなかった。そしてどこにいたらいいのかわからなくて、なんとなく上手側後方の壁付近に立ち尽くすしか出来なかった。
なんで急にライブに行こうと思ったかはあまり覚えていないけれど、SNSで「まだチケットあるよ~!」とメンバー達が呼びかけていたからだったと思う。近くに来るなら行っちゃおうかな~みたいな軽い気持ちでチケットをとった。ついでに高速バスも予約した。この日は一人で行くから!と親に伝えて、高校2年生の大冒険のはじまりはじまりってわけ。ちなみに駅からライブハウスまで徒歩10分でほぼ一本道なのに、道に迷った。
ライブはそれはまあ楽しかった。いつもインターネット上、というか画面越しでしか見ることの出来なかったアイドルがほんの数メートル先のステージで歌って踊っているわけだし。コールは出来た曲と出来なかった曲があった。予習足りなかったな……と思って、後で持っていないCDを通販した。次に行けそうなライブがあったら絶対行こうと思った。
この約一ヶ月後、しばらくの間、ライブもコールも出来なくなるなんて、きっと誰も思っていなかった。コロナ禍に入ってすぐ、いろんな配信ライブがあったけれど、私はほとんど見ることが出来なかった。当時の私はひたすら単語帳と赤本に向かっていた。新曲が出たらYouTubeでMVは見るし、CDもグッズもオンラインチェキも買ったけれど、ライブはほぼ見なかった。見れなかった。一日十何時間も机に向かって、ときどき、誰かが夜中に個人配信をしているのを見に行っては、耳だけ傾けながら古文とか世界史をやっていた。アイドルのことを嫌いになったわけではないけれど、自分のことだけでいっぱいいっぱいで、「ライブ」という場所から少しずつ気持ちは離れていった。
もう一度、この界隈のライブに戻ってきたのは2022年の夏。パンダドラゴン7thシングル「万国みゅ~じっく」発売記念フリーライブだった。前日だったかに、そういえば明日暇だな、パラゴンがサンシャインでフリラやるって見た気がする、行くかと思って予定を埋めた。
池袋サンシャインシティ噴水広場でのフリーライブは(株)DDのヲタクにとって、もはや庭と言っても過言ではなくなっていると思う。
でも2021年に上京したものの、ほぼオンライン授業で家から出ないことの方が多かった私は人生初のサンシャインフリラだったわけで。突発的すぎて優先エリアとか取ってないから、三階から見た気がする。サンシャイン自体は何度も行ったことがあったけれど、いつもより少し軽い足取りでサブスク解禁されたばかりの「万国みゅ~じっく」をイヤホンから流しながら歩いた。万国みゅ~じっく、超良い曲だからみんな聞いて。あと推しがMVに出てる。
これは余談だけど、あの日めっちゃ蒸し暑かった記憶がある。駅のホームで買ったポカリが美味しすぎて感動した。池袋駅のホームでポカリのペットボトルを傾けながら「ガイヤーンムーピントムヤムクン……」と口ずさんでいた不審者になっていたと思う。
二年前のライブと同じように終演後はすぐに帰宅した。
当時はまだ世の中の感染症に対しての意識というか取り組みというか、そういうのがはっきりと決められていて、私は部活を抜け出してまでこのフリーライブに来ていた。
当時所属していた演劇部(今も所属はしているけど活動はお休みしている)は特に学内でもそういったルールが厳しくて、稽古開きからバラし(撤収)までの公演期間中は一切の会食や集会を禁止されていた。公演期間中は授業に出て、公演準備をして、夜遅くに家に帰るだけの日々だった。同じ学科の友人や当時掛け持ちしていたサークルの先輩たちがご飯や遊びに誘ってくれる度に申し訳ないと思いながら断って、バイトもできるだけ減らして、好きなものに関われるのが楽しいから大丈夫って思って、そうしていたら普通に病んだ。
パラゴンのフリーライブの日はその会食禁止期間が始まる前日だった。
心は軽かった。あの時よりも歌もダンスも上手くなったアイドル達が全力で「ライブ」をするのを、ようやく見ることが出来た。
私がもう一度ライブに行きたいと思えた日だった。
帰りの電車内で一般発売中だったDDP千葉公演のチケットをとった。チケット画面を見ながら、推しが後輩たちと絡むのはこれが最後かもしれないと、静かに泣いた。目の奥が痛いのは泣いたせいか、それとも暑さのせいかわからなかった。
結局コロナの影響で千葉公演は中止になってしまったし、演劇部の公演も中止になってしまったのだけど。あの時期は本当に精神的に堪えたな……。
つまり何を言いたいかというと、実質出戻り新規みたいなところだからわからないことたくさんあるけど許してねって話である。