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怒りのデス・ロード放送記念 マッドマックス伝説を振り返る
NHK-BSで突如の『マッドマックス 怒りのデス・ロード』放送。それを記念して改めてマッドマックス伝説を振り返りたい。
しかし、世の中けっこうマッドマックスを知らない人もいるのである。私はマッドマックスを知らないと初めて言われた時、腰を抜かさんばかりに驚いたが、こればっかりは仕方ない。
記念すべき第一作目『マッドマックス』が公開されたのは1979年。オーストラリアを舞台に暴走族(と言うには凶悪すぎるが)に妻子を殺された警官マックスがカーチェイスで復讐する。ただ、この1は見てない人も多いことだろう。それなりにヒットしたらしいが、まだこの『マッドマックス』は普通の映画だった。
伝説が始まるのは81年に公開された『マッドマックス2』からだ。
主人公は同じマックスなのだが、1と2の間で文明社会は崩壊。無秩序と化した世界でモヒカンやジェイソンマスクの極悪非道軍団とマックスらが石油を巡り熾烈なカーチェイスバドルを展開する。
え、そんな展開なんて珍しくない? 違うのだ。『マッドマックス2』はそういう”核戦争後の荒廃した世界”みたいな世界観を初めてやった映画なのだ。『北斗の拳』などの元祖がこの『マッドマックス2』なのである。まさに世界を変えた伝説の一本だ。
85年の『マッドマックス/サンダードーム』も悪役に歌手のティナ・ターナーを迎え、伝説の前作に恥じないできだった。
『マッドマックス/サンダードーム』でマックスは死なずに生き残ったが、この3本でマッドマックスシリーズは完結し、マックスを演じたメル・ギブソンは大スターへと登りつめた。
マッドマックスがいかに偉大な映画だったかは12年に公開された『ベルフラワー』という映画の存在からも分かる。
この映画の主役は『マッドマックス2』の悪役ヒューマンガスに憧れて火炎放射器や改造車の製造に勤しむ冴えない若者二人。
これがヒューマンガス様だ! モヒカンの人じゃない方です。悪の暴走族軍団のリーダーです。
おそらく世界中にこの主役の二人に共感する若者がたくさんいるのではないだろうか。社会的に生きることを拒否し、好きな仲間と好きなこと(サブカル系)してるだけのイケてない若者達。で、そんな人達はマッドマックスが好きだし、それはメル・ギブソンのことでなく、北斗の拳にも出てくる悪役の方が好きなのだ。分かる分かる。
そんな伝説の映画、マッドマックスは三部作として終わったはずだった。
しかし! マッドマックスは30年ぶりに帰ってきた! 前三作の監督であるジョージ・ミラーが自らメガホンを取って大復活。ミラー監督、御年70歳。なんというマッド魂。
『マッドマックス2』は確かに伝説だった。私達の中には思い出補正がかかりまくったマッドマックスがあった。30年ぶりのマッドマックスはあの頃のマッドマックスと同じレベルではガッカリ、2倍すごくてやっと及第点といったところだと思っていた。だが、『マッドマックス 怒りのデス・ロード』は私の思い出補正のマッドマックスの10倍はすごかったのだ。70歳過ぎて30年ぶりにこんなものをつくるなんて、ジョージ・ミラーは本当にイカれている。
しかもこのマッドマックスはちゃんとマッドマックスらしいポイントをしっかりと押さえている。極悪ながら惹かれれる悪のカリスマ。虐げられた人々の立ち上がり。地味だけど存在感のあるマックス。
いつもマッドマックスはマックスが一度やられてそこからクライマックスへと突き進んでいくんだけど、今回はそれが最初に起こってそっからもうずっとクライマックス。色々メチャクチャでおバカなんだけど、見てる時はただただ圧倒される。いくらでも語れる。これは最高の映画の一つだ。
30年の時を経てこんなすごいマッドマックスがまた見られるなんて。。。30年色々あったけど生きててよかった。号泣した。人生捨てたもんじゃない。