ここ数年の障害を考える映画5選
勉強会で障害をテーマにした映画について話してほしいと依頼され、障害をテーマにしたここ5年くらいの映画を5本選んでみました。
『FAKE』
みなさん覚えてますか?佐村河内さん。
ゴーストライター騒動後の佐村河内守氏にジャーナリストの森達也が密着したドキュメンタリーが『FAKE』です。
佐村河内守、なぜか謝罪後に元のあやしい長髪サングラスに戻してます。
この佐村河内さん、多分かなりブラック寄りのグレーだと思うのですが、ドキュメンタリー映画というものも映画の撮り手によってどうにでも印象が変わるものなので、佐村河内さんもこの映画も虚実入り乱れています。
佐村河内さんにはゴーストライター疑惑と共に実は聞こえているのではないかという疑惑もありました。この映画か佐村河内さんを扱った漫画に出てくるのですが、聞こえると聞こえないには無数の間があります。ある大きさまでは聞こえるがそれ以下は聞こえない。ある周波数の音が聞こえないなどなど。おそらく佐村河内さんもどこかの聞こえると聞こえないの間にいるのではないでしょうか。
そして、これは聴覚障害に限りません。見えると見えないの間にも無数の間が、歩けると歩けないの間にも無数の間があるはずです。
『gifted/ギフテッド』
ギフテッドとは知的な能力が高過ぎる人のことです。姉が自殺しギフテッドの姪を引き取る男が姪を普通の学校で普通の生活をさせようとし、天才に適した教育を受けさせようとする姪の祖母である自分の母親と対立します。
主演はキャプテン・アメリカのクリス・エヴァンス。ハリウッドはアクション大作に出ている人達がその合間に落ち着いた味のある役もしっかりとこなしているのです。
この映画の面白いところはその子に合った場所で教育を受ける方がいいという一見みんなが賛同しそうな考えに主人公が全力で抗うところです。幸せとは何なのかを考える映画でもあり、インクルーシブな教育、誰でもそこでその子に合った教育を受ける権利について考える映画でもあります。
『シェイプ・オブ・ウォーター』
『パシフィック・リム』のギレルモ・デル・トロ監督が60年代を舞台に発達障害で言葉を持たない女性と半魚人の恋を描いた映画です。
半魚人と決して美人と言えない中年女性との恋愛がとても美しく描かれた不思議な作品ですが、興味深いのは発達障害をマイノリティの一つとして描かれている点です。二人の恋に協力する博士は同性愛者。半魚人もマイノリティのメタファーな存在であることを考えると、この映画は様々な立場のマイノリティが手を取り合う映画でもあるのです。
『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』
先日亡くなった三浦春馬さんが準主役として出ている同名ノンフィクション書籍の映画化です。
筋ジストロフィーで呼吸器がないと生きていけないにも関わらず障害者の自立を掲げ自宅での生活を続ける鹿野靖明さんを描いたこの映画は当事者運動をする障害者を描いた映画でもあります。彼が自宅でボランティアの力を借りて生活するのは障害者の自立の為だから頭を下げてしてもらうことではないと考えます。主演の大泉洋が本の中の鹿野さんっぽい感じがしててとてもいいです。
本では障害者の恋愛についても書かれていますが、映画もちゃんとそこを組み込んでいます。
『誰もが愛しいチャンピオン』
知的障害者のバスケチーム、アミーゴスと新しくやってきたコーチを描くスペインの映画なのですが、アミーゴスを演じるのはオーディションによって選ばれた本当の知的障害者たち!
でも、この映画が本当にすごいのは障害を抱えた人達が頑張る話ではなく、変わるべきは私達(いわゆる健常者)であるという根底によってつくられている点です。24時間テレビ的感覚とは正反対。頑張ったり変わるべきは障害者達ではなく健常者の私達なのです。
シドニーパラリンピックのバスケ代表の不正事件は実際に会った話で、この事件がパラリンピックと知的障害者との間に溝をつくってしまったこともこの映画を通して知りました。
この映画がスペイン映画界でアカデミー賞に当たるゴヤ賞を取り年間興行収入1位だというのだからスペインはすごい。スペインではこの映画がきっかけで知的障害者をチャンピオンと呼ぶようになったのだとか。
この映画は本当に衝撃でした。障害者観が変わったと言ってもいいくらい。
障害を考える映画5選よかったらぜひ! 全てyoutubeから購入できるようです。