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忘れられないデンマーク大使館員の言葉
長期の休校を巡り再開後に学習をどう取り戻すかが話題になっています。オンライン学習や自宅学習によって学習格差が広がるのではないかということも議論されています。
今の議論はコロナ禍で学習格差をどう縮めるかという視点ばかりで、ほとんど語られていない重要な点があります。それはいかに学習の格差がもたらす結果の解消をするかについてです。
このことを私が感じたのはあるイベントでデンマーク大使館員の話を聞いた時です。
高福祉高負担の国として知られるデンマーク。大学院までの授業料は無償、医療、年金、介護も全て無料です。その一方で所得税は平均35%、消費税は25%と大変高い税率となっています。
そんなデンマークの高校進学率がどれくらい知っていますか?
なんと75%! 四人に一人は高校へ行かないのです。驚く私に大使館の人は平然と言いました。
「デンマークは別に高卒でも生きていけるので」
職業教育校や就職後の資格の為の教育などが少し違いますが、デンマークでもより勉強して上の学校に行った方が収入が高くなるのは日本と一緒です。しかし、福祉が手厚いデンマークでは中卒で収入が人より少なくても普通に生活できるのです。結婚して子育てするのも国からの支援が充実しているので問題ありません。勉強したい人は勉強し、そうでない人はほどほどに勉強する。そんな社会ができているのです。
学校の学習は確かに大事ですが、必ずしも全員に全て役に立つものではありません。勉強は実際に役に立つ面とセレクションとして機能している面もあります。賃金格差を減らせば、この部分の教育コストをカットできるのです。
今、コロナ禍の学習を巡る議論ではいかに学習の格差を埋めるかだけが議論されています。
しかし、それとは別に学習結果による格差をマイルドにすることも重要です。勉強ができなくてもそこそこ生きていけるように社会を設定すれば、勉強が追いつかないプレッシャーにさいなまれることは弱まるのです。