いじめの再定義 2
大津いじめ事件の「いじめ」
この事件では第三者調査委員会による調査が行われ、100ページを超える報告書が公開されました。調査委員会の中には尾木ママとしてテレビでも有名な尾木直樹さんもいました。
また、事件から2年後に共同通信の大阪社会部が詳しい取材を元に『大津中2いじめ自殺』をという書籍を出していて、そこに興味深い記述がありました。先ほど私が定義した「いじめ」が見える部分があったのです。従来のいじめの定義でいえば、いじめがいじめと見えなくさせるものがあったのです。
大津のいじめのクラスでは実は学級崩壊が起きていました。その方が授業がちゃんと受けられるからと、別のクラスに潜り込んで授業を受けていたという人がいたほどですから、学級の秩序はかなり崩れていたことが考えられます。
そういった中でふざけ合いの中で行われていたことが少しずつエスカレートしていきます。プロレスごっこはやがてケガをさせるようになり、虫を食べさせようとするまで行動はエスカレートしていきます。
大津のいじめは元々は親しい友人関係の中で起きたことであったり、途中でいじめ側といじめられ側による殴り合いのケンカがあったりと、よくあるいじめ像とはかなり異なった感じのようです。従来のいじめで考えると、こういったことはいじめがあったかどうかの判断を難しくするでしょう。
「いじめ」ではこう考えます。加害者、被害者の関係性を無視して起きたことをそのまま評価します。虫をムリヤリ食べさせるなどということは明確な犯罪行為なので、そういうものとして対応します。いじめかどうかの判断は必要ありません。起きた行為がどれだけを評価するだけです。
その上で、なぜこのような行為が見過ごされそうになったのだろうという部分で「いじめ」を考えます。大津のケースでは学級崩壊があったことはその一つの要素であったと考えられます。
いじめがあったかどうかではなく、起こった被害がどんな「いじめ」によって見えなくなってしまったのかを考えるわけです。
こういった評価をすることによって、いじめがあったかどうかの不毛な判断はなくなります。「いじめ」の定義は、現在のいじめの評価を変える為に必要なのです。