トラ君の “ ボルト チューン ” ♪
『 目覚めのコムラ返り 』
毎日の仕事(NPO)をする時間帯は 自然と一番効率の良い深夜と昼間午後がメインになっている。
だから、先日(5/4) の様に開催イベントがあると、生活のリズムが崩れるからだろうか、イベント終了後はとても疲れる事があったりする。
そのため、その日は早目(0時過ぎ)には寝たけど、何故か 朝4時過ぎに 左脚ふくらはぎがコムラ返り、痛さで目覚めて我慢と宥めすかしをしていると、今度は右脚もなってしまった。
「まずい、このままではトイレさえ行けない」などと悶え続け、治ったらすっかり目が覚めてしまったので、仕方なく 仕事、サイトデザインの変更を一つ片付けた。
そんな朝を迎えた後だったから、多少仮眠を挟んだ午後、全然元気は出なかったけど、食料の買い出しもあるので外出して、帰り道にガレージへも行った。
『 ボルトチューン ! 』
最初、ガレージで コーヒー飲んでも目覚めなかったから、VTR250で行なって好結果を確認していた“ボルト交換”、残るトラ君(トライアンフ)に懸案の ボルト交換には全然気乗りはしなかった。そんな元気は無かったし、元気が無い時には作業ミスはもちろん、その試走確認(インプレッション取り)は正確に出来ないからだ。
けれども、「 今日は何もせず、ちょっとブラっとしようか 」と、トラ君を 街乗りに誘い出し、いつもの道をぶらっと走ってみれば、出る出る!、急にあふれ出た元気で眼がメラメラしてくるのが自分でも分かる。
そうなると止まらない。
「今、走ったばかりの感触が薄れない内に、ボルト交換して、比較確認しよう!」
「まだ陽はまだ高い、日差しが変わると印象が変わるけど、今なら間に合いそうだ」
ガレージ出る時とは打って変わり、まるで元気な子犬の様に、ガレージに戻り、上ヨーク、下ヨーク のフロントフォーク固定ボルト、そしてアクスルシャフト固定ボルトを一気に交換に。
全てのボルト穴はタップで綺麗に修正して、上ヨーク用にはボルト穴の深さを確認して 、今までよりも 5 mm 長いボルト・M8×35 を作成し、交換順序も重要なボルトの順、隣り合ったペアボルトは均等に、全ての交換作業も完了。
工具の片づけもソコソコに、また、街乗りに誘い出すと、ガレージから降ろす段差から 期待感・大の感触、続いて小さな路地を曲がる 低速 90度ターンをすれば確信に、 広い道に出て 車の流れに乗れば 笑ってしまった。
フロントが、路面の小さな小さな凸凹も優しく滑らかにこなしている様子が手の中に入ってくる、 まるで、よく出来たコンソメ味の暖かいスープを飲んでいる気分だ。
「トラ君、悪いけど、今となっては 君は体臭を感じさせる欧州人の様だったね」
車の流れに乗って走る街中、いつも比較用に走る道。大きな信号のある交差点から小さな路地の道、ガレージから 約2㎞ の行程、トラ君、今までは小さな路地を曲がる時にも 小さな引っかかり感を残していた事が今になって体感出来た。
さっきまでは、VTRには感じない小さな恐怖感を感じさせていたトラ君。
購入以来、悩まされ続け、ずっと改良作業を続けて、随分と小さくなっていた恐怖感だけど、明らかに違った。
こんなのだったら、もっと早く、ボルトチューン しておけば良かった。 何しろ、スラストベアリング入れの効果より大きな影響を与えている、又は 相乗効果が強く出ているのかも知れない。
うーん、オートバイって、奥が深いね。
元気を与えてくれるし、課題(悩み)も与えてくれるし、飽きないパートナーだね。
『 ボルト考 』
VTR250 でのボルト交換のリポートでも書いたけど、ボルトは大切な “機能部品” だ。
今までも、ネジ山のクリーニングや座面の確認、締め付けトルクの管理や変更を行なってきた。
特に 操縦性に大きな影響与え、整備頻度が高く、純正ボルトでは消耗が激しいと経験している フロントフォーク固定用のボルトは、定期交換や材質変更も行ない、それなりに成果も挙げてきたと思っていた。
けれども、もっと奥が深かったようだ。
ボルトの材質や品質、強度によって、随分と大きな影響・効果が出ている事を実感した。
VTRの場合には、下ヨークの固定用ボルト(M10)のメーカー指定締め付けトルクは 39Nm (4.0 Kgf・m)はボルトへの負担が大きく、定期的な交換を行なった後に ステンレス製へと交換して数年を過ごし、そのぎこちない操縦性に変わっていくのに嫌気が差し、鉄製(SCM435 / 強度区分 10 . 9 / クロメート処理 )へと交換して納得していた。
ただ、トラ君の場合、前後サスペンションの設計自体に問題あり。 まるで、「どろろ」の様に、苦心して対処しても、次から次へと課題を与え続けてくれている難題ばかり。
リア サスペンションは一定の収まりを見せ、フロントも上下ヨーク交換を含む大幅な改修も施して、「 まあ、こんなもんでしょう 」と 納得させようとしていた頃だった。
それが、ボルトの講習で勉強をして、自宅に戻ってから少し学習を重ね、その知識で新しくボルトを購入して、試しに交換しただけで、こんなにも大きな効果が出るとは想像すらしていなかった。
( ありがとうございました! 池田金属工業 さん )
特に、VTRでの交換で得た効果程度だろうと思っていた トラ君の場合、もっと大きな効果が出せた。
その原因・理由を考えてみた。
一つは、整備頻度や乗車頻度が トラ君の方が高く、その分だけシビアに効果が表れやすい。 二つ目は、設計上、トラ君の操縦性のキャパが小さく、その分だけシビアに表れた。
どちらの原因もあるだろが、下ヨークのフロントフォーク固定用ボルトの変更が大きかったと思う。
VTRで確認できた 上ヨークのボルトをステンレス製から SCM435・鉄製への交換による効果とは別に、トラ君の 下ヨークのボルトを SCM435・鉄製に変更した効果が大きかったのだろう。
交換前までは、メーカー純正のボルトだけど、材質や強度区分が分からないボルトだったのだ。
目視する限りは目立った破損は無く、締め付けの際の感触にも違和感を感じず、疑った事も無かったけど、この機会に合わせて交換した結果、大きな効果に繋がった可能性は否定できない。
まあ、そのボルトの件以外、上ヨーク用ボルトのサイズ変更、アクスルシャフト固定用ボルトで使用していたワッシャー(座金)の廃止など、小さな変更は多くある。
今回の変更による一番大きな経験は、【 ボルトの締め付けトルクの管理よりも、軸力の管理が大切 】 という事だ。
ボルトの一番の働きは“軸力”を発生して他部品を固定する事だから、その“軸力”が適切な大きさで与えられ続けられる事を考えて、清掃・整備や交換作業を行なう必要があるという事だ。
今回のボルト交換では、材質変更による“軸力”の特性変更が生まれて操縦性に影響を与え、クロームメッキ処理により安定した“軸力”管理が容易になったのだろう。
残すは「強度区分」による操縦性への影響度合いの確認が必要だろう。
交換前のステンレス製ボルトの「強度区分」は 「A2-70」、引張強さ = 700 N/m㎡ で、交換した 鉄製(SCM435)ボルトの「強度区分」は「12 . 9」、引張強さ = 1200 N/m㎡ だった。
今後は強度区分を下げて、「10 . 9」をクロームメッキ処理ボルトで試す必要もありそうだ。